ウィズコロナと「祈り」のかたち Nikkei Views 編集委員 1月3日 俳句や和歌につきものの「季語」を網羅した歳時記。大部のものには、春・夏・秋・冬のほかに「新年」の分冊のあるものが多い。 試みに「新日本大歳時記」(講談社)の「新年」の巻をめくると、「門松」や「鏡餅」などのほか、元日に初めてくむ「若水」や、15日の小正月の前後に行われる「左義長」(どんど焼き)など多彩な行事や祭りが記されている。改まる年に込めた人々の切実な祈りと願いのかたちが伝わる。 歳時記には、 ウィズコロナと「祈り」のかたち
多面的な見方を養う 野上麻理さんに力を授けた本 編集委員 カバーストーリー 読書 12月3日 ■自他ともに認める読書家の原点は、幼いころに父親から毎晩、本を読んでもらった体験だ。 今では手に入りにくいのですが『松谷みよ子のむかしむかし』(全10巻)の中から、父がひとつずつお話を読んでくれました。このシリーズは昔話だけでなく古事記などの神話も広く収めていて、飽きさせなかったです。 そのおかげもあり、大の本好き、活字好きに。10代に入ってからは江戸川乱歩の少年探偵団シリーズに始まりアガサ・ク 多面的な見方を養う 野上麻理さんに力を授けた本
亡き名監督、町おこしに一役 ファンや役者引き込む磁力 風紋 コラム 編集委員 11月27日 映画「セーラー服と機関銃」に「台風クラブ」そして遺作の「風花」。独特のカメラの長回しと役者を追い込む演出法で一時代を築いた相米慎二監督が53歳で死去し、今年で21年がたった。墓と慰霊碑がある地では年に一度の「映画祭り」も恒例となり、往時をしのぶ俳優陣らが足を運ぶ。今なお衰えぬ人気は町おこしにも一役買っている。 プロフィルでは岩手県生まれで北海道育ちの監督だが、父親の出身地が青森県田子(たっこ)町 亡き名監督、町おこしに一役 ファンや役者引き込む磁力
古希を迎えるテレビはどこへ 文化時評 編集委員 コラム 8月21日 テレビを買ってくれないなら、一切しゃべらない。だんまり戦術だ。 小津安二郎監督の映画「お早よう」は、新興の住宅地に住む兄弟と、その両親の駆け引きをコミカルに描く。1959年の公開だ。 劇中、兄の方は初歩の英語を音読している。13歳とすれば現在は70代半ば。テレビほしさに、子ども時分、同様の策を弄した方もいるかもしれない。 テレビの本放送は53年2月のNHKが最初で、同年8月には日本テレビが後を追 古希を迎えるテレビはどこへ
古刹再生担うボランティア 寺院残す意義、考え直す 風紋 編集委員 8月14日 寺に人々が望むものは、いったい何だろう――。そんな問いを胸に、古刹再生に取り組む住職とボランティアがいる。手探りの復興は、混迷の世に寺院の役割を考え直す試みでもある。 京都市山科区の真言宗、安祥寺は9世紀の創建。かつては広大な地に別坊700余りを擁し、密教の僧侶を育てる国家的な機関の役割も担った。応仁の乱で灰じんに帰すが、徳川家康の令で寺域を回復している。 足を踏み入れると、緩やかな斜面にコケが 古刹再生担うボランティア 寺院残す意義、考え直す
魂と輪廻への思い 能楽師・山本章弘さんを導いた本 編集委員 読書 1月8日 弟子でもある長男が悩む姿に接する中、一冊の本に触れ、人の生や死を巡り改めて思いを深めた。 私の観世宗家での修業時代は「内弟子は空気のように」「芸は盗むもの」と教えられたものです。数年前、当時は20代前半だった長男にも芸の道を継いでほしいと願って、時に厳しく指導していました。が、本人は自らの将来についていろいろと考え込んでしまったようです。私自身も、このやり方で良いのかと悩むうち、僧侶、南直哉さん 魂と輪廻への思い 能楽師・山本章弘さんを導いた本
早すぎた水墨画家、篁牛人 奔放な人生が生むポップな筆 風紋 コラム 編集委員 12月26日更新 今年、生誕120年を迎えた富山県出身の水墨画家、篁牛人(たかむら・ぎゅうじん、1901~84年)。掛け軸に山河を描くといった旧来のスタイルとはかけ離れ、伝説の人物や動物を時にたおやかな線で、時にアグレッシブな筆さばきで刻んだ。現代のイラストやアニメーションとも親和し、数奇な生涯と相まって、美術ファンにとどまらない注目を集める。 東京都港区の大倉集古館で開かれている「篁牛人展~昭和水墨画壇の鬼才」 早すぎた水墨画家、篁牛人 奔放な人生が生むポップな筆
雨森芳洲に見る日韓関係、「欺かず、争わず」今こそ 風紋 コラム 編集委員 2月7日 「人間という存在に対する限りない優しさであるといえるだろう」。江戸時代、対馬藩に仕えた雨森芳洲(あめのもり・ほうしゅう、1668~1755)の人柄の特徴を司馬遼太郎は、こう残した。将軍の代替わりに訪れた500人の外交団「朝鮮通信使」の応接役として、堪能な語学を操り、友好を旨として職務にあたった。今の日韓関係へも多くの示唆を与える。 芳洲は滋賀県長浜市高月の生まれ。今も「雨森」の名を冠した集落が残 雨森芳洲に見る日韓関係、「欺かず、争わず」今こそ
戦後の転換期だったあの頃 「Discover 70's」まとめ読み 新型コロナ 大島 三緒 坂口 祐一 和歌山 章彦 コラム 編集委員 1月10日 半世紀前の1970年代。高度成長期がピークから終幕に向かい、経済成長一本やりに対する懐疑は、人々を内面へと向かわせました。人と社会が大きく揺れ動いたあの時代を振り返り、その反照から現代に通ずる手掛かりを探したこの年末年始の社会面連載企画「Discover 70's」を紹介します。 国鉄キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」にアンノン族。「旅から学ぶ」空気が全国にあふれ、みながこぞって旅 戦後の転換期だったあの頃 「Discover 70's」まとめ読み
社会運動、手探りの半世紀 分厚い中間層と距離広がる 編集委員 1月3日 大学進学率が右肩上がりとなり、高等教育のマス化が進んだ1960年代後半。幅広い学生層が大学や社会の矛盾に目を向け始めた。校舎を封鎖しストライキをうつなど「学園紛争」が全国に広がったのである。 しかし、69年1月、東京大学に立てこもった学生らが警察に排除されたのを機に運動は退潮。代わって銃や爆弾を使い武装闘争を前面に出す新興の党派(セクト)が活発に動きだした。 1冊の文集がある。「回想」と題された 社会運動、手探りの半世紀 分厚い中間層と距離広がる