Dr.コトーから継いだバトン 持続可能な離島医療とは 石川 淳一 コラム 1月29日 千葉県出身の斎藤学さん(48)が島の住民になって3年近くになる。 鹿児島県の沖合約30キロ、東シナ海に浮かぶ下甑島(しもこしきしま、薩摩川内市)の人口は約1800人。医師が常駐する医療機関が2カ所あり、斎藤さんはその1つ、下甑手打診療所の所長だ。2人の若手医師のほか、看護師、介護士ら約30人を束ねる。 訪問診療に同行した。細い山道を車で進むこと40分。内川内地区には約20人が暮らす。「先生にお灸 Dr.コトーから継いだバトン 持続可能な離島医療とは
還暦迎えた千里ニュータウン 野外アート、街に愛着呼ぶ コラム 大阪 関西 1月22日 大阪府北部の吹田市、豊中市に広がる千里ニュータウン。1962年に最初の入居が始まって60年が過ぎた。丘陵の山肌を削り造成した約1200ヘクタールの新しい街は、当初まっさらで無味無臭の情景だったが、「還暦」を迎えた今、公園や街路には樹木が豊かに茂る。 植栽の多くは秋が深まると鮮やかに紅葉し、その後、葉を落とす。すると存在感を増すのが公園などにある野外アートだ。ニュータウンの12住区の開発が完了した 還暦迎えた千里ニュータウン 野外アート、街に愛着呼ぶ
法医学者が沖縄戦の遺骨収集 身元特定、現場で見た課題 和歌山 章彦 編集委員 1月8日 「法医学」という言葉をドラマなどで耳にする。でも、その目的は何だろう。 病死なのか、犯罪が疑われるのか。現場を重視し、検案や解剖を通じ死因を特定する。地味だが、法治国家における正義の最後のとりでなのかもしれない。 あまり知られていないが、日本法医病理学会は第2次世界大戦の沖縄戦で亡くなった人びとの遺骨収集に協力している。 沖縄戦の死者は日米両軍、住民を含め約20万人にのぼる。今年で戦後78年にな 法医学者が沖縄戦の遺骨収集 身元特定、現場で見た課題
福島、定まらぬ避難解除時期 長引く放置が帰還困難助長 コラム 12月25日 10月24日、福島県大熊町の中島孝一さん(70)は避難先のいわき市から自宅の様子を見に訪れていた。付近は「復興拠点」として集中的に除染され、6月に避難指示が解除された。だが中島さん宅は依然、居住できない帰還困難区域のまま。規制ゲートで入退出チェックを受けながら月に1回、帰宅している。 東京電力福島第1原子力発電所事故の当時、中島さんは富岡消防署員だった。放射線量が高まる中で住民の避難を誘導し、津 福島、定まらぬ避難解除時期 長引く放置が帰還困難助長
芝園団地、外国住民と共生探る 日本社会の希薄化も問う 外国人「共生」の実相 坂口 祐一 コラム 編集委員 12月18日 ごみの投げ捨て、夜中の騒音、香辛料の強いにおい――。入居者の半数以上が中国の出身者だという埼玉県川口市の「芝園団地」はかつて、言葉の壁や生活習慣の違いによるトラブルが相次いだ。「チャイナ団地」と呼ばれたこともある。 住民の共存・共生に向けた活動を続ける団地自治会の事務局長、岡崎広樹さん(41)が今年、20年近くにわたる自治会の取り組みや自身の体験を「外国人集住団地」「団地と共生」の2冊の本にまと 芝園団地、外国住民と共生探る 日本社会の希薄化も問う
亡き名監督、町おこしに一役 ファンや役者引き込む磁力 毛糠 秀樹 コラム 編集委員 11月27日 映画「セーラー服と機関銃」に「台風クラブ」そして遺作の「風花」。独特のカメラの長回しと役者を追い込む演出法で一時代を築いた相米慎二監督が53歳で死去し、今年で21年がたった。墓と慰霊碑がある地では年に一度の「映画祭り」も恒例となり、往時をしのぶ俳優陣らが足を運ぶ。今なお衰えぬ人気は町おこしにも一役買っている。 プロフィルでは岩手県生まれで北海道育ちの監督だが、父親の出身地が青森県田子(たっこ)町 亡き名監督、町おこしに一役 ファンや役者引き込む磁力
外国出身高校生に官民連携の教室 日本語学習で進路描く 中丸 亮夫 外国人「共生」の実相 編集委員 11月20日 外国出身の高校生らの支援が課題になっている。日本語が不自由なままで学習や進路選びで困難を抱える生徒も少なくない。高校と教育委員会、NPO(非営利組織)が協力して手助けしている現場を訪ねた。 10月下旬の土曜日。神奈川県立川崎高校(川崎市)の教室に14人の若者が三々五々集まった。中国、フィリピン、ネパールなどの出身で、同市や横浜市北東部の高校に通う生徒たちだ。 川崎高では毎週土曜日、日本語学習支援 外国出身高校生に官民連携の教室 日本語学習で進路描く
未利用魚「アイゴ」を養殖 枯れる水産資源、新風なるか 堀田 昇吾 コラム 編集委員 10月23日 関西の著名な日本料理店の経営者と、マグロ養殖で知られる近畿大の沢田好史教授らは2年前から「いただきますを考える会」という集まりを続けてきた。 魚が昔に比べて捕れなくなり、捕れる魚種や時期も変わってきた。料理人として実感していたミシュラン三ツ星の日本料理店「柏屋」(大阪府吹田市)の主人、松尾英明さんが周囲に声をかけ、海洋資源の現状や課題を学び、何かできないかと議論してきたのだ。 今年、会の仲間と会 未利用魚「アイゴ」を養殖 枯れる水産資源、新風なるか
ウクライナのダンサーが淡路島へ バレエの縁、平穏願う 関西 コラム 10月16日 「ド、ドン、ドン、ドン」。和太鼓の響きに合わせ、舞台の背景映像の炎が勢いよく燃え上がる。勇壮なリズムの中で優美かつ力強く舞うのは、バレエやコンテンポラリーダンスのダンサー。舞踊に込めたのは「困難を乗り越えるため心を一つに」という思いだ。 大阪府豊中市で10月2日に行われた公演「One heart 2022」。企画した大阪府出身のバレエダンサー、針山愛美さん(45)は中学卒業後の1993年夏、ロシ ウクライナのダンサーが淡路島へ バレエの縁、平穏願う
原発事故の風化にあらがう 喪失から後世に何のこす 10月9日 9月下旬、福島県双葉町では駅前の真新しい庁舎に役場機能が戻り、公営住宅も完成間近だった。 しかし、暮らしの息吹は感じられない。東京電力福島第1原子力発電所事故で最後まで全住民が避難を強いられていた同町。8月30日に一部地域で避難指示が解除されたが、帰還した住民はわずかだった。響くのは公費で家屋を解体する音ぐらい。少し進めば「この先帰還困難区域」の看板とバリケードに突き当たる。 事故から11年7カ 原発事故の風化にあらがう 喪失から後世に何のこす