浪曲はミュージカル 現役大学生、上方に新風

60~80代の大ベテランが中心の上方浪曲界に、現役大学生2人が新風を吹き込んでいる。1月にデビュー公演を開いた京山幸太(20)はテンポの良い爽やかな芸風。2011年デビューの真山隼人(19)は上方伝統のコテコテな演歌浪曲を得意にする。ルックスも好対照な2人に注目が集まる。

京山幸太のデビュー披露公演

9日、一心寺(大阪市天王寺区)で開かれた月例の「一心寺門前浪曲寄席」。薄紫色の着物に身を包んだ幸太が登場すると舞台が華やぐ。「牛若丸、ビャーッと斜めに跳んだ」。牛若丸と弁慶の出会いを描く「弁慶五条橋」。三味線に合わせて切れ味のいい啖呵(たんか)が響く。最後は13分に及ぶ節回しを披露。汗をぬぐう幸太に「ヨッ日本一!」と掛け声が飛んだ。

兵庫県出身。関西外国語大学に通いながら、師匠の京山幸枝若(こうしわか)のもとで修行に励む。中学時代はヘビーメタルに熱中しバンドを結成。高校を中退してまで音楽に打ち込むが迷いは晴れなかった。

高校卒業程度認定試験(旧大検)を取り、大学進学が決まった2年前、周りの人に進路を相談した。ツイッターで目に留まった作曲家にメッセージを送ると「浪曲を聴いてみては」との助言。動画投稿サイトで幸枝若の名人芸に魅了され、教室の門をたたく。「生の師匠は迫力があってかっこ良かった。一生の仕事だ、とピンときた」

上方で最年少の真山隼人

「京山家は節をアドリブで変え、三味線と掛け合う。即興性と緊張感はジャズに近い」と浪曲の柔軟さを指摘する。「プロジェクションマッピングを使うなど新しいことに挑戦したい」

上方最年少の隼人は鈴鹿医療科学大学(三重県鈴鹿市)2年生。オーケストラのカラオケを使う「演歌浪曲」で知られる真山一郎の弟子だ。高校2年でデビューして話題をまいた。

小さい頃からラジオで落語に親しみ、たまたま聞いた浪曲に心を奪われた。師匠の芸に触れ、「自分もやりたい」。真山に手紙を書き、高校1年で入門した。

髪形はきっちり七三分け。「真山家は芸風もストーリーもコッテリくどいのが魅力。ピンクや赤の派手な着物でそろえる」。眉間にしわを寄せ、情感たっぷりに浪花節をうなる。

鈴鹿市の実家から片道2時間半かけて大阪の師匠のもとに通う。行き帰りの電車内などで師匠の芸を何度も聴き返す。入門当初、伴奏に乗り切れず苦労したが、今では真山家の演歌浪曲33本のうち14本を持ちネタにしている。

思い入れが強いのは明治維新を担う人材を育てた長州藩士を描く「嗚呼(ああ)吉田松陰」。「気持ちを込めすぎて泣いてしまう。先月の公演は初めて自分を客観視できた」と明かす。「10代最後の節目」になる次回3月9日の一心寺門前浪曲寄席でも正装の黒紋付きで演じる。

古くさい浪花節の世界と思われがちだが幸太には「歌って語って演技する。まるで一人ミュージカル」と新鮮に映る。隼人も「コンサートや演劇を参考にしながら」現代性も加味した人物描写を心がけてきた。

浪曲は明治初期に始まり、戦前から昭和30年代にかけ人気のピークを迎えた後、テレビなどに押されて衰退した。上方では60~80代を中心に約20人の浪曲師が活動するが、近年は若手の春野恵子、菊地まどからが活発に自主公演を開くなど、客層を広げている。

浪曲親友協会会長を務める幸枝若は「若い子が出てきたら業界全体が自然と盛り上がる。色々な個性が出て活躍してほしい」と期待をかける。幸太、隼人は28日、国立文楽劇場(大阪市中央区)で「浪曲名人会」の若手座談会に出演する。

(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)

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