米国のパパ 小島武仁 交遊抄 6月1日 2012年にノーベル経済学賞を受賞したスタンフォード大学のアルビン・ロス教授は、僕のハーバード大学大学院時代の指導教官だ。24歳でハーバードの門をたたいた僕は心細かった。初めての海外生活、つたない英語……。見学の際、柔和な笑顔で話すロス氏にひかれた。しばらく他の研究トピックを試したが、最終的に彼の研究室に入ることを決めた。 後からわかったのは、彼は骨格は笑顔だが話す内容はけっこう厳しいこと。苦労 米国のパパ 小島武仁
氏神様でばったり 藤原康弘 交遊抄 5月31日 幼いころから大学卒業までは広島市で過ごした。電通のクリエーティブプロデューサーで、大手鉄道会社のテレビCMなどを手がける和田耕司くんは、実家が徒歩10分ほどの幼なじみだ。己斐小、広島学院中高と同じ学校で、物心がついたころからよく遊んだ。 お互い広島を離れて東京に住んでいたが、10年ほど前の正月に実家の氏神様の旭山神社へと続く階段でばったり会った。50歳代前半だった私は国立がん研究センター中央病院 氏神様でばったり 藤原康弘
弁が立つ名参謀 河野貴輝 交遊抄 5月30日 大学時代に財務会計学のゼミで出会い、30年近い付き合いになるのがメットライフ生命執行役員の長尾宗尚君だ。学内で一番厳しいと評判の教授の指摘に真正面から反論する私に対し、彼は相手の言葉をわかりやすくかみ砕き理解を示すことで場を収める。困った時は皆が助言を求める、まさに弁が立つ名参謀だった。 社会人になってからも休日に会う関係が続いた。長尾君は就職せず公認会計士を目指し、私は勤め先の商社で証券外務員 弁が立つ名参謀 河野貴輝
挫折と達成 石黒成直 交遊抄 5月29日 北海道大理学部に入った私は合唱のサークル活動に熱中して留年、中退した挫折者だ。ただ伝統ある北大合唱団では最後は団長を務め、やり遂げた。千葉大大学院薬学研究院の教授をしている樋坂章博君は、その頃に苦楽を共有した仲間だ。 3年生の時、練習場の学生会館が火事で焼け、教会や寺に頼み込むなど代わりの場所を探し回った。その年はトラブルが続き、定期公演の会場にしていた札幌市民会館が改装で使えなくなった。小さな 挫折と達成 石黒成直
イトヤマ会 絲山秋子 交遊抄 5月27日 私には同姓同名の友達が2人いる。私の「絲山」はペンネームで、祖母の旧姓からもらったのだが、糸山明子さんと糸山晶子さんは本名である。住んでいる場所は東京、福岡、群馬で、年齢も仕事も違う。親戚というわけでもない。もし名前が違ったら会うこともなかったと思うと、とても不思議だ。2人とも、本やネットで私のことを知って連絡をくださった。東京のイトヤマアキコさんはなんと誕生日まで一緒だった。 実際に会ってみる イトヤマ会 絲山秋子
限界の先 富山英明 交遊抄 5月26日 現役を引退した後はスポーツ以外の分野でも交友関係が広がった。画家の高波壮太郎さんはその一人。約30年前、夏冬7回の五輪に出場した橋本聖子さんのパーティーで出会った。 絵には全く関心が無かったが、彼の個展に足を運ぶうちに心が引かれていった。空想画のような彼の絵は、油絵の具が幾重にも塗り重なり表面に凹凸が浮かぶ。他の絵とは異なり、画家の「魂」のようなものを感じられた。 彼とは気兼ねなく話せるため、静 限界の先 富山英明
研究の原点 林香里 交遊抄 5月25日 バブル世代の私にとって、フェミニズムを口にするのは戸惑いがあった。学生時代の1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性も頑張りさえすれば活躍できるとの認識が広がっていた。法律ができ、いまさら女性が権利を主張することに世間は否定的だと感じていた。 東京学芸大学で教授を務めていた村松泰子先生(元学長、現名誉教授)に出会ったのは98年ごろ、ジェンダーに関する学会への誘いを受けたのがきっかけだ。私は 研究の原点 林香里
豪快な釣り仲間 喜多甚一 交遊抄 5月24日 繊維大手カジグループ(金沢市)の梶政隆社長に誘われ、船釣りを楽しむようになって10年になる。午前2時、金沢から能登半島の先端・珠洲市に向かい、午前5時に仲間5、6人と船に乗る。 石川県出身で最も幸せなことの一つが海の幸に恵まれていることだ。ブリにキジハタ、カサゴ。高級魚でクーラー箱が満杯になる。下船後はコテージで宴会が始まる。彼の特製アクアパッツアは絶品だ。私も寿しや酒蒸しをつくる。誰かが歌い出 豪快な釣り仲間 喜多甚一
新幹線の伝道師 宿利正史 交遊抄 5月23日 知日派の米国の高官や要人は多いが、ブッシュ政権で大統領特別補佐官を務めたトーケル・パターソンさんは特別な存在だ。2014年にJR東海の葛西敬之さんが主導して立ち上げた「国際高速鉄道協会(IHRA)」。新幹線の技術・経験や価値を海外に伝えるため、パターソンさんと二人三脚で世界を飛び回った。 筑波大学に留学経験があり、駐日米国大使の上級顧問としても活躍したパターソンさんは日本語が堪能なだけでなく、日 新幹線の伝道師 宿利正史
笑わせる力 中西章裕 交遊抄 5月22日 愛知県立時習館高等学校の33回生で「マグロ(真黒)」と呼ばれた男がいる。同県安城市の小児科医院「マグマグこどもクリニック」で院長を務める瀧本洋一君だ。1978年4月の入学時に初めて出会い、ともにサッカー部に入ったことで親しくなった。日焼けで常に真っ黒なマグロは人を笑わせるのがうまく、自然と人が集まるようなクラスの人気者だ。 マグロは山口大学医学部を卒業後、大学病院へ就職した。「身近な患者さんにあ 笑わせる力 中西章裕