部活動「地域移行」の成否 石川 淳一 時論・創論・複眼 沖縄 教育 編集委員 1月16日 公立中学の休日の部活動を民間事業者などに委ねる「地域移行」。少子化や教員の働き方改革が背景にあるが、指導者や施設の確保、費用負担など課題は少なくない。国は「2025年度末」としていた達成目標は設定しない方針に転じた。部活動という日本社会の「慣習」を刷新する道はあるのか。 ◇ ◇ ◇ ■「強制」脱して個人に委ねる 筑波大学教授 山口香氏 部活動が日本のスポーツの一つの柱を担ってきたのは間違 部活動「地域移行」の成否
法医学者が沖縄戦の遺骨収集 身元特定、現場で見た課題 風紋 編集委員 1月8日 「法医学」という言葉をドラマなどで耳にする。でも、その目的は何だろう。 病死なのか、犯罪が疑われるのか。現場を重視し、検案や解剖を通じ死因を特定する。地味だが、法治国家における正義の最後のとりでなのかもしれない。 あまり知られていないが、日本法医病理学会は第2次世界大戦の沖縄戦で亡くなった人びとの遺骨収集に協力している。 沖縄戦の死者は日米両軍、住民を含め約20万人にのぼる。今年で戦後78年にな 法医学者が沖縄戦の遺骨収集 身元特定、現場で見た課題
日本人にとって遺骨とは 今も続く「鎮魂の営み」 文化時評 編集委員 コラム 12月4日 それは警察活動というより、鎮魂の営みのように見えた。 10月下旬の朝。北風が吹きつける福島県富岡町の海岸に福島県警の警察官7人が整列し、頭を垂れていた。黙とうを終えると、消波ブロックの隙間の砂を熊手でかき出す作業を始めた。 「3.11」から来年で12年になる。警察は今も東日本大震災の行方不明者の手がかりを発見しようと、人知れず捜索活動を続けているのだ。 双葉警察署の斎藤雅彦・復興支援課長は「行方 日本人にとって遺骨とは 今も続く「鎮魂の営み」
新しい奨学金の使い勝手は? 将来の返済、年収を基準に 編集委員 ニッキィの大疑問 12月3日 「高等教育を受ける学生向けに新しい奨学金制度ができると聞きました」「『出世払い奨学金』というらしいけど、どんな仕組みで、なぜそうした新制度を導入するのかな」 奨学金を巡る問題や新制度の仕組みについて、バーチャルキャラクターの日比学くんと名瀬加奈さんが、和歌山章彦編集委員に聞きました。 日比くん「奨学金はどの程度利用されていますか」 国の奨学金は「日本学生支援機構」(JASSO)が運営しています。返 新しい奨学金の使い勝手は? 将来の返済、年収を基準に
北アルプスによみがえる「山賊の道」、親子2代がつなぐ The STYLE 編集委員 9月30日 長野県大町市の秘湯・湯俣温泉と富山県の三俣山荘を最短で結ぶ「伊藤新道」を整備した山小屋経営の草分け、伊藤正一さん(1923~2016年)。名著「黒部の山賊」に描かれるように、黒部川水系源流の北アルプス最深部に暮らしていた「山賊」とよばれた猟師と深く交わり、道なき道を切り開いた。 が、岩盤崩落などで廃道に。北アルプスの原初の自然を残すこの道が、正一さんの子どもたちの手によって、およそ40年ぶりに復 北アルプスによみがえる「山賊の道」、親子2代がつなぐ
原爆後の応急住宅、ヤナギの記憶 広島の生活史語り継ぐ 風紋 コラム 編集委員 8月28日 77年前、焦土と化した広島市は、戦後しばらく深刻な住宅難に直面した。 現在、サッカースタジアム建設のつち音が響く広島市中央公園(同市中区基町)に終戦の翌年、応急住宅が建設された。でも、足りない。困窮した市民は河川敷周辺に不法住宅を建て、夜露をしのいだ。生き抜くのに精いっぱいだった。 1978年に約3千戸の市営基町高層アパートが完成。映画「仁義なき戦い/広島死闘篇」もカメラを向けた「原爆スラム」と 原爆後の応急住宅、ヤナギの記憶 広島の生活史語り継ぐ
物語や実記が描く「戦争犯罪」 文化時評 編集委員 コラム 8月14日 ロシアのウクライナ侵攻を機に、私たちは「戦争犯罪」という言葉に接するようになった。 この言葉には、いくつかの含意がある。まず、戦争自体は犯罪ではない。自衛のための武力行使は正当行為だ。が、戦争にもルールがある。非戦闘員の殺傷や捕虜の虐待は、国際人道法に反する。一切の罪悪を含まない「公正な戦争」が推奨されるのだ。 そんなバカな、と叫び、刑場の露と消えた人びとがいる。総力戦に動員された私たちの祖父、 物語や実記が描く「戦争犯罪」
小説が問う「あさま山荘」の核心 文化時評 コラム 6月10日 元号が平成から令和に改まって1カ月余り。2019年6月、衝撃的な事件が起きた。大阪府吹田市で交番勤務の警官が刺され、実弾入りの拳銃が奪われたのだ。捜査当局は、30代の男を逮捕・起訴した。 この事件は、まったく別の側面から注目され、ネット世論を刺激した。犯人の父親は、ある企業の役員で、事件発生直後に定時株主総会を控えていた。SNS(交流サイト)には、「上級国民の子育て失敗例」「マスコミは親の家に突 小説が問う「あさま山荘」の核心
キラキラネームは万葉仮名か 命名権は誰のもの? Think! Nikkei Views 編集委員 6月9日 「キラキラネームの許容範囲は?」――。最近、こんなニュースがネット上で話題になり、様々な投稿が寄せられた。でも、なんで今、議論するのか、と疑問に思った人も多いはずだ。 ■背景に行政のデジタル化 明治時代に戸籍法が制定されて以来、今日に至るまで氏名の読み仮名を戸籍に記載する義務はない。出生届や婚姻届には氏名の読み仮名の記入欄があるが、戸籍には反映されていないのだ。 でも、氏名のデータを多様で複雑な キラキラネームは万葉仮名か 命名権は誰のもの?
地震で専門ボランティア 「もっと頼って」地域の壁越え 風紋 コラム 編集委員 4月17日 3月16日に発生した福島県沖地震から1カ月が過ぎた。東北新幹線が脱線し一部運休したことが注目されたが、多くの住宅も壊れた。市民の日常への影響は小さくない。 福島県では全壊、半壊、一部損壊した住戸は1万棟を超す。国道6号を南下して震度6弱の揺れを観測した福島県新地町、6強だった相馬市、南相馬市の被害状況を見て歩いた。 91、86、83、83……。新地町役場に設置された災害ボランティアセンター(VC 地震で専門ボランティア 「もっと頼って」地域の壁越え