差し押さえ最多の介護保険 フェアな徴収とは 大林 尚 コラム 12月23日 「差し押さえ」には、どこかおどろおどろしい語感がある。手元の辞書を引くと「国が税金滞納者の財産を強制的に取得すること」などとある。誰だってそんな目には遭いたくない。 介護保険の保険料不払いを続け、制度を運営する市区町村から資産の差し押さえを受ける高齢者が急増している。各自治体の報告を厚生労働省が集計した結果によると、2018年度の差し押さえ件数は1万9221件と最多を記録した。前年度と比べると3 差し押さえ最多の介護保険 フェアな徴収とは
名医を育むオンライン診療 大林 尚 コラム(経済・金融) 編集委員 11月18日 名医や良医と聞いて、あなたはどんな医師を思い浮かべるだろうか。 山本周五郎『赤ひげ診療譚(しんりょうたん)』の主人公のモデルとされる江戸・小石川養生所の小川笙船(しょうせん)のように、貧しい人びとを献身的に治そうとする町医者を想像するかもしれない。あるいは、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』のようなゴッドハンド(神の手)をもつスーパー外科医をイメージする人もいよう。 誰だって自らが病を得たとき 名医を育むオンライン診療
省庁ヒアリングにみる政と官の間合い 大林 尚 コラム(経済・金融) 編集委員 10月28日 2007年のことだ。「あれだけはやめてほしいんだよね。政と官の間の暗黙ルールに反してるよ」。厚生労働省の幹部がため息をつきつつ、憤りをあらわにしたのを覚えている。 時は第1次安倍政権。今はなき厚労省・社会保険庁(現在の日本年金機構と協会けんぽ)が引き起こした「消えた年金記録問題」に対し、野党民主党が攻勢をかけていた。この問題に熱心に取り組む同党の議員から、厚労省や社保庁にたびたび呼び出しがかかり 省庁ヒアリングにみる政と官の間合い
アベノミクスとは異質のスガノミクス 大林 尚 コラム(経済・金融) 編集委員 9月23日 一大事件の発生時など、新聞各紙が同じ日に同じテーマの社説を載せることがある。題材が共通しているだけに、読み比べるとそれぞれの社論の特性がつかめる。今のように新しい政権が船出したときは、その機会がたびたびある。 17日、主要紙がこぞって菅義偉政権の発足を社説で論じた。日本経済新聞は「新首相は『安倍政治の継承』を掲げて自民党総裁選に勝利したが、前政権と全く同じではないはずだ」と前置きしたうえで「迅速 アベノミクスとは異質のスガノミクス
国の負担? いえ、あなたの負担 大林 尚 コラム(経済・金融) 編集委員 8月19日 小泉政権の時代から医療政策の立案に深くかかわってきた与党の古参議員が嘆いている。「新型コロナはさまざまな面で私たちの価値観を揺さぶっているが、政治家の金銭感覚までまひさせてしまった」と。 2020年度の国の歳出規模は、2度の補正予算の編成を経て160兆円に膨張した。新規国債発行は90兆円、基礎的財政収支の赤字幅は66兆円と、ともに未曽有の額だ。1人10万円の特別定額給付金のほか、コロナ危機に翻弄 国の負担? いえ、あなたの負担
官邸会議は踊る、されど政策立案進まず 大林 尚 コラム(経済・金融) 編集委員 7月22日 この6月、首相官邸で開かれたある政策会議に出席した学識者は、後ろの控え席に座った女性職員から1枚の短冊をすーっと渡された。目を落とすと「恐縮ですが時間が限られておりますので短く御(ご)発言お願いします」と印字されていた。 新型コロナウイルス危機への一連の政府対応について、改善を促す発言が佳境に差しかかったときだった。おのずと早口になったが、結局は用意した資料を過不足なく説明するための十分な時間は 官邸会議は踊る、されど政策立案進まず
冴えないアプリが映し出す世界の分断 大林 尚 新型コロナ コラム(経済・金融) 編集委員 6月24日 スマホのアプリストアで「cocoa」を検索したら、最初に出てきたのはなぜか「すき家」の公式アプリだった。親しみを込めようとネーミングを工夫したのだろうが、滑りだし順調とはいえないようだ。 厚生労働省が19日午後に公開した新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」は、赤と青2人の人間が手に手をとりあう図柄をデザインした同省のシンボルマークをアイコンに使っている。アプリストアには「厚労 冴えないアプリが映し出す世界の分断
「あの時の判断は正しかった」は禁句だ 大林 尚 新型コロナ コラム(経済・金融) 編集委員 5月27日 過ちを正当化するのにうってつけの言い訳がある。「あの時の判断は間違っていなかった」――。 東京高検検事長を辞した黒川弘務氏の定年を半年延長した1月の閣議決定について、22日の衆院法務委員会で野党議員に問いただされた森雅子法相はこう繰り返した。「その時点においては適切な判断をしたと考えている」 含蓄に富む官僚的答弁である。まず、今となっては判断は間違っていたと言わざるを得ないというニュアンスがある 「あの時の判断は正しかった」は禁句だ
10万円給付とベーシック・インカム 大林 尚 新型コロナ コラム(経済・金融) 編集委員 4月22日 2009年、鳩山民主党政権に加わった国民新党の重鎮がこう話していた。「尻尾が犬を振り回せるんですよ。連立政権というのは」。連立与党を構成する小政党の主張が多数党、ひいては政権全体の政策決定に大きな影響をおよぼせる。そのたとえだ。 事実、当時の政治的争点のひとつである郵政民営化について、民主党内には民営化路線を支持する声が強かったにもかかわらず、国民新党の主張に引きずられ、鳩山政権は日本郵政株の売 10万円給付とベーシック・インカム
「コロナで出番」のはずが 消えたオンライン診療補助 大林 尚 新型コロナ コラム(経済・金融) ヘルスケア 医療・健康 編集委員 3月18日 新型コロナウイルス感染症の脅威に立ち向かおうと、医療界への補助金を練った厚生労働官僚に横やりを入れたのは、当の医療界だった。関係者の話をつなぎ合わせると、経緯はこうだ。 3月10日、安倍晋三首相はすべての閣僚で構成する新型コロナウイルス感染症対策本部を招集し、緊急対応策の第2弾を決めた。柱は4本。第1の柱である「医療提供体制の整備」のなかに、前日まで案として載っていた「情報通信機器を用いた診療な 「コロナで出番」のはずが 消えたオンライン診療補助