研究者は2つの「E」磨け かがくアゴラ 3月5日 日本企業の研究所でイノベーションにつながる革新的な成果が生まれにくくなっている。トヨタ自動車グループの研究開発会社、豊田中央研究所(愛知県長久手市)の菊池昇所長はその原因として「日本の研究者は自分の専門分野の中で研究を究める意識が強すぎる」と指摘する。解決には目的を達成する手段を意味する「イネーブラー」と新たに出現する様子を表す「エマージング」の2つのEが欠かせないと唱える。 私は東京工業大学 研究者は2つの「E」磨け
光免疫療法の糸口発見 かがくアゴラ 2月26日 がん細胞をピンポイントで破壊できる新たな治療法「光免疫療法」が注目を集める。北海道大学薬学部の小川美香子教授は、ポスドク(博士研究員)として、米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員の下で研究している時に新治療法の糸口を見つけるのに貢献した。 光免疫療法はがん細胞に結合する抗体に色素をくっつけて投与する。薬が患部に届いたところで近赤外線をあてると色素が化学反応を起こし、がん細胞を殺す。が 光免疫療法の糸口発見
AIが研究者を触発 かがくアゴラ 2月19日 日本が伝統的に強いといわれる材料研究で、AI(人工知能)などデジタル技術を活用する機運が高まっている。政府のマテリアル戦略有識者会議のメンバーで、自らも材料研究のデジタル化に取り組む一杉太郎・東京工業大学物質理工学院教授は「研究者が刺激を受け、発想をふくらませられるAIこそが求められる」と語る。 材料研究のデジタル化は米国が先行している。オバマ政権下で始まった「マテリアル・ゲノム計画」以降取り AIが研究者を触発
宇宙時代に音楽と科学を融合 かがくアゴラ 2月12日 コロナ禍を受け、国のイノベーションプロジェクト「ムーンショット型研究開発事業」に新たな目標を検討する21チームが1月、採択された。音楽の力によって人類社会の持続と幸福を追求する「音楽感動共創プロジェクト」を提案し選ばれた、指揮者の西本智実氏は「芸術科学立国」を目指したいという。 音楽と科学とは接点のない両極な存在と思われがちだが、遡れば古代ギリシャのピタゴラス学派にたどり着く。曲を作る際には過 宇宙時代に音楽と科学を融合
火星の衛星フォボスを探査 かがくアゴラ 2月5日 火星の衛星「フォボス」に着陸、試料を地球に持ち帰る探査計画「MMX」の準備が宇宙航空研究開発機構(JAXA)で進んでいる。火星には探査機が多数訪れているが、その衛星は詳しく調べられたことがない。火星重力圏往復も初の試みだ。「探査技術の開発に見通しがつきつつある。スケジュール通りの打ち上げに向け全力を尽くしたい」とMMXプロジェクトマネージャの川勝康弘JAXA宇宙科学研究所教授は話す。 探査機は 火星の衛星フォボスを探査
サイボーグで歩行支援 かがくアゴラ 1月29日 高齢化や障害などによって自力で歩行が難しい人を支援する技術開発が重要になっている。体に装着する歩行支援ロボットは実用化されているが、日常生活では使いにくい。そこで信州大学卓越教授でバイオメディカル研究所の斎藤直人所長らの医工連携研究チームは、体に埋め込む「歩行アシストサイボーグ」の実現を目指している。膝関節を補助して脚を上げる動作ができる試作機を開発した。 体外装着型の歩行アシストロボットはい サイボーグで歩行支援
健康によい培養肉を開発 安藤 淳 かがくアゴラ 1月22日 国連の持続可能な開発目標(SDGs)で、生態系への負荷の少ない安定した食料生産や健康な生活は重要な柱だ。順天堂大学医学研究科の赤沢智宏教授は幹細胞技術を応用して付加価値の高い培養肉を作り、目標の達成に生かそうとしている。 さまざまな細胞のもとになるiPS細胞などの幹細胞技術は、日本では再生医療への応用が注目されている。だが、世界的にみると食料生産に使う動きも活発だ。なかでも肉の生産は、将来への 健康によい培養肉を開発
電子ゴミを「紙」で減らす かがくアゴラ 1月15日 地球温暖化を防ぐため木材由来の新素材セルロースナノファイバーが注目されている。強くて軽い上、燃やしても二酸化炭素を実質的に排出しない。大阪大学産業科学研究所の古賀大尚准教授はこの素材で電子ペーパーやセンサーをつくる研究に取り組む。「普及させて電子ゴミの排出を減らしたい」と話す。 セルロースナノファイバーは木材から取り出すことができる微細な繊維だ。鋼鉄の5分の1と軽量ながら5倍の強度をもつ。自動 電子ゴミを「紙」で減らす
ゲノム編集特許は共同利用を かがくアゴラ 1月8日 2020年のノーベル化学賞に輝いた遺伝子を効率よく切り貼りする技術「クリスパー・キャス9」の特許をめぐり米国の有力大学が係争を続ける。これらの特許を、関係者が協力して管理し安価に使いやすくする「パテントプール」とする構想が模索されている。政策研究大学院大学の隅蔵康一教授は「バイオ特許はパテントプールになじみにくく、別の方法が必要だろう」と解説する。 クリスパー・キャス9の特許は、ノーベル賞を受 ゲノム編集特許は共同利用を
宇宙天気予報を正確に かがくアゴラ 12月25日 太陽から噴き出す陽子などの粒子や高温のプラスマガスが原因の磁気嵐は、大規模な停電やデジタル機器の故障などを引き起こす。社会のデジタル化が進むほど磁気嵐を監視する宇宙天気予報は重要だ。岩井一正名古屋大学准教授は電波望遠鏡を使って粒子やプラズマの動きを詳しく観察、宇宙天気予報や太陽活動の研究に役立てている。 太陽から噴き出した粒子やプラズマの流れを太陽風と呼ぶが、光をほとんど出さないので普通の望 宇宙天気予報を正確に