中台和平協定、現時点では否定的 馬総統、2期目就任式

【台北=山下和成】台湾の総統府は20日、1月の選挙で再選された馬英九総統(国民党主席)の2期目の就任式を開いた。総統は演説で対中政策について、経済を軸とした融和的な姿勢を継続すると表明。一方で、将来の中台統一につながりかねない和平協定には現時点では否定的な考えを示した。通商政策では「今後8年以内に環太平洋経済連携協定(TPP)への加入準備を終える」と述べ、従来の計画を2年前倒しした。

台湾の憲法は総統の3選を認めておらず、馬総統の任期は残り4年。副総統には呉敦義・前行政院長(首相)が就いた。

馬総統は台北市の総統府内で演説し、中台関係について「統一せず、独立せず、武力行使せず」の「3つのノー」の方針を確認。1期目と同様、台湾海峡の現状維持に努める意向を示した。

中台は2010年、自由貿易圏の確立を目指す経済協力枠組み協定(ECFA)を締結済み。総統は関税引き下げ品目の拡大など具体化の協議を「早急に終えたい」とし、経済を中心とした対中融和を維持する考え。

ただ、中台間の和平協定については、演説後の記者会見で「緊急性がなく、現時点では計画がない」と表明。馬総統は昨年、和平協定の可能性に言及して住民の反発を受けた経緯があり、当面は慎重姿勢で臨む。

経済政策では、台湾の発展のための「5つの大きな柱」を提示。一本目の柱は通商政策の拡大などとした。TPPへの参加では、年初に示した「今後10年以内に」との目標を前倒しした。

馬政権は1期目に、00~08年の民進党政権下で関係が悪化した中国に接近。08年に定期の航空直行便を開設し、09年には中国企業の台湾への直接投資を解禁するなど、中国マネーを取り込んだ。台湾経済に一定の恩恵をもたらし、総統に再選される追い風ともなった。

ただ、最近は中国頼みのリスクも浮上。台湾の12年1~4月の輸出総額は前年同期比4.7%減の964億ドル(約7兆6500億円)。最大の要因は約4割を占める中国・香港向けの不振だ。

ECFAでも、関税撤廃が実現した品目は中台間の貿易全体の1割弱。有力シンクタンク、台湾経済研究院の洪徳生院長は「中国は景気減速などで自らの産業保護にも目配りせねばならず、台湾に大盤振る舞いができなくなる」と語る。

馬総統は演説で、日米など中国以外との通商拡大も強調した。中国一辺倒ではなく、バランスの取れた政策が必要だとの認識の裏返しといえる。

今後の政権運営では、支持率の低下も足かせだ。馬政権は再選を決めてから4カ月の間に、電力料金の大幅引き上げなどの政策を一気に表明。これに住民や最大野党の民進党が反発している。2期目は「内政の問題を解決しないと新しい対外政策を打ち出せない」(東京大学の松田康博教授)状況での船出となる。

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