中国・過剰な秘密主義の弊害 NIKKEI Asia Opinion 3月7日 中国湖北省武漢市で、世界初の新型コロナウイルスの集団感染が確認されてから1年あまりが過ぎた。中国の指導部は、1世紀に1度級の大惨事から教訓を得るべきだろう。ところが指導部はどちらかといえば、コロナ危機は中国の有効な統治能力を示したとして、自画自賛する。 中国の自らのシステムの優位性についての主張は、重要な真実を省略している。武漢の感染拡大に対する中国政府の当初の対応は、惨憺(さんたん)たるものだ 中国・過剰な秘密主義の弊害
中国のソフトパワーへの警戒心 NIKKEI Asia Opinion 2月28日 ロンドンの金融街シティーの端にはかつて、英王立造幣局が置かれていた。造幣局の起源は、ロンドンをデーン人の手から取り戻したことで知られるアルフレッド大王が、銀貨の鋳造を始めた882年にさかのぼるという。中国は2018年5月、在英大使館の移転のため、歴史的な場所を譲り受ける式典を開いた。 中国の大使館移転の動きは、同国が欧米諸国の大半とは違う時間軸で物事をとらえていることを示す。中英関係がきしもうと 中国のソフトパワーへの警戒心
ベトナム、経済成長に伴う矛盾 NIKKEI Asia Opinion 2月21日 ベトナム共産党は1月、序列1位で同国の最高指導者である書記長に現職のグエン・フー・チョン氏(76)の留任を決めた。「2期10年」としてきた党規約の制限を超え3期目に入ったチョン氏は、2019年に軽い脳梗塞を発症したとされ、健康に不安があるようにみえた。問題化はしなかったが、次期体制を見据えた動きは急務といえる。 今後5年間の指導部人事を決める党大会には、全土から約1600人の代表者が参加した。ベ ベトナム、経済成長に伴う矛盾
マレーシア引き込む「寛大」中国 NIKKEI Asia Opinion 2月14日 新型コロナウイルスの感染拡大により、マレーシアは中国の勢力圏にさらに引き込まれる公算が大きい。2020年、(マレーシアを含む)大方の国がマイナス成長になったようだが、中国経済は急速に回復している。 マレーシアは経済政策に関しては現実的で、外交上もイデオロギーの違いにとらわれることはあまりなかった。中国は、マレーシア政治が混乱気味で、経済も苦しんでいることに乗じ「寛大」ととれる姿勢を強める。中国の マレーシア引き込む「寛大」中国
人民元、アジア基軸通貨になる時 NIKKEI Asia Opinion 2月7日 米国は、新型コロナウイルスの感染拡大による危機に対応する巨額の財政支出により、連邦政府の債務残高が国内総生産(GDP)比130%程度に膨らんだ。米連邦準備理事会(FRB)は国債を購入し、バランスシートが拡大した。一方、中国は経済が再び機能するようになり、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)などを通じ経済的リーダーシップを発揮しようとしている。 中国が東アジアでの米国のドル覇権を崩壊させる 人民元、アジア基軸通貨になる時
タイ、不敬罪の改正不可欠 NIKKEI Asia Opinion 1月31日 タイの抗議デモは珍しいことではないが、若者主導の反体制集会は2020年以来、タブーとされていた王室改革を公然と要求している点で前例のないものになった。当局は不敬罪を適用し、ワチラロンコン国王を守ろうとしている。しかし君主制に対する批判的な議論を抑えるために不敬罪に頼ろうとするのは焦りのあらわれで、判断は裏目に出るだろう。 反体制グループは主に、軍政の流れをくむプラユット政権の退陣とともに、権限の タイ、不敬罪の改正不可欠
米新政権が引き継ぐ分断の試練 NIKKEI Asia Opinion 1月24日 米国で、バイデン大統領が就任した。トランプ前大統領は就任式に出席しなかった。トランプ氏の慣例破りは、新型コロナウイルスの感染拡大や米史上初となる2度の弾劾訴追と問題まみれだった任期の最後につけ加えられた、陰気なコーダ(楽曲の終結部)だった。 2020年の米大統領選では、7千万人程度がトランプ氏に投票した。(トランプ氏を候補に選んだ)共和党の支持者の過半数が、(バイデン氏の)民主党が選挙を不正に操 米新政権が引き継ぐ分断の試練
中国経済の復活、内向きのインド NIKKEI Asia Opinion 1月17日 中国と欧州連合(EU)は2020年12月、投資協定を結ぶことで大筋合意した。6年以上の交渉を経て合意した協定は、経済的なメリットが大きい。EUは人権や公正な貿易などをさかんに強調していたが、商業的な利益が勝ったのは明らかだ。ドイツなどEU加盟国は、欧州の貿易が中国のグローバルなサプライチェーン(供給網)から締め出される可能性を認識した。 中国が世界経済の中心にあるという現実について、理解していな 中国経済の復活、内向きのインド
ベトナム「為替操作国」は発火点か NIKKEI Asia Opinion 1月10日 米国のトランプ政権は退陣前、アジアの新興国に文句をつけずにいられなかった。米財務省は2020年12月、中国などより小さいベトナムを「為替操作国」に認定した。 米国との貿易で(対米貿易黒字を膨らませるなど)ベトナムが勝利したことへの報復と言ってもいいかもしれない。トランプ氏が中国と貿易戦争を繰り広げた結果、製造業の生産では中国からベトナムへの移管が進んだ。 為替問題は、米国とアジアの次の発火点にな ベトナム「為替操作国」は発火点か
「勇敢」な豪が中国に払った代償 NIKKEI Asia Opinion 12月27日 オーストラリア政府が4月、新型コロナウイルスの発生源などを巡り独立した調査を求めた際、中国との関係が大きくこじれるとはほとんど予想されていなかった。新型コロナの情報隠蔽に対する批判に極めて敏感な中国政府は、豪州産の食肉や大麦、石炭、ワインなどに輸入制限を課している。 中国は、日本や韓国などアジアの国々と摩擦が起きるたび、貿易上の制裁を武器に使う。こうした経済的な代償が大きくなるなか、豪州の産業界 「勇敢」な豪が中国に払った代償