「シン・財政政策」の合理性と課題 前田栄治氏 5月25日 政府の経済財政諮問会議で有識者がマクロ経済運営に対して助言する「特別セッション」が注目を集めている。著名な経済学者やエコノミストが大きな環境変化の下での適切な経済政策のあり方を議論するなか、主要な論点となっているのが財政政策である。 財政政策が経済運営で重視されるのは世界的な潮流でもある。イエレン米財務長官が提唱した「モダンサプライサイド経済学(MSSE)」は諮問会議でも度々取り上げられている。 「シン・財政政策」の合理性と課題 前田栄治氏
ChatGPTが「底上げ」する生産性 渡辺安虎氏 Think! 5月18日 「Chat(チャット)GPT」をはじめ、生成AI(人工知能)が大きな注目を集めている。急速に生成AIを使ったサービスが開発され、普及している。私もこのコラムを書く下調べにマイクロソフトの「BingAI」を使っており、とても便利だ。 生成AIの大きなインパクトを多くの人が実感するがゆえに、将来の仕事に及ぼす影響にも関心が高まっている。本稿では、ここ数カ月で発表された経済学の論文から見えてきたところ ChatGPTが「底上げ」する生産性 渡辺安虎氏
異例な金利上昇にも備えを 門間一夫氏 5月11日 消費者物価の前年比上昇率は、振れの大きい生鮮食品およびエネルギーを除くと、3月に3.8%と41年ぶりの高さになった。上昇の勢いは衰えておらず4月は4%台に乗るとみられる。この物価上昇率に関する日銀の2023年度の見通しは、1月時点の1.8%から4月時点では2.5%に大きく上方修正された。この数字も今のインフレを過小評価しており、次の7月も上方修正は必至だろう。 この間「物価に負けない賃上げ」を求 異例な金利上昇にも備えを 門間一夫氏
金融正常化への険しい道筋 岩田一政氏 5月4日 金融市場では、一夜にして冬景色が広がることがある。3月中旬には米国で銀行の破綻が相次ぎ、クレディ・スイス・グループの救済買収へ連鎖した。 その際、米国の連邦準備理事会(FRB)と連邦預金保険公社(FDIC)は素早く動いた。破綻行の預金を保護し、「最後の貸し手」の窓口貸し出しに加え、米国債などを担保とする資金供給手段も新設した。「最後から2番目の貸し手」とされる連邦住宅貸付銀行(FHLB)、中央銀 金融正常化への険しい道筋 岩田一政氏
エネルギー市場安定に向けた議論を 小山堅氏 4月27日 2023年5月、広島で主要7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。世界の平和・安定・繁栄のため、地球規模の課題について率直に議論し、解決策を模索し、行動するための会合だ。ウクライナ戦争で世界のエネルギー情勢が一気に不安定化し、エネルギー安全保障問題が喫緊の重要課題となった。その一方で、気候変動防止のための脱炭素化推進との両立が求められている。 今回のサミットで、エネルギー・気候変動問題が最重要 エネルギー市場安定に向けた議論を 小山堅氏
サラリーマン社長は進化する イェスパー・コール氏 Think! 4月20日 日本の企業経営者はネガティブな評価にさらされることが多い。確かに日本の「サラリーマン社長」はプライベートジェットで世界中を飛び回ることが少なく、逆に会社のファクス番号が名刺に記されているケースが多い。しかし仕事を成し遂げる能力をみてみれば、日本の経営者の実績はなかなかのものである。 1995年から2022年にかけて、日本の上場企業の売上高はわずか10%しか増えなかった。しかし同じ期間に経常利益は サラリーマン社長は進化する イェスパー・コール氏
対決の決意を固める米国と中国 呉軍華氏 4月13日 米中関係が対決に向けて突き進んでいる。その背景には米国で中国共産党に対する認識が深まったことがある。過去の政策への反省が進むにつれて、中国を未曽有の脅威とする見方が大きく台頭した。対する中国は、これまで自らの望む方向に米国の対中アプローチを改めようと動いてきた。しかし、そうした努力を諦めた可能性が高い。 分断が進む米国で、対中強硬論のみが超党派的な支持を得られるといわれて久しい。最近、この構図が 対決の決意を固める米国と中国 呉軍華氏
実質賃金を持続的に上昇させる方策 森川正之氏 4月6日 今年の春季労使交渉(春闘)では、多くの企業が賃上げを行った。しかし、物価変動分を除いた実質賃金、つまり購買力が高まったわけではない。物価が上昇したときに名目賃金が動かなければ実質賃金は目減りする。物価上昇が賃金に反映されるのは自然なことである。 実質賃金は生産性と表裏一体で、時系列、企業間比較、国際比較いずれで見ても、強い相関関係がある。生産性上昇により企業の付加価値が増え、労働者に賃上げという 実質賃金を持続的に上昇させる方策 森川正之氏
金融システムに芽生えた新たな不安 中空麻奈氏 3月30日 米欧で金融機関の経営問題が相次いで表面化した。米国のケースは、時価変動する資産と負債のバランスがとれないという、ALM(資産と負債の一元的管理)での初歩的なミスが直接の原因だ。だが、旧来とは異なる新しい金融システム不安の兆しと捉えることもできよう。 米国で破綻した金融機関は、暗号資産(仮想通貨)やベンチャーキャピタル(VC)などリスクマネーとの関係が深かった。リスクマネーの供給が滞っては米国経済 金融システムに芽生えた新たな不安 中空麻奈氏
信用不安、金融政策「正常化」の足かせに 山川哲史氏 3月23日 主要国中銀の金融政策を取り巻く環境は、米国での地銀破綻、欧州銀行における流動性危機に端を発した信用不安を背景に、急速に不確実性を増している。日本でも、長短金利操作(YCC)に対する早期修正期待が、信用不安の余波を受け沈静化している。 一方、国債市場の機能不全などYCCがはらむ矛盾は、2022年12月会合におけるYCC修正以降も解消には程遠い。新生日銀にとり、政策修正とともにこれに代わる持続可能な 信用不安、金融政策「正常化」の足かせに 山川哲史氏