紫式部も漱石も村上春樹も 文学はやっぱりネコが好き 1月30日 写真集にエッセー、飼い方の実用書とまさに百花繚乱(りょうらん)の猫本。セールス面だけでなく、現代文学のモチーフとしても猫に熱い視線が注がれている。 「海辺のカフカ」など作中で多くの猫を描いてきた村上春樹。自らのルーツを語る随筆「猫を棄てる――父親について語るときに僕の語ること」(文芸春秋2019年6月号)では「猫と本が僕のいちばん大事な仲間だった」とつづる。 「小説より猫のことをずっと考えている 紫式部も漱石も村上春樹も 文学はやっぱりネコが好き
出版界に猫パンチ!猫本屋活況 海外でも猫文学に注目 カバーストーリー 1月26日 空前の猫ブームと言われる現在、不況に悩む出版界でも猫が救世主になっている。新刊書籍が売れ行きを伸ばし「猫本屋」が相次ぎ開業。背景にはブームの一言では片付けられない、脈々と続く猫と日本人の物語がある。 この世に猫がいたから、今までやってこれた――。廃業の危機を猫に救われた書店が本の街、神保町(東京・千代田)にある。創業40年になる姉川書店だ。 外観は、昔ながらの町の本屋といったたたずまい。だが、一 出版界に猫パンチ!猫本屋活況 海外でも猫文学に注目
経済知らずの弁 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 12月25日 「先生、ニッケイに書いてるって本当ですか?」と、ゼミの学生にたずねられたことがある。私がうなずくと、彼はやや不安そうにこう付け加えた。「経済のこと、ですか?」。日経は文化欄も充実してるんだよ、と口に出す前に、私が経済のことを書けるはずがないと踏んだ学生の観察眼に心の中で感心したのであった。 思えば、経済とはご縁のない人生を歩んできたものだ(もちろん、お金にもあまりご縁がなかった)。論文を書いても 経済知らずの弁 甲南大学教授 田中貴子
二楽荘のまぼろし 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 12月18日 研究室の北向きの窓から名残(なご)りの紅葉がちりばめられた六甲山を望めば、かつてそこに威容を誇った建築物のまぼろしが立ち現れる。その名は二楽荘。西本願寺門主である大谷光瑞が、莫大な財を投じて造りあげた別邸だ。私が勤務する神戸の甲南大学とは浅からぬ関係を持ってもいる。 京都から神戸に通う日々も、すでに十数年になる。最初のうちは研究室から海が見えることに感動したが、同じ関西ながら京都とは異なる文化に 二楽荘のまぼろし 甲南大学教授 田中貴子
猫のなまえ 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 12月11日 ミュージカル「キャッツ」の原作者として知られるT・S・エリオットに、「猫の名前をつけるには」という詩がある。その冒頭を我流に訳してみると、「猫の名付けは難しい。休日の片手間にやることじゃありません」。拙宅の猫の名は「きなこ」というが、いくつかの候補を携えて彼に会いに行ったところ、一目で即決した。毛色がきなこそっくりだったからである。「きなこ」に「こ」が付くせいか女の子と間違われることが多いが、あ 猫のなまえ 甲南大学教授 田中貴子
自由律俳句の男 その2 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 12月4日 現代人に好感を持たれることの多い種田山頭火が、酒に人生を左右されたという点で尾崎放哉と同じ「だめな人」だったことは前回書いた。彼は泥酔して熊本の市街電車の前に立ちはだかり急停車させる、という事件を引き起こしている。「神経症」の診断をされてはいたが、今であれば警察沙汰である。こののち禅門に入るが、最期も過度の飲酒で倒れた結果だった。 かたや放哉は、生命保険会社のエリート社員となりながら酒癖の悪さで 自由律俳句の男 その2 甲南大学教授 田中貴子
自由律俳句の男 その1 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 11月27日 いま、拙宅では時ならぬ自由律俳句ブームの嵐が吹き荒れている。「自由律俳句」とは、定型である五七五の音律に縛られず、季語もない俳句のことだ。たとえば「咳(せき)をしても一人」。聞いたことありますね? きっかけは、「これを種田山頭火の句だと思っている人が多い」というパートナーの一言だった。正しい作者は尾崎放哉で、山頭火は「分け入つても分け入つても青い山」や「まつすぐな道でさみしい」がよく知られている 自由律俳句の男 その1 甲南大学教授 田中貴子
眉をめぐって 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 11月20日 仕事のため身支度をするとき、もっとも時間がかかるのが眉だ。そして、うまくいかないともっとも気になるパーツも眉である。今どきは、どんなメークの記事を見ても「眉で顔は変わる」などと書かれているが、確かに、眉の形には人間の骨格さえ錯覚させてしまう力がある。これは女性に限ったことではない。高校球児でさえ眉に手を入れるのが当たり前の時代である。 何となく垢抜(あかぬ)けて見える人をよく観察すると、たいてい 眉をめぐって 甲南大学教授 田中貴子
仕事する場所 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 11月13日 この連載を読んだらしい人から、「仕事は夜中なんですか」と問われた。私的な話題をエッセーに書くと、「個人情報だだ漏れ」になるものだ。「脳が最も働くのは午前中ですよ」とたしなめられたりもするが、体質の関係で朝型にはなれず、そもそもたいていの午前中は大学に出勤しているから自分の仕事はできないのである。 大学には個人で使える研究室があって、そこで論文を書いたり調べ物をする人もいるけれど、最初に専任教員と 仕事する場所 甲南大学教授 田中貴子
女子大出身ですが 甲南大学教授 田中貴子 あすへの話題 エッセー 11月6日 人に言うと意外な顔をされることが多いのだが、私は女子大学の出身である。中高、それに大学院は共学なので、ことさら女子大を目指していたわけではない。そりゃあ、入学したときは周囲が女子学生ばかりだったから少しは違和感を持ったが、慣れれば気になるものではなかった。センター試験の前身である共通一次試験が始まったばかりの頃で、男性ばかりの教官からは「学生の質が落ちた」とぼやかれた。 近年、女子大の存在意義に 女子大出身ですが 甲南大学教授 田中貴子