舞台と人生(10)劇作家 山崎正和 アートレビュー 2月11日 阪神大震災が起きた1995年1月17日早朝、山崎正和さんは風邪をひいて寝こんでいた。兵庫県西宮市の自宅で激しい揺れに見舞われたが、無事だった。そのとき60歳、ふらつきながらも、ぎりぎり電車の通じていた阪急の西宮北口駅まで歩く。別邸に避難するためだった。駅に近づくにつれ、震度7によるすさまじい破壊の跡をみる。 「闘わないといけないな」 最初の思いが兆すと、体に力がみなぎってきたという。おごる文明へ 舞台と人生(10)劇作家 山崎正和
歩く大阪・読む大阪 平田達治著 読書 10月24日 練達のドイツ文学者による渾身(こんしん)の大阪論である。「歩く/読む」都市と聞いて想起されるのは、前田愛の名著『幻景の街 文学の都市を歩く』であろうか。同書では、作品ひとつごとに「描かれた都市」が前田一流の巧みな叙景を通じて「復原」されていく。他方、500ページに及ばんとする大部な本書では、主題・副題に示されるように、「読む」対象はすべて大阪を舞台とした作品にほかならない。 二部構成の本書で最初 歩く大阪・読む大阪 平田達治著
初の洋式製糸工場、前橋市が模型完成 将来の復元に道 群馬 関東 10月20日 国内初の洋式器械(きかい)製糸工場である藩営前橋製糸所。現存しないその製糸所のジオラマ(情景模型)を前橋市が作成した。3年前に都内の大学で関連資料が発見されたことが契機になった。ジオラマの完成は製糸所の価値を伝え、復元へ道を開くことになる。 製糸業で栄えた前橋の新たなシンボルになりうるだけに関係者は今回の成果に期待を寄せている。「今年は前橋製糸所の創業150年周年。記念すべき年に市民に見てもらえ 初の洋式製糸工場、前橋市が模型完成 将来の復元に道
淡島(東京・世田谷)都会の隠れ家、消えゆく名店 ひと・まち探訪 コラム(社会・くらし) 8月22日 新型コロナウイルスで外出を控えているうちに、いつでも行けると思っていた店が閉じていることがある。東京都世田谷区の淡島にあった小料理屋「のき乃」が4月に閉店していた。行くとママが素朴な手料理を出してくれたが、知らないうちに30年の歴史に幕を下ろしていた。 周辺の地名は代沢で、通りや交差点に残る淡島の名は徳川家ゆかりの森巌寺にある「淡島堂」にちなむ。森鴎外の長女、森茉莉や首相時代の佐藤栄作が居を構え 淡島(東京・世田谷)都会の隠れ家、消えゆく名店
山崎正和さんが死去 劇作家・評論家、86歳 8月21日更新 戯曲「世阿弥」や評論「柔らかい個人主義の誕生」で知られる劇作家・評論家で文化勲章受章者の山崎正和(やまざき・まさかず)さんが8月19日午前3時2分、悪性中皮腫のため兵庫県内の病院で死去した。86歳だった。告別式は近親者で行った。 京都市生まれ、京都大大学院修了。後に米エール大に留学。1963年、能楽の大成者を主人公とする戯曲「世阿弥」で演劇界の登竜門である岸田国士戯曲賞を受賞、気鋭の劇作家として 山崎正和さんが死去 劇作家・評論家、86歳
鶯谷(東京・台東) 子規が愛した風雅の里 ひと・まち探訪 コラム(社会・くらし) 生活 5月30日 夕暮れ時、JR鶯谷駅の南口改札を出てすぐの陸橋から街並みを見下ろす。一つまた一つとラブホテルのネオンサインに明かりが入っていく。背後には上野の山が広がり、徳川家の菩提寺である寛永寺など、多くの寺が立ち並ぶ。猥雑(わいざつ)と静寂。線路を隔てた2つの地域が対照的な雰囲気を醸し出す。 「鶯谷」とは、江戸時代に皇族出身の寛永寺住職が京都から多くのウグイスを取り寄せ、辺りに解き放ったことに由来する。「関 鶯谷(東京・台東) 子規が愛した風雅の里
女性像へのまなざし(2) 原田直次郎「少女(ドイツの少女)」 美の十選 4月22日 艶やかな栗色の髪、少し頬に赤みのさした若々しい女性が、振り向くような姿勢でこちらを見ている。きらりと光る瞳や前髪は精緻に描写されている一方、ふわりと肩にかけた布はすばやい筆で描かれている。暗褐色の下塗り、髪やドレスの質感描写からは、画家が留学中に正統な油彩画技法を身につけたことをよく示している。 原田直次郎は1884年に渡欧。ミュンヘンの美術学校で学び、この地で森鴎外と出会う。帰国後原田は大作「 女性像へのまなざし(2) 原田直次郎「少女(ドイツの少女)」
鴎外ゆかりの宿、閉館へ コロナ影響も「旧居守る」 新型コロナ 4月6日 小説家、森鴎外ゆかりの旅館「水月ホテル鴎外荘」(東京・台東)が5月、約80年の歴史に幕を下ろす。新型コロナウイルスの感染拡大で、宿泊や会食のキャンセルが相次いだことが原因という。敷地内にある鴎外の旧居は保存か移築を検討。おかみの中村みさ子さん(62)は「さみしい気持ちもあるが、旧居を守るのが私たちの使命。旅館に体力があるうちに、いい決断を下せた」と胸を張る。 中村さんによると、新型コロナの影響で 鴎外ゆかりの宿、閉館へ コロナ影響も「旧居守る」
湊氏、動静の対比に説得力 夏山氏、源氏物語を身近に カバーストーリー 3月17日 第11回日経小説大賞(日本経済新聞社・日本経済新聞出版社共催)の授賞式が2月27日、東京・日経ホールで開かれた。贈呈式に続き、日本経済新聞社内で開かれた座談会では、「東京普請日和」で受賞した湊ナオ氏と「新・紫式部日記」の夏山かほる氏、選考委員の辻原登氏、高樹のぶ子氏が、受賞作や小説の執筆をめぐって話し合った。選考委員の伊集院静氏は病気療養のため欠席した。(司会は編集委員 宮川匡司) 選考理由 司会 湊氏、動静の対比に説得力 夏山氏、源氏物語を身近に
日本の統計学史 落語で楽しく 文化往来 2月11日 幕末から明治にかけて日本に近代的な統計学が紹介され、発展していった歴史を、落語の演目に仕立てようという珍しい試みが進んでいる。統計学者、作家、落語家が手を携えて話の筋を練り、1月末にネタおろしをした。福沢諭吉や大隈重信、森鴎外ら歴史上の偉人がきら星のごとく登場し、統計学の導入が近代国家建設の一大事だったことが分かる。 「一回の表、慶応義塾の攻撃は……福沢諭吉、スタチスチック(統計)に『政表』の訳 日本の統計学史 落語で楽しく