「注釈付き大統領」の時代が始まる イアン・ブレマー氏 グローバルオピニオン 1月21日 米調査会社ユーラシア・グループが発表した2021年の世界「10大リスク」で、首位は20年と同様に「米国」だった。だが、昨年(首位は「誰が米国を統治するか」)と違うのは、米国への懸念が来年以降もずっと続くことだ。 本来ならいたって常識的な「米大統領選挙には明確な勝者がいた」という点から始めよう。米国民の半数近くは勝者であるバイデン氏が、正統に大統領の座を勝ち取ったと認めていない。1月6日の米連邦議 「注釈付き大統領」の時代が始まる イアン・ブレマー氏
バイデン氏、あらがえぬ「アメリカ・ファースト」 日経ヴェリタス 日経ヴェリタスセレクト コラム 編集委員 1月17日 ■ルーズベルト大統領と似た苦境 譲れぬ国内優先 大恐慌のさなかにあった1933年3月4日、フランクリン・ルーズベルト米大統領が1期目の就任演説に臨んだ。「我々が恐れなければならないのはただひとつ、恐れそのものなのだ」。危機下の国民を奮い立たせた名言は、いまも色あせることはない。 ルーズベルトはこう語ってもいる。「国際貿易関係も極めて重要ではあるが、時局と必要性に鑑みれば、健全な国内経済の確立が先 バイデン氏、あらがえぬ「アメリカ・ファースト」
米通商、インド太平洋に戻るか ミレヤ・ソリース氏 グローバルオピニオン 12月31日 米国など12カ国は2015年10月、オリジナル版の環太平洋経済連携協定(TPP)に大筋合意した。米主導で市場経済を重視する構想だったが、17年1月就任のトランプ大統領が離脱表明した。米国は中国と貿易戦争を始めた。全面的なデカップリング(分断)の可能性は大きくないが、半導体などの分野で別々の生産ネットワークが出来上がりつつあるようだ。 アジアは米中の戦略的競争の舞台であるとともに、(米中が入ってい 米通商、インド太平洋に戻るか ミレヤ・ソリース氏
「赤の恐怖」か「黄禍論」か 米国覆う反中ヒステリー トランプ政権 米大統領選 新型コロナ 編集委員 Global Economics Trends 12月20日 フランスの皇帝ナポレオンはかつて、中国を「眠れる獅子」と呼んだ。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がこれを引用し「獅子はすでに目覚めた」と言ってのけたのは2014年のことである。 米国はいまや中国が「フランケンシュタイン」に化けてしまったとみる。トランプ現大統領からバイデン新大統領に政権が移行しても、経済・技術・軍事の覇権を争うライバルへの強硬姿勢は根本的に変わりそうにない。 「ウィンウィン 「赤の恐怖」か「黄禍論」か 米国覆う反中ヒステリー
バイデン政権下の米国と国際秩序 イアン・ブレマー氏 グローバルオピニオン 12月17日 次期米大統領に民主党のバイデン前副大統領が就くことになり、多くの国民が落胆し、それを上回る国民が歓喜している。支持派も反対派も、バイデン政権が世界に大きな変化をもたらすと予想しているが、様々な理由から、その可能性は低いと言わざるを得ない。 まず米国内を見てみよう。11月の大統領選で、米国がどの民主主義の先進国よりも深く分断していることが明らかとなった。国際秩序を主導することを期待されている国にと バイデン政権下の米国と国際秩序 イアン・ブレマー氏
返り咲く旧来型の米国政治 エリートの支配に危うさ 中外時評 編集委員 12月16日 米女性活動家のドリス・ハドックさんが伝説を残したのは、1999年1月~2000年2月のことだった。北米大陸を徒歩で横断し、政治資金の改革を訴えたのだ。 故郷ニューハンプシャー州の靴工場を辞め、夫の最期をみとった末の挑戦である。88歳でカリフォルニア州をたち、首都ワシントンに着いた時には90歳になっていた。 「既得権益の、既得権益による、既得権益のための政治ではない」。エスタブリッシュメント(支配 返り咲く旧来型の米国政治 エリートの支配に危うさ
米国の隙を突く敵対国は イアン・ブレマー氏 グローバルオピニオン 11月26日 米大統領選で現職のトランプ大統領が敗北をいまだに認めないのはいかにも同氏らしいが、米国の民主主義にはそぐわないことだ。新政権への移行が円滑に進まず、米国は一定期間、政治が機能不全に陥るかもしれないという事態に突入しようとしている。どの敵対国が米国内の混乱の隙を突こうとするのだろうか。 中国ではない。中国の最高指導部は米国の政治家が超党派の支持を集められる数少ない論点の一つが対中強硬政策だとよくわ 米国の隙を突く敵対国は イアン・ブレマー氏
4つの分断、トランプ2.0を生みかねない米国 米大統領選 Global Economics Trends 編集委員 11月15日 「疲れし者、貧しき者、自由の息吹を切望する者たちを、我に与えよ」。19世紀の米詩人エマ・ラザラスのソネット(14行詩)が刻まれているのは、ニューヨークの名所「自由の女神像」の台座だ。多様な人々を包摂し、ひとつに束ねてきた米国の理念を、見事にうたった一節に思える。 この人の胸にはどう響くのか。「闇」ではなく「光」、「分断」ではなく「結束」の指導者になると宣言した民主党のジョー・バイデン次期大統領― 4つの分断、トランプ2.0を生みかねない米国
トランプ氏の刻印、消せぬ超大国 米大統領選 日経ヴェリタス 日経ヴェリタスセレクト 編集委員 11月7日 「エ・プルリブス・ウヌム(多様から生まれた統一)」――。国是ともいえるラテン語が、どこかむなしく響く。米国を2つに引き裂くような大統領選の出口はいまだに見えない。 民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)の優勢は、大方の予想通りだろう。だが共和党のドナルド・トランプ現大統領(74)がほぼ互角の戦いに持ち込んだのは注目に値する。 ■混迷する米大統領選 全米覆う「感情の民主主義」 創造よりも破壊、理 トランプ氏の刻印、消せぬ超大国
これからの学歴の話をしよう "知の差別"が招く分断 中外時評 編集委員 10月21日 メリトクラシー(実力社会)。この造語を1958年の自著で世に問うたのは、英社会学者のマイケル・ヤングだ。個人の能力や努力に報いるユートピア(理想郷)の象徴とみなす向きも多いが、当時はエリートが全てを支配するディストピア(暗黒郷)の意味を持たせていた。 ヤングには先見の明があったのかもしれない。欧米では最近、メリトクラシーの光より影に焦点を当てる識者が目立つ。著書「これからの『正義』の話をしよう」 これからの学歴の話をしよう "知の差別"が招く分断