『新明解国語辞典』9年ぶりに改訂 活字の海で 1月16日 「考える辞書」とのキャッチフレーズを掲げて版を重ねてきた『新明解国語辞典』(三省堂)が9年ぶりに改訂された。第1版の刊行は1972年で、今回が第8版になる。前身の『明解国語辞典』を含めると累計の発行部数は2200万部に上る。見出し語の枝分かれが少なく、ユニークな用例や語釈は高く評価されてきた。芸術家、赤瀬川原平氏は著書『新解さんの謎』のなかで「新解さんの辞書の特徴は、守りではなく、攻めの辞書だと 『新明解国語辞典』9年ぶりに改訂
世界の貧困の実態を示す 活字の海で 12月19日 世界経済が発展するにつれ、1日に1.9ドル未満で生活する「貧困者比率」は過去30年間で大きく下がってきた。それでもサブサハラ・アフリカをはじめ、世界各地にはなお貧困や保健衛生の問題に苦しむ数多くの人々がいる。そうした現場で支援や調査活動を続けてきた専門家たちの訴えには重みがある。 『開発コンサルタントという仕事』(2020年10月、日本評論社)の著者、笹尾隆二郎氏は1990年代後半から開発コンサ 世界の貧困の実態を示す
ねじめ正一が「死」題材に絵本 活字の海で 12月12日 子どもが「死」について考える入り口の一つに、絵本がある。長く読まれる作品としては『わすれられないおくりもの』(1986年、評論社)や『ずーっと ずっと だいすきだよ』(88年、同)がある。前者は、村で慕われる年老いたアナグマが死んだ悲しみを、思い出とともに皆で乗り越える物語だ。後者は、大好きだった飼い犬が死んでしまうが、いつも愛情を伝えていた主人公の少年に後悔はない。死んでしまってもずっと心の中 ねじめ正一が「死」題材に絵本
ケインズとシュンペーターを統合 活字の海で 11月28日 過去40年間、多くの経済学者は家計や企業の行動を分析するミクロ経済学と、マクロの経済現象を分析するマクロ経済学の「統合」に情熱を注いできた。しかし、「代表的な消費者」が効用(満足度)をできる限り大きくするために行動するという仮定から出発し、ミクロの動きを「相似拡大」してマクロの現象を説明しようとする議論は誤りだ――。 立正大学学長の吉川洋氏は、50年にのぼる研究の集大成といえる近著『マクロ経済学 ケインズとシュンペーターを統合
講談社文芸文庫の電子書籍 活字の海で 11月21日 近現代文学の名作を集めた講談社文芸文庫には、次に何が出るのかと期待させるところがある。今年の作品を見ても、石坂洋次郎の短編集『乳母車・最後の女』(編・三浦雅士)に始まり、昨年亡くなった文芸評論家、加藤典洋の『テクストから遠く離れて』『村上春樹の世界』、今年亡くなった作家、古井由吉の長編『野川』、国際的に評価の高い多和田葉子の『ヒナギクのお茶の場合 海に落とした名前』などが続いた。そこには『つげ義 講談社文芸文庫の電子書籍
総額表示は誰のため? 活字の海で 11月14日 書籍は「本体○円+税」など消費税別の表示が普及している。ところが2021年3月末、税抜き表示を認める特措法が期限切れとなることから出版界が揺れている。 商品やサービスの値段に総額表示が義務付けられたのは04年4月。出版社は書籍に挟む注文カード「スリップ」に総額を表示することにした。「日本雑誌協会 日本書籍出版協会50年史 Web版」によると、1989年の消費税導入時には、総額を表示するカバーへの 総額表示は誰のため?
イノベーションの起こし方 活字の海で 10月31日 イノベーションに焦点を当てる著作の人気は根強い。日本企業や個人がイノベーションを起こすための具体的な方法に踏み込んだ著作も増えている。 関西学院大学の玉田俊平太教授は『日本のイノベーションのジレンマ第2版』(翔泳社、2020年8月)で、「破壊的イノベーション」と呼ばれる現象が起きるメカニズムを解説し、具体策を示している。故クレイトン・クリステンセン米ハーバード大学教授から直接、教えを受けた著者は イノベーションの起こし方
「新編加藤楸邨全句集」新たに3800句 活字の海で 10月24日 何と多彩な詩情を表現した俳人だろうか。昭和を代表する俳人、加藤楸邨(しゅうそん)(1905~93年)が残した句を集大成した『新編 加藤楸邨全句集』(青土社)を読みながら、改めてそう感じた。 楸邨でまず思い浮かぶのは、「鮟鱇(あんこう)の骨まで凍(い)ててぶちきらる」(ルビを追加、以下同様)。寒さの中でつるし切りにされて売られる鮟鱇の姿を一息に詠んだ代表作だ。「雉子(きじ)の眸(め)のかうかうとし 「新編加藤楸邨全句集」新たに3800句