[FT]弱まる自由民主主義の光 マーティン・ウルフ FT FT commentators 1月4日 「21世紀に入って初めて人口100万人超の国で民主主義国を非民主主義国が上回った」。歴史学者のT・G・アッシュ氏は「自由主義の未来」と題した小論でこう断じた。米スタンフォード大学のL・ダイアモンド氏のいう「民主主義の後退」のことだ。幸い米国でバイデン前副大統領が次期大統領に選ばれたが、それで話は終わらない。 今起きていることを理解するには、政治と経済の関係を明らかにする必要がある。米経済学者のブ [FT]弱まる自由民主主義の光
[FT]企業の目標 再定義を マーティン・ウルフ FT FT commentators 12月16日 事業会社の目標は何であるべきか。米経済学者のミルトン・フリードマンは、1970年9月の米ニューヨーク・タイムズ・マガジンの記事で「企業の社会的責任は利益の最大化」だと説いた。長年英語圏において、そして次第にほかの国でも、これが最も一般的な見解だった。筆者もかつてはそう信じていた。だが、今は間違っていたと言わざるを得ない。 この記事は通読をお薦めするが、核心は結論にある。「企業の社会的な責任はただ [FT]企業の目標 再定義を
[FT]人命重視が経済も救う マーティン・ウルフ FT FT commentators 12月2日 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から我々が学んだ唯一にして最大の教訓は、歴史的な観点でみると比較的緩やかなパンデミックであるにもかかわらず、大きな被害が生じてしまったことだ。 緩やかといっても、コロナがもたらした苦しみや、効果的なワクチンを世界に展開できるまで続く苦痛を軽んじているわけではない。だが、新型コロナは専門家の想像を大きく上回る社会的、経済的な脆弱性を明らかにした。なぜ [FT]人命重視が経済も救う
[FT]経済のコロナ後遺症防げ マーティン・ウルフ FT FT commentators 10月28日 新型コロナウイルスに感染した患者の中には、回復後もつらい症状に長く悩まされる人が多い。これは「コロナ後遺症」と呼ばれるが、経済にも同じことが起こり得る。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって世界経済は深刻な景気後退に陥るだけでなく、その後も何年にもわたって衰弱した状態から抜け出せなくなる恐れがある。この「経済のコロナ後遺症」の脅威に対応するためにも、政策決定にあたる当局者は2008年の [FT]経済のコロナ後遺症防げ
[FT]医療物資、危うい国内回帰 マーティン・ウルフ FT FT commentators 6月26日 「大統領、今回の危機が我々に教えたことの一つは、ペニシリンなどの医薬品、マスクなどの医療用品、人工呼吸器などの医療機器について、我々が国際供給網に危険なほど依存しすぎていたということです」。これは、トランプ米大統領に強い影響力を持つナバロ大統領補佐官(通商担当)が、新型コロナ危機から得た貿易政策上の教訓として語った言葉だ。 保護貿易主義者はこういう見方をしがちだが、この考えは間違っている。今回の [FT]医療物資、危うい国内回帰
[FT]メルケル独首相、基金創設の決断 マーティン・ウルフ FT FT commentators 6月5日 欧州連合(EU)は破局から生まれ、危機を通じて発展してきた。だが今、多くの脅威に直面している。これらの試練に対処できなければ、EUは崩壊することさえあり得る。 幸いにもドイツのメルケル首相はそのことを理解し、欧州に不可欠な国の信頼できる指導者であり続けている。同氏は5月18日、フランスのマクロン大統領と画期的な復興基金設立で合意し、欧州の可能性を大きく変えた。 ■EUを潰さないとの決意見せた独仏の [FT]メルケル独首相、基金創設の決断
[FT]過剰債務のわなからどう脱するか マーティン・ウルフ FT FT commentators 5月15日 1933年、当時の米連邦準備理事会(FRB)議長マリナー・エクルズは議会でこう証言した。「金持ちは可能な限り貯蓄しようとしてきたが、(恐慌となり富豪が所有する稼働していない工場や車両、閉鎖中の銀行など)もはや貯蓄する価値のあるものはない」と発言した。 債務は経済を脆弱にする。従って、この債務の罠(わな)からどう脱出するかが問題だ。この問題を解決するには、今日の世界経済がなぜこれほど債務に依存する [FT]過剰債務のわなからどう脱するか
[FT]「レバレッジ志向」危険露呈 マーティン・ウルフ FT FT commentators 5月1日 危機は脆弱性を浮き彫りにする。今回も例外ではない。新型コロナウイルスは様々な脆弱性を露呈したが、金融システムの脆弱性も暴いた。これは特に驚くにあたらない。利益を増やす魔法のつえとばかりに高いレバレッジ(借入金を利用して投資し、利益を高めること)に頼る手法が、前回の金融危機の時と同様、民間部門の増益と公共部門による救済という結果を招いた。国家は中央銀行と政府を介して巨大な規模で金融の救済に乗り出し [FT]「レバレッジ志向」危険露呈
[FT]世界経済に「大遮断」の危機 マーティン・ウルフ FT FT commentators 4月17日 国際通貨基金(IMF)は14日に発表した最新の世界経済見通しの中で、世界の現状を「グレート・ロックダウン」と表現した。だが、筆者は現状を踏まえると、むしろ「グレート・シャットダウン(大遮断)」と呼んだ方がよいと考える。そもそも今の惨状はロックダウン(都市封鎖)が根本の原因ではないし、封鎖を強行していなかったとしても世界経済は崩壊していただろうし、封鎖を解除しても経済の崩壊は続くかもしれないからだ [FT]世界経済に「大遮断」の危機
[FT]倫理問う新型コロナ対策 マーティン・ウルフ 新型コロナ FT FT commentators 4月1日 コロナウイルスはただひたすら自己増殖しようとする。我々はその増殖を食い止めようとする。ウイルスと異なり、人間は選択をする。このパンデミック(世界的流行)はいずれ終わり、過去のものとなるだろう。だが、どのような過程を経て終わるかで世界のあり方は変わってくる。このようなパンデミックの発生は100年ぶりだ。そして今回は、スペイン風邪が各地を襲った1918年とは異なり、平和で、空前の富を享受している世界 [FT]倫理問う新型コロナ対策
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チーフ・エコノミクス・コメンテーター
チーフ・エコノミクス・コメンテーター
Martin Wolf 英国生まれ。経済政策の間違いが第2次世界大戦を招いたとの問題意識から経済に関心を持つ。世界銀行のエコノミストなどを経て87年にFT入社。一貫して経済問題を執筆。現在最も影響力のあるジャーナリストとされ、その論評、発言は各国の財務相や中央銀行総裁も注目するという。
Martin Wolf 英国生まれ。経済政策の間違いが第2次世界大戦を招いたとの問題意識から経済に関心を持つ。世界銀行のエコノミストなどを経て87年にFT入社。一貫して経済問題を執筆。現在最も影響力のあるジャーナリストとされ、その論評、発言は各国の財務相や中央銀行総裁も注目するという。