都市の針路

歴史・文化資産が集まる関西。豊かな文化的土壌が独特の感性を育み、現代にも根付いています。元祖「金融都市」としてのプライド、新境地を開く関西弁の精神、数々の経営理念。関西が受け継いできた魅力を再認識できる取り組みをまとめました。関連インタビューとともにお届けします。（データなどは記事公開当時のものです） 京都・奈良、歴史こそ地域の宝　サステナブルな伝承探る 歴史・文化資産は関西の宝です。全国の国宝

2025年に開かれる2度目の万博を機に、大阪・関西は世界都市への復権をめざしています。かつて東京市を人口で上回り、世界6位の大都市として繁栄を誇った大阪市が長く雌伏の時を過ごしているのはなぜか――。大阪・関西の持つパワーを切り口に都市の現状と課題を読み解き、進むべき道を探る連載シリーズ「都市の針路」のまとめ読みです。（データなどは記事公開当時のものです） 新シリーズ「魅力を見つめ直す」編、公開し

「自分たちだけでなく皆がよくなるのが大事だという感覚が、日本の経営者にはある」「尊敬される経営者が増えれば、日本経済、世界がよくなる」――。2月下旬の土曜日、大阪市内で開かれていたのが、実践経営者道場《大和》の選抜合同自主例会だ。100人近くの中小企業の経営者らが集まった。 松下幸之助氏と稲盛和夫氏、2人の「経営の神様」 道場は、旧「盛和塾大阪」を源流に持つ。平成の「経営の神様」と呼ばれ、昨夏亡

2017年から関西経済界のトップ、関西経済連合会会長を務める松本正義氏（住友電気工業会長）。その口から「三方よし」や「マルチステークホルダー（利害関係者）主義」という言葉を聞かない記者会見や会合は少ない。こうした経営哲学こそ、企業の価値を高める根幹だという信念を持つ。 関西の経済界は昔から（従業員や取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきだという）マルチステークホル

お笑いコンビ「もも」のせめる。さん（29）は松山市出身。先輩たちの姿に憧れて、漫才師を目指した。 2006年の「M-1グランプリ」。チュートリアルさんが最終決戦で審査員から満票を獲得して完全優勝したシーンをテレビで見ていました。13歳の自分が「漫才師」という職業に強く引かれたきっかけでした。 レンタルビデオ店でお笑いや漫才のDVDを大量に借りて、同じ内容でも何回も見返したりしてました。中学を卒業す

若者らに人気のヒップホップユニット「Creepy Nuts（クリーピーナッツ）」が2022年に発表した楽曲「フロント9番」。軽快なラップ調のメロディーに関西弁の歌詞がマッチし、新たな日本語の世界を創り出している。 「レゲエやラップに関西弁の語感がフィット」　 ラップや中米ジャマイカ生まれの音楽、レゲエで関西弁が使われる曲が若い世代を中心に広く受け入れられている。「Creepy Nuts」のメンバ

日本取引所グループ（JPX）傘下の大阪取引所は先物やオプションといったデリバティブ（金融派生商品）を扱う取引所だ。スタートアップ支援とは無縁な存在とも思えるが、大阪経済の復活に向けて可能な範囲での協力は惜しまない構えだ。 「スタートアップ成長支援塾」を始めたきっかけは大阪府・市と2022年に結んだ連携協定だ。国際金融都市構想の実現に向けて、ぜひ協力してほしいと府市側から声をかけてもらった。私たちと

「業績が赤字でも融資が必要な理由や根拠を明確に、自信を持って説明してほしい」 1月27日、日本取引所グループ（JPX）大阪本社5階の一室。JPX傘下の大阪取引所と大阪府・市が2023年に始めた「スタートアップ成長支援塾」で、池田泉州銀行の担当者は起業家に融資を獲得するための勘所を銀行目線で伝えた。金融機関や証券会社、監査法人などが有望なスタートアップ15社に対し、資金調達やガバナンス強化の方法な

歴史・文化資産は関西の宝だ。全国の国宝約1100件のうち美術工芸品の半分、建造物の7割が集まり、世界遺産も6府県すべてにある。豊かな文化的土壌が育む独特の感性は現代の文化・芸能、経営哲学にも息づき、サステナブル（持続可能）な形で次代につなごうと模索している。 2026年春、京都市に開業する帝国ホテル。市内最大の花街・祇園の目抜き通りという立地に期待が膨らむ。「伝統ともてなしの文化が息づく特別な土地

関西には京都、奈良を中心に多くの歴史・文化資産が集積する。歴史を本格的に学びたい人にとっては憧れの地でもあり、奈良大学（奈良市）、仏教大学（京都市）の通信課程には、全国から多くのシニア層が集まる。城郭考古学のパイオニアとして知られる奈良大学の千田嘉博教授は、文化財を五感で味わえる環境が歴史ファンを吸引し、研究への扉を開くと説明する。 奈良、京都に代表される関西圏は、歴史を勉強するのにベストな場所だ