連作・無季・口語…… 表現鍛えた俳句の「問い」 カバーストーリー 1月23日 高浜虚子とともに正岡子規門下の双璧と呼ばれた河東碧梧桐は、子規の死後、守旧派の虚子と袂(たもと)を分かち、俳句革新をさらに推し進めるべく、「新傾向俳句」を展開。実感重視の方向性は、当時の文壇の自然主義とも通い合う。〈曳かれる牛が辻でずつと見廻した秋空だ 碧梧桐〉〈空を歩む朗朗と月ひとり 荻原井泉水〉。定型から解放された口語の韻律は、自由律俳句の道を拓(ひら)いた。種田山頭火や尾崎放哉も、井泉水の 連作・無季・口語…… 表現鍛えた俳句の「問い」
俳句、モダニズムの時代 都市の詩 カバーストーリー 1月16日 第1次世界大戦勝利による好景気で、日本の都市人口は一気に増大する。大正~昭和初期、都会には洋装のモボ・モガ(モダンボーイ・モダンガール)があふれ、カフェやバーが軒を連ねた。生活の変化を受け、文学でも川端康成や横光利一らが都市生活の機微を描写、新感覚派と称された。 このモダニズムの流れを俳句で展開したのが、ともに明治34年生まれの山口誓子と日野草城である。 誓子は、高浜虚子の俳誌「ホトトギス」で阿 俳句、モダニズムの時代 都市の詩
俳句は文学だ 水原秋櫻子が目指した主観と抒情の復権 カバーストーリー 1月9日 昭和初期に勃興した「新興俳句」は現代俳句に道を開く文芸運動だった。俳人の神野紗希氏がその歴史を解説する。 俳句と聞いて何を思い浮かべるだろう。桜や紅葉、四季折々の自然を詠む風流な趣味? 筆で短冊に一句したためる姿? テレビの添削番組も人気だが、先生も和装だ。季語と575の定型を固持する守旧派文芸の印象は、いまだ根強い。 しかし、実際の現代俳句は、和の伝統の範疇(はんちゅう)にとどまらない多様性を 俳句は文学だ 水原秋櫻子が目指した主観と抒情の復権
後藤比奈夫氏が死去 俳人 6月8日 後藤 比奈夫氏(ごとう・ひなお、本名=日奈夫=ひなお、俳人)6月5日、老衰のため死去、103歳。告別式は近親者で行う。喪主は長男の妻、久子さん、長女、岡田 後藤比奈夫氏が死去 俳人
外国人の日本語短歌・俳句が映すもの カバーストーリー 5月31日 外国人の歌人・俳人が日本語で書いた短詩型作品を発表する動きが広がっている。その作品と創作観からは、短歌・俳句の世界の潮流変化が浮かびあがる。 ソウル出身のカン・ハンナ(38)が昨年12月に刊行した第1歌集「まだまだです」(KADOKAWA)が歌壇の話題を集めた。カンは角川短歌賞佳作や次席に入選するなど、その実力が評価されている歌人だ。 〈大阪のたこ焼きの出汁が東京と違うと言い張る私がうれしい〉〈 外国人の日本語短歌・俳句が映すもの
河東碧梧桐 石川九楊著 読書 10月26日 明治俳句の革新者たる正岡子規は早世し、高浜虚子と河東碧梧桐が衣鉢を継いだ。2人は争い、虚子率いる「ホトトギス」が俳壇の王位に座る。碧梧桐は敗北し、作品は〈赤い椿白い椿と落ちにけり〉が知られるのみ――一般の俳句史はこのように整理しがちだ。それに正面から異を唱えたのが書家の石川氏による本書である。 「碧梧桐が、俳句をどこまでも文学的表現ととらえ、前へ進めようと試みているのに対して、高浜虚子は、俳句を 河東碧梧桐 石川九楊著
新潟市古町の料理店 かき正・かき忠 信越 10月17日 新潟市の繁華街、古町にありながら、広島のカキと山口県下関の「ふく(フグの呼称)」が看板料理の老舗料亭がある。昭和初期に誕生したこの「かき正」は、中国地方の食を新潟でいち早く導入し人々の舌をうならせてきた。より手軽に料理を楽しめる姉妹店の「かき忠」は、「ざっくばらんに」とのもてなしの心の体現でもある。 かき正の創業は1929年(昭和4年)。広島出身の故・橋本忠人が新潟で料理店を開いたのが始まり。先 新潟市古町の料理店 かき正・かき忠
複合動詞はデキる奴 夏井いつき プロムナード エッセー 9月12日 某ラジオにゲスト出演する折、担当ディレクターから「当番組ではゲストのマイ・ベスト三というのをやってまして」との説明を受けた。「食べ物でもファッションでも何でもいいんです。夏井さんなりに、第三位○○! と発表してもらうと、そこから話が広がりますので」。毎回のゲストの個性が案外見えてくるのだともおっしゃるが、いやいや、そんなことを言われても特に興味あるものもない。「ほんとにジャンルは何でもいいんです 複合動詞はデキる奴 夏井いつき
「ゲーム」をキーワードに詩歌を味わう展覧会 文化往来 3月4日 北原白秋の詩「源平将棋」、高浜虚子の句「加留多とる皆美しく負けまじく」、若手俳人として注目を集める佐藤文香の新作「人生ゲームの青い車が春の山へ」。これらの作品をつなぐ言葉は「ゲーム」だ。 「ゲームと詩歌」と題する常設展が、日本現代詩歌文学館(岩手県北上市)で開かれている。現在活動する詩人・歌人・俳人による直筆作品51点と物故作家の作品をチェス盤のトリックアートとともに展示し、珍しい企画といえる。 「ゲーム」をキーワードに詩歌を味わう展覧会
幻の「横光利一句集」刊行 大分県宇佐市、父の出身地 九州・沖縄 2月16日 作家横光利一(1898~1947年)の幻の俳句集を、父の出身地である大分県宇佐市が刊行した。横光が他界した翌年に追悼句集として企画されたものの、戦後の物資不足により出版目前でお蔵入りとなっていた。四六判190ページで千円。 俳人の高浜虚子(1874~1959年)らは横光の死去を受け、翌48年に「横光利一句集」を編集。「靴の泥 枯草(かれくさ)つけて 富士を見る」といった268句を選び、虚子らは序 幻の「横光利一句集」刊行 大分県宇佐市、父の出身地