伊集院静「ミチクサ先生」(307) 4月13日 金之助は頑固に、この『サイラス・マーナー』の講読を続け、学生の発音を厳しく指導した。 「俺たちは帝大に英語の勉強をしに来たんじゃない。英語教師にでもさせるつもりか」 伊集院静「ミチクサ先生」(307)
伊集院静「ミチクサ先生」(306) 4月11日 不忍池から上野界隈(かいわい)、千駄木を回って、その日は帰宅した。 家はほどなく、洋行して空き家になっている教師の住まいが見つかり、早速引っ越した。 伊集院静「ミチクサ先生」(306)
伊集院静「ミチクサ先生」(305) 4月10日 鰻(うなぎ)を食べ終えると、子規のことがよみがえって来た。 「菅さん、正岡子規君の霊前に手を合わせに行きたいのだが」 「おう、それはいい。そうしよう」 伊集院静「ミチクサ先生」(305)
伊集院静「ミチクサ先生」(303) 4月8日 「小泉八雲という外国人の教師のことかね? 小説を書きながら、英文学を教えていると聞いたが。その後任なら金之助君、君にふさわしいよ」 金之助は岳父が 伊集院静「ミチクサ先生」(303)
伊集院静「ミチクサ先生」(302) 4月7日 目の前に座る中根重一は、金之助の話したことを頭の中で反芻(はんすう)するかのように車窓に映る風景を見ている。入ってきた車掌がほどなく横浜だと告げた。 伊集院静「ミチクサ先生」(302)
伊集院静「ミチクサ先生」(301) 4月6日 重一が席に戻ると、鏡子は金之助の組んだ腕を枕にして寝ていた。それを見て重一は目を丸くした。 「君からの手紙に"文学論"を 伊集院静「ミチクサ先生」(301)
伊集院静「ミチクサ先生」(300) 4月5日 明治三十六年一月二十三日、夏目金之助は検疫を終え、神戸港に停泊していた博多丸から二年ぶりに日本の土を踏んだ。 金之助は神戸の旅館に入ると、 伊集院静「ミチクサ先生」(300)
伊集院静「ミチクサ先生」(299) 4月4日 日本へむかう船の中で金之助は書物のリストを見返しては、時折船底へ行き、自分の本がきちんと積んであるかを確認した。 金之助が何度もあらわれるので、 伊集院静「ミチクサ先生」(299)