一体改革かすむ道筋 社会保障充実、安定財源が急務

首相、増税延期表明へ

政府が消費増税の2年半延期を事実上決めたことで「社会保障と税の一体改革」の原則が揺らいでいる。政府は財源が確保できた場合に、増税しなくても社会保障の充実策を実施する方針だが、景気に左右されない税収が確保できなければ、財政状況をさらに悪化させる可能性もある。

「歳入増と歳出増の道筋を示さないと大間違いを起こす」「増税しないとできないメニューをきちんと説明すべきだ」。31日開かれた自民党の政調全体会議では、こんな指摘が相次いだ。

「社会保障と税の一体改革」は年金や医療、介護、子育てといった社会保障の充実と、消費税率の引き上げを一体で進めるのが原則。消費税率を5%から引き上げた分の使い道と配分はあらかじめ決まっている。

今回見送る8%から10%の引き上げで、増収分のうち、1.3兆円を社会保障の充実に充てる予定だった。そこに含まれているのが低年金者への年6万円の給付金や低所得者の介護保険料の軽減など。2017年度末に待機児童をゼロにするために、保育所を整備する費用も含まれる。

ある自民党幹部は「本当は赤字国債を発行してでも、全部やりたい」と本音を漏らす。

ただ民主党政権(当時)が12年に自民・公明両党との3党合意でつくりあげた一体改革は本来、財政の健全化に道筋を付けるのが狙いだ。

8.2兆円の増収を確保した5%から8%の引き上げの段階では、1.35兆円を社会保障の充実策に充てた一方で、増収分の4割にあたる3.4兆円を財政赤字の圧縮に充てた。今回、安定した税収を確保できないまま、たとえば5000億円かかる国民健康保険への財政支援など医療・介護の充実策を強行すれば、財政赤字の削減が遅れる公算は大きい。

もっともこれまで一体改革の枠組みが、3党合意から一切変わらなかったわけではない。

15年末には自民、公明の両党が主導して、消費税率の10%への引き上げ時に生活必需品の税率を8%に抑える軽減税率の導入が決定。その財源は一体改革の当初のメニューにあった「総合合算制度」をやめることで確保することになっている。

低所得者の社会保障の自己負担に上限を設ける仕組みで、同制度の取りやめで4000億円の財源を確保したが、いまだ6000億円分の財源は確保できていない。今回の増税延期も踏まえ、新たな財源探しが急務だ。

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