子ども食堂、学校・保育園でも 誰でも参加し相談糸口に 中丸 亮夫 Think! コラム 編集委員 6月4日 地域の子どもに食事や居場所を提供する「子ども食堂」。その数は増え続け、2022年で全国7363カ所で営まれている(認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査)。学校や保育園で行う例が少しずつ広がっていると聞き、現場を訪ねた。 5月22日朝、東京都三鷹市立中原小学校。始業前の家庭科室に児童が続々と集まってきた。同市のNPO法人「居場所づくりプロジェクトだんだん・ばぁ」と住民ボランティ 子ども食堂、学校・保育園でも 誰でも参加し相談糸口に
旧優生保護法、過酷な人権侵害 真の多様性社会への教訓 コラム 5月28日 熊本県内の住宅地の一角に、渡辺数美さん(78)が働きづめの日々を送って建てた家がある。1階居室のベッド。一日の多くをここに横たわって過ごす。 幼少期に変形性関節症を患い、10歳ぐらいの頃に同意がないまま睾丸(こうがん)を摘出された。1948年から96年まで、約半世紀に及ぶ旧優生保護法のもとで行われた不妊手術の被害者だ。 睾丸摘出の影響でホルモンバランスが崩れ、身長は193センチに。骨粗しょう症で 旧優生保護法、過酷な人権侵害 真の多様性社会への教訓
中国の緑化に協力して30年 「環境に国境なし」続ける力 堀田 昇吾 コラム 編集委員 5月21日 「30年で景色は一変しました」。中国の黄河流域に広がる黄土高原で緑化協力事業をしてきた認定NPO法人「緑の地球ネットワーク」(大阪市)の高見邦雄副代表は、数枚の写真を示した。 昔、土壌が流出して多くの溝ができていた土地や赤茶けた土が目立っていた山が、今は樹木が生い茂る森林になっている。コロナ禍で中国に行けず、最近作ったパンフレットに使う写真は現地の協力者に頼んで撮影してもらった。「彼がこの変化は 中国の緑化に協力して30年 「環境に国境なし」続ける力
ちんどん屋、路上で見つめた40年 コロナ禍の先祈る音色 影井 幹夫 関西 コラム 5月7日 河川敷と三角州が広がる鴨川デルタの西にある出町商店街(京都市上京区)。4月中旬、「ちんどん通信社」(大阪市)の面々が、かねや太鼓、トランペットを鳴らして練り歩いた。 チラシを配り、鮮やかな口上で宣伝したのは「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」(5月14日まで開催)。演歌やジャズの多彩で明るい音色に、道行く人々に笑顔が広がる。 リーダーの林幸治郎さん(66)は立命館大4年だった1980年、 ちんどん屋、路上で見つめた40年 コロナ禍の先祈る音色
大学生が有害投稿パトロール ネットの「割れ窓」ふさげ 石川 淳一 Think! 4月30日 「これから会える人いますか」――。スマートフォンの画面を見つめる学生の指がとまった。「あ、これそうじゃないかな」「通報しましょう」 4月下旬、福山大学(広島県福山市)の学生らでつくる「CyPat(サイパット)FU」が防犯パトロールに取り組んでいた。この日見回っていたのはツイッター。「援助交際」に関するつぶやきを見つけて運営会社に通報し、削除を要請する。 直接的な言葉だけでなく、隠語や絵文字で援助 大学生が有害投稿パトロール ネットの「割れ窓」ふさげ
大逆事件と袴田事件 2人の「ひでこ」が挑んだ再審 山本 有洋 コラム 事件・司法 4月23日 岡山県井原市の山あいの県道を上っていくと、緑に抱かれた小さな墓がある。「大阪平民新聞」を出すなど明治期の社会主義運動に関わった森近運平の墓だ。 1910年、天皇暗殺を企てたとして幸徳秋水らが一斉検挙され、翌年12人が死刑となった。いわゆる「大逆事件」である。運平も連座し刑死した。事件の実態は社会主義者らへの政府の弾圧で、大半は冤罪(えんざい)だったとの見方が定説になっている。 それでも、死刑判決 大逆事件と袴田事件 2人の「ひでこ」が挑んだ再審
福島県沖地震、復旧できない家 足りぬ支援を届ける コラム 4月9日 JR常磐線鹿島駅から歩いて10分ほど。福島県南相馬市鹿島区のプレハブ建物の1階に2月20日、近隣の高齢住民3人が集まった。民間の災害支援チーム「このゆびとまれ」(ゆびとま)が運営するサロンだ。 昨年3月16日に発生した福島県沖地震で、一帯は震度6強の激しい揺れに襲われた。ゆびとまは家屋損壊などに遭った被災者の日々の生活に向き合ってきた。 この日はアニメ「まんが日本昔ばなし」を見ながら歓談した。被 福島県沖地震、復旧できない家 足りぬ支援を届ける
日本ハムの新球場開業 北の「広島」、開拓史に光を 和歌山 章彦 編集委員 4月2日 球春である。北海道北広島市に、プロ野球日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」が開業した。 周辺一帯に開発のつち音が響き、最新の球場を核とした街づくりが進む。人口6万に満たない自治体がプロ野球の本拠地になるのは異例だ。変わりゆく郷土を特別な思いで見つめる人びとがいる。 「私が子どものころ、球場周辺は山林で、深い谷に水が流れていた」。そう述懐するのは藤川隆志さん(92)。曽祖父が明治22年(1 日本ハムの新球場開業 北の「広島」、開拓史に光を
児童ポルノ、加害も被害も10代 SNS普及で変わる構図 坂口 祐一 コラム 編集委員 3月26日 生涯にわたって子どもの尊厳を踏みにじる児童ポルノ。この犯罪をめぐる情勢に変化が起きている。10年前には摘発される容疑者のうち2割ほどだった10代が、全体の半数近くを占めるまでに増えているのだ。 背景にあるのは、子ども世代へのスマートフォンやSNS(交流サイト)の普及。児童ポルノは「大人が子どもたちを食い物にする陰湿な犯罪」という様態に加え、「加害者も被害者も子ども」という構図が広がりつつある。 児童ポルノ、加害も被害も10代 SNS普及で変わる構図
袴田事件めぐる初期報道 「血染めの衣類」に疑問呈さず 大島 三緒 コラム 3月19日 1966年に起きた袴田事件で、東京高裁は袴田巌さん(87)の再審開始を認めた。無罪への大きな流れが見えるが、ここで省みておきたいことがある。初期の報道の経緯だ。 「血染めの衣類発見」「4人殺しに新証拠」。67年9月12日の新聞各紙は、新たな有力物証の出現を相次いで報じた。 発生から1年2カ月。一審公判中だった。今回の高裁決定が捜査機関による捏造(ねつぞう)の可能性を指摘した「5点の衣類」に関する 袴田事件めぐる初期報道 「血染めの衣類」に疑問呈さず