エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10 読書 12月26日 2020年の「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」の結果がまとまった。新型コロナウイルスの感染が世界中で拡大するなかで、経済格差、環境破壊や移民問題などにどう向き合うのか。経済学者が専門知を生かして制度改革や政策の優先順位を論じた著作が上位に並んだ。ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭を警戒するメッセージを打ち出す著作も入選した。 1位に輝いた『絶望を希望に変える経済学』の著者の2人は19年にノー エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10
「賢い」政策は持続性生む 東大教授・福田慎一氏 逆境の資本主義 12月8日 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界各国の政府・中央銀行による大規模な財政出動と金融緩和策も出口が見えない状況だ。資本主義の活力を保ちながら、どのように持続可能な政策を講じていくべきか。マクロ経済が専門の東京大学・福田慎一教授に聞いた。 ――今後の経済政策に必要な視点は何でしょうか。 「欧州では再び行動規制が広がり、日本などでも飲食店や娯楽産業といった対面型のサービス業は厳しい環境が続く 「賢い」政策は持続性生む 東大教授・福田慎一氏
イノベーションで世界制覇 発想法や組織づくりを指南 11月9日 イノベーションに焦点を当てる著作の人気は根強い。日本企業や個人がイノベーションを起こすための具体的な方法に踏み込んだ著作も増えている。 関西学院大学の玉田俊平太教授は『日本のイノベーションのジレンマ第2版』(翔泳社、2020年8月)で、「破壊的イノベーション」と呼ばれる現象が起きるメカニズムを解説し、具体策を示している。故クレイトン・クリステンセン米ハーバード大学教授から直接、教えを受けた著者は イノベーションで世界制覇 発想法や組織づくりを指南
「21世紀の資本」の死角 格差の原因、相続より独占 前田 裕之 Global Economics Trends 編集委員 11月1日 フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は著書「21世紀の資本」で、「r(利子や配当などとして分配される資本収益率)>g(経済成長率)」という不等式を示し、格差拡大の原因を解明した。著書では、不等式の正しさを膨大なデータで裏付けている。世界中で反響を呼び、格差問題を考えるには欠かせない著書となっているが、当初から異論もあった。東京大学の福田慎一教授は、格差拡大の要因は別にあると指摘する論文に注目する 「21世紀の資本」の死角 格差の原因、相続より独占
適応的市場仮説 アンドリュー・W・ロー著 読書 7月18日 金融市場では長年、価格が入手可能な情報を瞬時に反映して効率的に形成されるとする「効率的市場仮説」が強く支持されてきた。しかし、資産価格は、時として効率的とは言い難い特異な動きをする。このため、近年では、人間の非合理的な行動パターンに注目し、異常な価格の動きを説明しようとする試みも始まっている。ただ、資産価格は、常に異常な動きをしているわけではない。 本書で提唱された「適応的市場仮説」は、神経科学 適応的市場仮説 アンドリュー・W・ロー著
経済の危機、必要な対応は 時論・創論・複眼 4月16日 新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に深刻な打撃を与えている。各国は懸命に大規模な財政出動や流動性供給で対応するが、状況判断と処方箋は正しいのか。そして危機後の世界はどうなるのか。元政策当局者や経済学者に分析してもらい、危機下の経済と政策対応のあり方を考える。 ◇ ◇ ◇ ■国際協調の機運高めよ 元財務官 篠原尚之氏 2008年のリーマン・ショックは金融機関の不良資産の増加が相互不信をもたらし、お 経済の危機、必要な対応は
プログレッシブキャピタリズム ジョセフ・E・スティグリッツ著 読書 2月22日 本書は、上流エリートだけが豊かになる最近の米国社会を様々な角度から批判的に論じ、それを改善するための処方箋を提示している。資本主義は、新自由主義者が主張するほど効率的でもなければ安定しているわけでもない。一生懸命働けば成功できるとするアメリカンドリームは、もはや神話にすぎない。多くの労働者を置き去りにする形でグローバル化や金融の自由化が進展し、技術革新によって一握りの企業に市場支配力が集中した結 プログレッシブキャピタリズム ジョセフ・E・スティグリッツ著
エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10 読書 12月29日 2019年の「エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」の結果がまとまった。日本経済や資本主義の足取りを丹念にたどりつつ、現状を分析する秀作が多い。人工知能(AI)、イノベーション、ビッグデータ、巨大IT(情報技術)企業など、世界経済の行方を左右する要因に焦点を当て、問題の所在を明らかにする著作も上位に入った。 ◇ ◇ ◇ 多くの選者から上位票を集め大差で1位に輝いたのは『平成の経済』。「官 エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10
雇用、ゆがむ「景気映す鏡」 回復でも残業は減少 経済 7月29日 雇用と景気の関係が変化している。この数年は企業の人手不足感が強まっているのに景況感の改善はわずかだったり、残業時間が減っているのに景況感が改善したりしている。少子高齢化による深刻な働き手不足や働き方改革の広がりといった構造変化が影響してきたようだ。「雇用は景気を映す鏡」という従来の見方が通じにくくなっている。(中村結) 那覇市を走るモノレール「ゆいレール」。延伸区間の開業が今春から10月にずれ込 雇用、ゆがむ「景気映す鏡」 回復でも残業は減少
「追われる国」の経済学 リチャード・クー著 批評 読書 7月13日 かつて日本経済の病状を「バランスシート不況」と呼び、そのメカニズムと処方箋を論じた著者の最新作である。バブル崩壊後の日本経済では、巨額な損失を被った借り手企業が、財務の健全性を取り戻すべく、債務の最小化を迫られた。その結果、中央銀行がいくら金融を緩和しても借り手が不足し、経済が縮小均衡に陥った。当時の日本では、企業の過剰債務の解消が、長期停滞から脱却するための喫緊の課題であった。 リーマン・ショ 「追われる国」の経済学 リチャード・クー著