「牛頭天王図」公開 若冲弟の白歳、宝蔵寺 京都 関西 2月3日 京都市中京区の宝蔵寺は3日、江戸中期の画家伊藤若冲の弟、白歳(1719~92年)が描いた「牛頭天王図」(縦約79センチ、横約40センチ)を報道陣に公開した。寺などによると、明治期に公開されたとの記録があるが、所在不明だったという。6~11日に開催する寺宝展で展示される。 鑑定した福田美術館(同市右京区)の岡田秀之学芸課長によると、牛頭天王は祇園社(現八坂神社) 「牛頭天王図」公開 若冲弟の白歳、宝蔵寺
辻惟雄(30)合縁奇縁 辻惟雄 私の履歴書 1月31日 2020年6月、88歳を迎えた。おかげさまで、という感謝の気持ちと、なにがめでたいのか、とが入り交じった複雑な心境である。実は私の自伝的な本は「奇想の発見―ある美術史家の回想」と題して出版済みだ。なので今回、さらに「私の履歴書」を執筆するのはどうかとも思ったが、書き残したエピソードも多々あることだろうと思い直し、再びお目を汚すことになった。 地方の医者の家に生まれ、跡継ぎになるはずだった私が、ど 辻惟雄(30)合縁奇縁
辻惟雄(29)滋賀へ 辻惟雄 私の履歴書 1月30日 懐かしい仙台での教授生活に比べ多摩美術大学長の役は少々重すぎた。間近に接したアーティストたちの、自由で個性的な生き方に教えられたが、「お勤め」はこれで打ち止め。ところが、もう一幕、仕事を引き受けることになったのである。 きっかけは国際日本文化研究センターでお世話になった梅原猛さんからの電話だった。2005年の2月の終わりのことだ。「滋賀の美術館が館長を探しておるのや」とおっしゃる。近々会いたいと 辻惟雄(29)滋賀へ
辻惟雄(26)日文研に 辻惟雄 私の履歴書 1月27日 米国のボストン美術館の日本美術の総カタログづくりは1991年に始まった。仏画を皮切りに仏像、仏具、袈裟(けさ)、能面、絵巻、水墨画、初期狩野派、江戸期狩野派、曽我蕭白、伊藤若冲……。 この美術館の日本美術の集積の厚さとスケールに改めて感嘆した。美術史家の立場でいうと、我が国固有の美術品のかけがえない価値に気付く人が稀(まれ)だったことの証明でもあると思った。 日米の研究者がチームを組んで美術品を 辻惟雄(26)日文研に
辻惟雄(23)東北大へ 辻惟雄 私の履歴書 1月24日 「東北大学に来ないか」と誘ってくださったのは東京国立文化財研究所の美術部長を務めた高田修さんだ。仏教美術の専門家で当時、東北大の文学部の教授で、異動が決まった日本美術担当の教授の後任を探して東京と京都にいる東北大出身者に打診して回っていた。 だが首尾良くいかなかったらしい。正直な高田さんは「打診するのは君が4人目なんだ」と打ち明けた。そのころ、仙台は遠かった。言葉は悪いが「都落ち」というイメージ 辻惟雄(23)東北大へ
辻惟雄(22)奇想の系譜 辻惟雄 私の履歴書 1月23日 岩佐又兵衛、曽我蕭白、伊藤若冲――。文化財研究所で狩野元信の研究を続けながら、江戸絵画の個性的な絵師たちの作品と次々に巡り合って、私の中で江戸の美術史について従来の定説を打ち破る独自の見方が芽生え始めていた。 狩野派、円山派、琳派など流派史の研究は非常に重要だ。しかし狭いジャンルに自分を押し込めるのは息苦しくて退屈に感じた。そんな思いが強まっていた。大学の研究室を経て美術研究所で興味の赴くままに 辻惟雄(22)奇想の系譜
辻惟雄(21)結婚 辻惟雄 私の履歴書 1月22日 曽我蕭白について調べている時期と前後して、ヨットで太平洋を乗り回すアメリカの変わった資産家の御曹司が日本にやってきて、京都や東京の古美術商を回って伊藤若冲の絵を熱心に探しているとの噂を耳にした。 浮世絵をはじめ江戸絵画の逸品の海外流出は私たち日本美術の研究者には胸の痛む事態である。気をもんでいるうちに、若冲の作品2点を買う契約を東京の古美術商と結んだと聞いて慌てて店を探し当てた。絵が海を渡る前に 辻惟雄(21)結婚
医学部断念 辻惟雄さん「私の履歴書」まとめ読み 辻惟雄 カバーストーリー 1月17日 美術史家の辻惟雄さんは岩佐又兵衛や伊藤若冲らを「奇想の画家」として紹介し、一大ブームを作った江戸絵画史研究の第一人者です。しかし美術史家への道は平たんではありませんでした。岐阜の産婦人科医の次男として医師を目指して東大に入りましたが、病気をきっかけに留年し、医学部への進学を 医学部断念 辻惟雄さん「私の履歴書」まとめ読み
迫力際立たせる裏彩色(美術評) 関西タイムライン 京都 大阪 関西 11月6日 雌雄の鳳凰(ほうおう)が、不思議な形の岩にとまっている。その背景には生き物のようにも見える波頭、そして真っ赤な旭。それらが絹地の大画面に、激しい色彩で描かれている。この絵には異様な迫力がある。 その迫力に負けずに画面の細部に目を凝らしてみる。すると、意外にも微妙な色彩で画面が作られていることに気づく。裏彩色という絹地の裏側から色塗りする技法が、この色彩を生み出しているのである。つまり、これは驚異 迫力際立たせる裏彩色(美術評)
人をつなぎ美を未来に引き継ぐ クリスティーズの流儀 5月7日 人と人とをつなぐことで美術品の確かな価値を時代を超えて引き継いでいく ――世界で最も長い歴史を持つ英国の美術品オークションハウス、クリスティーズの日本法人社長を務める山口桂さん。20年以上にわたり、日本美術の「スペシャリスト」として世界を舞台に活躍してきました。そもそも、オークションハウスのスペシャリストとはどんな仕事なのでしょう? 一言でいえば、特定分野の美術品に関する深い専門知識を持ち、作品の 人をつなぎ美を未来に引き継ぐ クリスティーズの流儀