強い個性ぶつけ合え ソフィアバンク代表 藤沢久美氏(48)(関西の羅針盤)

第10章 「これから」を語る(4)

――海外の経営者と会う機会が多いですが、関西はどう見られていますか。

「以前、世界中の政財界のリーダーが参加する世界経済フォーラム(ダボス会議)の若手経営者30人と奈良、京都を訪れました。彼らが驚いていたのは、奈良時代の日本が海外から多くの人を招いたり海外へ赴いたりして国造りの知恵を借りていたことです。世界情勢や経済環境が激変し、新たな国のあり方を模索しているところは多く、当時の日本の謙虚に学ぶ姿勢に感銘を受けたようです」

老舗に世界注目

 「関西には創業何百年という企業が多いことにも驚いていました。2008年のリーマン・ショック後に数多くの企業が倒れたように、世界の企業の共通の悩みは持続性です。そのためには何が必要なのか、経営者は哲学やビジョンを懸命に模索しています。関西では旅館などのサービス業ばかりではなく、製造業でも老舗がたくさんある。持続可能性のヒントが関西にはあるのでしょう」

――東京と関西の企業で経営に違いはありますか。

「東京の企業は徐々に米国的になり効率優先に見えます。しかし関西の老舗企業では何が長期的な利益になるかを考え、人と地域を大事にする経営者が多いと感じます。老舗が続いてきたのは、人を大事にしながら内部でイノベーションを続けてきたからでしょう」

――東京一極集中が進み関西は元気がありません。

「関西はバラバラだと言われますが、それは歴史が長い分だけ、地域の個性が強いから。でも本当は強い個性が衝突した時に大きなイノベーションが起きる。各府県が衝突を恐れず話し合いコラボレーションまで至れば、相当な力を発揮できるはずです」

「東京と比較して、だめだと思う必要はありません。関西には長い時間をかけて培ってきた知恵や文化がある。その使い方が下手なだけです。例えば市民参加というネット社会のキーワードの原型が関西にある。奈良や京都には人々が神社仏閣を支えてきたコミュニティーがあります。奈良の大仏造営や再建には庶民が寄進しましたが、現代でいえばクラウドファンディングです。ただ昔の仕組みを放置したままなのが残念です。現代風にアレンジする必要があるでしょう」

外国人を力に

――関西には外国人が多く訪れています。彼らが関西への刺激になりますか。

「関西の深い歴史を実感し、住み着く外国人が増えてくるでしょう。そういう人たちが関西を変えていくかもしれない。関西は多様性を受け入れる土壌がありますから、きっと良い協働が生まれると思います」

〈この地への思い〉歴史に持続性学ぶ シンクタンクの代表を務める藤沢さんの経歴を見ると金融、外資系、経営者と、米国流の合理的な発想をしそうだ。しかし「企業経営でも短期の利益を追うのではなく、10年、100年という長期的な視点を持つことが重要。雇用など社会的責任を考えれば企業は持続性を大事にすべき」と語る。若いころ気づかなかった関西の歴史や文化の魅力が理解できるようになり「今は月に1度のペースで故郷の奈良に帰っています」。長い歴史に裏打ちされた関西の知恵をどう現代で生かすか。考える機会はさらに増えそうだ。(松田隆)
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