東大に「大江健三郎文庫」 自筆原稿1万枚超を寄託 2月13日 東京大は13日までに、ノーベル賞作家、大江健三郎さん(86)の1万枚を超える自筆原稿など、計約50点の資料が文学部に寄託されたと発表した。同学部は今後、資料を管理する「大江健三郎文庫」(仮称)を設立し、研究者向けに公開する方向で検討している。 資料は大江さんの自宅のほか、著作の版元である講談社や文芸春秋に所蔵されていたもの。大半が自筆原稿で、校正刷りなども含む。初期の「死者の奢(おご)り」(19 東大に「大江健三郎文庫」 自筆原稿1万枚超を寄託
俳句、モダニズムの時代 都市の詩 カバーストーリー 1月16日 第1次世界大戦勝利による好景気で、日本の都市人口は一気に増大する。大正~昭和初期、都会には洋装のモボ・モガ(モダンボーイ・モダンガール)があふれ、カフェやバーが軒を連ねた。生活の変化を受け、文学でも川端康成や横光利一らが都市生活の機微を描写、新感覚派と称された。 このモダニズムの流れを俳句で展開したのが、ともに明治34年生まれの山口誓子と日野草城である。 誓子は、高浜虚子の俳誌「ホトトギス」で阿 俳句、モダニズムの時代 都市の詩
モデルの一生(2) 藤島武二「芳●(くさかんむりに惠)」 美の十選 1月5日 責め絵の伊藤晴雨、大正美人画の竹久夢二、西洋画の巨匠・藤島武二。彼らは同じ、1人のモデルを描いた。 モデルの一生(2) 藤島武二「芳●(くさかんむりに惠)」
パロディの時代 マンガ家 とり・みき エッセー 11月24日 前回はマンガやマンガ家に限っての話だったが、70年代後半という同じ時期には、他の分野でもパロディやパスティーシュということを強く意識した人物や作品が登場し、私はこれらに強い影響を受けた。 まずは先述のタモリ。モノマネ対象の人物が話題にしそうもない案件について、その人物の思考法でアドリブ的に語る、という「思想模写」を開拓し従来の「声帯模写」とは一線を画した。イラストレーターの和田誠が著した「倫敦巴 パロディの時代 マンガ家 とり・みき
画家・司修さんが水上勉さんからもらった絵手紙 カバーストーリー 10月17日 つかさ・おさむ 1936年生まれ。法政大学名誉教授。中学卒業後、独学で絵を学び絵画、版画、装丁などを手がけるほか、小説など文筆でも活躍。小説「犬」は川端康成文学賞を受賞した。著書に「空白の絵本」など多数。 ■蛇のオカリナ 蛇のオカリナは、畑山博著「アステカの少女」の挿絵のための取材で、メキシコを旅した時、土産に買った。レプリカではあるけれど独創的な笛。素焼きの色彩は弥生土器を思わせる。 オアハカに 画家・司修さんが水上勉さんからもらった絵手紙
8日にノーベル文学賞発表 日本人作家受賞の可能性は ノーベル賞 カバーストーリー 10月8日 スウェーデン・アカデミーは8日午後8時ごろ、ノーベル文学賞を発表する。日本人作家では、これまで国際的な文学賞を数多く受賞してきた村上春樹氏(71)が選ばれるかが注目だ。日本人が文学賞を受賞すれば、1968年の川端康成氏、94年の大江健三郎氏に次ぎ3人目となる。 村上春樹氏は米現代文学の影響を受けた寓話(ぐうわ)的な物語を軽快な文体でつづり、世界の読者を魅了してきた。国際交流基金によると、作品は5 8日にノーベル文学賞発表 日本人作家受賞の可能性は
日本蒙昧前史 磯崎憲一郎著 読書 8月15日 大阪万博の開幕、密林に逃亡していた日本兵の帰還、五つ子の誕生……。一見しただけなら、この作品の中には歴史的な事実が記されているように思われる。しかし、注意深く読み込んでいくなら、いずれも虚構であることが分かるようになっている。 たとえば、万博のシンボルであった太陽の塔。その先端、「黄金の顔」の右目の部分に入り込み、万博の中止を訴えた一人の若者。「目玉男」と呼ばれるようになるその男は、確かに北海道 日本蒙昧前史 磯崎憲一郎著
奈良 祈りの美(3) 「金銅三鈷杵」 美の十選 7月3日 密教の修法で用いられる金剛杵(こんごうしょ)。先が三つ股のものを「三鈷杵(さんこしょ)」と呼ぶ。修法は四角の壇を前にして行われ、僧は壇にほとけが降臨するのを待つ。壇は清浄でなければならないが、それに力を発揮するのが金剛杵である。空海は金剛杵について、外には魔物を防ぎ、内には僧の煩悩を砕くと述べ、金剛杵を所持することの福徳を称(たた)えている。そのため、師匠のもとで学び終わり、ひとり立ちする弟子に 奈良 祈りの美(3) 「金銅三鈷杵」
石坂洋次郎と「強い女」 西洋史家 本村凌二 エッセー 6月27日 「必ず結婚しなさい。良い妻なら幸せになれるし、悪い妻なら哲学者になれる」とはソクラテスの名言。もっとも議論好きだったあまり、イライラした妻クサンチッペに水をぶっかけられたとか。彼女の強烈な印象のせいか、異例の女性と思われがちだが、はたして「強い女」とは例外であるのだろうか。ちなみに「戦後、強くなったのは靴下と女」とはひと頃よく耳にした文句であった。 コロナ禍で自粛ムードがただよっているから、この 石坂洋次郎と「強い女」 西洋史家 本村凌二
コロナがむしばむ街の顔(点照) 新型コロナ 千葉 関東 6月24日 19日は作家の太宰治をしのぶ「桜桃忌」だった。亡きがらが見つかった日であり、誕生日でもある。生誕111年、没後72年だが、最近もアニメや映画で描かれるなど人気は衰えない。そんな太宰ゆかりの老舗旅館が4月いっぱいでひっそりと幕を閉じた。 千葉県船橋市の市役所近くにある「割烹(かっぽう)旅館玉川」は1921年(大正10年)に創業した。本館と2つの別館は昭和初期の風情漂う木造建築で、2008年に国登録 コロナがむしばむ街の顔(点照)