荻原浩「ワンダーランド急行」(46) 3月1日 医者はこうも言った。 「いまの数値でも自然妊娠は可能ですし、多い少ないと言いましても、卵子と受精できるのはそのうちのたった一匹ですから」 荻原浩「ワンダーランド急行」(46)
荻原浩「ワンダーランド急行」(45) 2月27日 マンションから一戸建てに越してきて良かったことのひとつは、風呂の広さだ。 前の住まいの浴槽は膝を折らないと入れないサイズだったが、 荻原浩「ワンダーランド急行」(45)
荻原浩「ワンダーランド急行」(44) 2月26日 羊肉の匂いのゲップを連発しながら、流しで皿を洗った。なんとかシチュー皿一杯をたいらげたが、胃の中では羊の群れが柵を跳び越えたり戻ったりしていた。 荻原浩「ワンダーランド急行」(44)
荻原浩「ワンダーランド急行」(43) 2月25日 ひとり部屋に取り残された私は、アメリカのホームドラマの寂しい子どものようにスプーンを上に向けて握りしめ、肩をすくめる。羊肉の匂いのゲップが出た。 荻原浩「ワンダーランド急行」(43)
荻原浩「ワンダーランド急行」(42) 2月24日 どれだけ時間をかけたのだろう。柔らかく煮込まれた羊肉が、なんとなし恐ろしかった。 美冬が自(みずか)ら好んで肉料理をつくることはめったにない。 荻原浩「ワンダーランド急行」(42)
荻原浩「ワンダーランド急行」(41) 2月22日 その数日前から不妊治療を正式に始めてみようと美冬に持ちかけられていた私は、言葉を濁してばかりで返答から逃げまわっていた。あげくは 「子どもがいなくちゃだめなのか?」 荻原浩「ワンダーランド急行」(41)
荻原浩「ワンダーランド急行」(40) 2月20日 ラム丼を食べたばかりだったから、違いに気づけたのだと思う。これはマトンだな。今日はとことん羊の日だ。メエ~。 ところで美冬はなぜビーフシチューに羊肉を? 荻原浩「ワンダーランド急行」(40)
荻原浩「ワンダーランド急行」(37) 2月17日 自宅への道を歩きながら私は、八年前のあの道を思う。 帰り道が偶然同じ方向だった。もし逆だったら、あるいはどちらかが二次会に行っていたら、 荻原浩「ワンダーランド急行」(37)