[FT]中国に擦り寄るEUの危険 ギデオン・ラックマン FT FT commentators 1月8日 欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長は、就任に先立つ2019年11月、「地政学的な責任を果たす欧州委員会」を率いたいと抱負を語った。 しかし、EUが20年12月30日に中国と投資協定締結に向け大筋合意したことで、フォンデアライエン氏は地政学的に極めてまずいメッセージを世界に発して20年を終えることとなった。 中国はこの1年、香港の自由を奪い去り、新疆ウイグル自治区でのウイグル人弾圧を強め、 [FT]中国に擦り寄るEUの危険
[FT]ポピュリズムは衰退せず ギデオン・ラックマン FT FT commentators 11月13日 米大統領選の結果が出始めた4日、スロベニアのヤンシャ首相はツイッターにこう投稿した。「米国民がトランプ大統領とペンス副大統領に4年間の続投をするよう選んだのは明らかだ。引き延ばしや事実の否定をすればするほど(中略)最終的な勝利は大きくなる」 この投稿は、滑稽な早とちりでは片付けられない重要な事実を示している。トランプ氏の再選に大きく懸けていた指導者や政府が世界中にいるという事実だ。 来年1月で米 [FT]ポピュリズムは衰退せず
[FT]高まる台湾巡る米中衝突リスク ギデオン・ラックマン FT FT commentators 10月23日 米大統領選では、投票直前の10月に選挙戦に重大な影響を与える「オクトーバー・サプライズ」が起きるというのは言い古されてきた指摘だ。それに比べてあまり言われないのは、中国が米国の今の政治的混乱に乗じて11月か12月に台湾に対し何らかの行動を起こし、国際情勢が深刻な事態に陥るリスクがあるという点だ。 米選挙戦を巡る騒ぎで見えづらくなっているが、中国の台湾に対する言動は攻撃性を高めている。台湾は事実上 [FT]高まる台湾巡る米中衝突リスク
[FT]米中が強いる域外適用 ギデオン・ラックマン 中国・台湾 北米 FT FT commentators 9月30日 ドイツの小さな町に米国の上院議員から1通の書簡が届く。「強固な法的、経済的制裁」を科すと通告する内容だ。英オックスフォード大学や米プリンストン大学では教授が小論文を匿名で提出するよう学生に指示する。中国の法律に違反したことで逮捕される可能性から身を守るためだ――。 ようこそ、これが法の域外適用の世界だ。米国と中国はともに次第に国内法の適用範囲を海外へ広げようとしている。外国企業と外国人に対して、 [FT]米中が強いる域外適用
[FT]本音みえない米大統領選 ギデオン・ラックマン FT 8月28日 8月17~20日に開かれた米民主党の全国党大会では、ある種の不安が広がっていた。その懸念は、11月の大統領選挙で共和党の現職のトランプ氏が勝利することではなく、同氏が投票を妨害したり敗北を認めなかったりして、不正に勝利を奪うのではないかという不安だった。 米コメディアンのサラ・クーパー氏が言う「トランプ氏は、自分がまっとうには勝てないことを知っている」というコメントは、一般に広まっているこの懸念 [FT]本音みえない米大統領選
[FT]英とEUの「特別な関係」 ギデオン・ラックマン FT FT commentators 8月7日 ロシア政府は、2016年の英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を巡る国民投票で、離脱派の勝利を熱望していた。ロシアのプーチン大統領は、英国がEUから離脱すれば西側諸国の同盟は弱体化すると考えていたからだ。 だが、ここへ来てプーチン氏の考えは間違っていたように思える。英国のEU離脱は西側諸国の同盟の弱体化どころか、強化につながるかもしれない。英国が離脱したことで、EUは「絶えず統合を深化させる連 [FT]英とEUの「特別な関係」
[FT]香港、ビジネス都市に限界 ギデオン・ラックマン FT FT commentators 7月10日 筆者は何年か前、シンガポールのある閣僚と話していた。その時、相手が一瞬本音が出たのか、シンガポール政府が野党政治家らの活動を意図的に難しくしていることを認めた。そして、かすかな笑みを浮かべてこう続けた。「しかし、ここシンガポールで政府が使う手段は、歯科医が使う器具程度のものだ。中国は大づちを振るう」 中国政府が6月30日に香港国家安全維持法を施行した時、筆者はこの会話を思い出した。香港の財界エリ [FT]香港、ビジネス都市に限界
[FT]東アジアから世界危機 ギデオン・ラックマン FT FT commentators 6月19日 中国は何をしようとしているのか。習近平(シー・ジンピン)国家主席率いる中国政府は、香港から台湾、南シナ海、インドとの国境に至るまで、次々と攻撃的な政策を取っている。中国政府のこうした動きには、米国のみならずインド、英国、日本、オーストラリアの各国政府も懸念を強めている。 世界が新型コロナ禍への対応に追われている今が好機だと中国政府は思っているのかもしれない。全米に広がった黒人差別への抗議デモは、 [FT]東アジアから世界危機
[FT]ブラジル、大衆迎合がもたらす惨事 ギデオン・ラックマン 新型コロナ 中南米 FT FT commentators 6月3日 昨年、ブラジルを訪れた際に著名な財界人と会い、同国のボルソナロ大統領とトランプ米大統領の類似点について話したことがあった。 「2人はとてもよく似ている」。彼女はこう言ったうえで、「でもボルソナロの方がはるかにバカよ」と続けた。この答えには正直驚いた。トランプ氏は一般的に、非凡な知性の持ち主とはみられていないからだ。だが、彼女はその主張を補足する言葉を続けた。「トランプは大企業の経営者だったけど、 [FT]ブラジル、大衆迎合がもたらす惨事
[FT]コロナ禍の危ない副作用 ギデオン・ラックマン 新型コロナ 中国・台湾 ヨーロッパ 北米 FT FT commentators 3月30日 経営コンサルタントの大前研一氏がグローバル時代を論じた「ボーダレス・ワールド」を著したのは、ベルリンの壁が崩壊した翌年の1990年だった。今、ボーダー(国境)がすさまじい勢いで復活しつつある。引き金は新型コロナウイルスだ。 このウイルスの世界的な大流行が終息すれば、極端な移動制限は解除されるだろう。しかし国民国家が復活しつつあり、ウイルス発生前のグローバルな世界に完全に戻る可能性は低い。 理由は [FT]コロナ禍の危ない副作用
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チーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーター
チーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーター
Gideon Rachman 英国生まれ。英BBCや英エコノミストなどを経て2006年FTに入社。同年、現在の外交関係の論評責任者に。2016年政治分野のジャーナリストとして英オーウェル賞を受賞。著書に「Easternization」(2016年)などがある。
Gideon Rachman 英国生まれ。英BBCや英エコノミストなどを経て2006年FTに入社。同年、現在の外交関係の論評責任者に。2016年政治分野のジャーナリストとして英オーウェル賞を受賞。著書に「Easternization」(2016年)などがある。