【ソウル=山田健一】韓国と北朝鮮は17日、2月の平昌冬季五輪参加について協議する次官級の南北実務会談を開催した。北朝鮮は約230人の応援団を派遣すると表明した。アイスホッケー女子の合同チームの結成も議論した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長の功績の象徴と目されるスキー場の活用も協議。五輪を「人質」にとり韓国に対して融和路線への一段の傾斜を促す北朝鮮の姿勢が鮮明だ。
17日は北朝鮮の代表団や選手団の規模、出場種目などを協議した。9日の南北閣僚級会談で合意した北朝鮮の五輪参加に向けた調整を本格化させた。韓国側は統一省の千海成(チョン・ヘソン)次官、北朝鮮側は祖国平和統一委員会のチョン・ジョンス副委員長を首席代表に、それぞれ3人ずつ参加した。協議は午前10時すぎに始まり、同日夜まで続いた。
韓国統一省によると、北朝鮮は韓国入りの経路について「西海線陸路を利用する」と回答した。南北軍事境界線のある板門店や、南北経済協力事業の「開城工業団地」を挟む南北の往来で使われるルートを示した。北朝鮮に対する航空機や船舶の提供を禁じる国連制裁を考慮し、韓国で過去に開かれた国際大会で実績のある空路などではなく、陸路を選んだとみられる。
南北は、北朝鮮兵士による韓国民間人の銃殺事件をきっかけに観光事業が中断している北朝鮮東部の金剛山(クムガンサン)での文化行事や、同山近郊の「馬息嶺(マシンニョン)スキー場」の活用についても意見を交わした。同スキー場は正恩氏が指示し「世界最高水準」をテーマに造られた。五輪に参加するトップ選手を練習に呼び込み、正恩氏の権威をアピールする狙いとみられる。
北朝鮮にとって一連の議論は五輪後を見据えた布石との位置付けだ。南北の経済協力や観光事業につながる議題を取りあげ、韓国政府に融和を呼びかける戦略が透ける。有力な外貨獲得手段となる「開城」や「金剛山」の再開に向けた雰囲気づくりを狙った可能性もある。
韓国は国連制裁との兼ね合いもあり、経済協力や観光事業の再開を表だっては議論しにくい立場だが、五輪の成功は文在寅(ムン・ジェイン)政権にとって最優先課題でもある。文氏は17日、アイスホッケー女子の南北合同チームを巡り「南北が1つのチームになれば歴史の名場面になる」と述べた。こうした韓国の立場を利用し、融和への一段の傾斜を求めて揺さぶりをかける北朝鮮の戦略が読み取れる。