文化庁移転、国家百年の計は 堀田 昇吾 編集委員 コラム 1月29日 劇作家で評論家の山崎正和さんに、副理事長を務めていたサントリー文化財団の地域文化賞創設時の話を聞いたことがある。サントリーが1979年の創業80年を記念して文化全般に貢献する財団の設立を構想し、当時の社長、佐治敬三氏から具体的に何をするかの相談があったという。 山崎さんは顕彰制度がなかった分野で活躍する人らを表彰する賞をつくったらと考えた。浮かんだのが、若手学者らを対象にした学芸賞と、地域の文化 文化庁移転、国家百年の計は
新しい「兼業農家」という生き方 吉田 忠則 Think! 編集委員 コラム 1月22日 農業にどんなイメージをお持ちだろうか。都市の近くではやりにくい。兼業だと中途半端になる。でもそんな見方から自由になれば、農業が中心の新しい生き方が見えてくる。 田口明香さんは東京都瑞穂町で2016年に農家になった。中学生のころから農業に興味を持ち、東京農業大で学び、念願かなって就農した。 野菜を育てる農地の面積は、海外と比べて小さい日本の農場のなかでも「零細」と言っていい規模だ。経費を引くと、手 新しい「兼業農家」という生き方
「Z世代」という幻想と希望 中村 直文 Think! 編集委員 コラム 1月15日 Z世代論がかまびすしい。テレビ番組や雑誌の特集などでやたらとZ世代の特徴や消費志向を取り上げているほか、企業ではZ世代とどう向き合うかに頭を悩ませる。新人類、ゆとり世代、しらけ世代……。様々な世代論が語られてきたが、どうもZ世代だけは過去にない特別感をまとっているように見える。 Z世代とは1996~2014年に生まれた人々を意味する。ちなみに米国の基準では1977~95年をミレニアル(Y)世代、 「Z世代」という幻想と希望
異例のロングラン トップガン現象はなぜ起きたか 竹田 忍 Think! 編集委員 コラム 1月8日 2022年5月27日からロングランが続く映画「トップガン マーヴェリック」が越年公開されている。最盛時の上映館数は376館。初日以来の観客動員数は835万人を超え、興行収入は22年に公開された洋画では首位の134億円超(22年12月18日時点)に達する。11月2日発売のブルーレイとDVDのセットは初週で12万2000枚を売り上げ、12月23日発売のコレクターズ・エディションは予約分だけで売り切れ 異例のロングラン トップガン現象はなぜ起きたか
地域通貨が導く消費の未来 大岩 佐和子 編集委員 コラム 12月25日 一定の地域やコミュニティーでしか流通しない、利子のつかないお金「地域通貨」。最初のブームからおよそ20年たった今、紙からデジタルへと変身し、再び各地で広がっている。お金であってお金ではない不思議な通貨は、消費社会において「消費することの意味」を問いかけている。 埼玉県飯能市に地域通貨「Hello,againコイン」が生まれたのは1年ほど前。民間企業が運営し、鮮魚店や旅館など24の店が参加する。ア 地域通貨が導く消費の未来
ユーミンの50年とメメント・モリ 吉田 俊宏 編集委員 コラム 12月18日 シンガー・ソングライターのユーミンこと、松任谷由実(68)が10月に出したデビュー50周年記念ベストアルバム「ユーミン万歳!」は、アルバムチャートで初登場1位になった。1970年代から80年代、90年代、2000年代、10年代、20年代と6年代連続で1位を獲得したアーティストは初めて(オリコン調べ)という。 さらに今年は文化功労者にも選ばれた。彼女が半世紀にわたってトップを走り続けられるのはなぜ ユーミンの50年とメメント・モリ
北欧の小国が紡ぐノーベル賞 「科学を育む」懐の深さ 矢野 寿彦 Think! 編集委員 コラム 12月11日 ノーベル賞の授賞式が10日、スウェーデンの首都ストックホルムで開催された。そもそもノーベル賞とは何なのか。そして、120年以上の長きにわたってノーベル賞を守ってきたスウェーデンの文化とは。 ◇ 町工場の技術が詰まった小さな実験器具や、リチウムイオン電池の模型、仲間が作ってくれたという本人を模した人形もある。スウェーデン・ストックホルムのノーベル博物館に日本人受賞者が記念品として寄贈した品々だ。山 北欧の小国が紡ぐノーベル賞 「科学を育む」懐の深さ
日本人にとって遺骨とは 今も続く「鎮魂の営み」 和歌山 章彦 編集委員 コラム 12月4日 それは警察活動というより、鎮魂の営みのように見えた。 10月下旬の朝。北風が吹きつける福島県富岡町の海岸に福島県警の警察官7人が整列し、頭を垂れていた。黙とうを終えると、消波ブロックの隙間の砂を熊手でかき出す作業を始めた。 「3.11」から来年で12年になる。警察は今も東日本大震災の行方不明者の手がかりを発見しようと、人知れず捜索活動を続けているのだ。 双葉警察署の斎藤雅彦・復興支援課長は「行方 日本人にとって遺骨とは 今も続く「鎮魂の営み」
訪日外国人は「歩く財布」か 試される旅文化 石鍋 仁美 Think! 編集委員 コラム 11月27日 訪日旅行(インバウンド)への水際規制がほぼ消え、外国人観光客が京都に戻りつつある。あるタクシー運転手によれば「(新型コロナウイルス流行前の)人気トップ3は金閣寺、嵐山の竹林、赤い鳥居の伏見稲荷大社」だった。いずれも色鮮やかで写真映え満点だ。 11月の平日、この3カ所や祇園、三年坂など有名スポットを回ってみた。コロナ前には遠いものの、確かに外国人が必ずいる。しかし見た目の印象でもっとも比率が高かっ 訪日外国人は「歩く財布」か 試される旅文化
英王室と芸術が彩る光と影 赤川 省吾 編集委員 コラム 11月20日 ロンドンの中心部、トラファルガー広場に面して英国屈指の美術館、ナショナル・ギャラリーがある。広大な館内を巡ると目立つのは17世紀に活躍したフランドル(現ベルギー)出身の画家ヴァン・ダイクの作品だ。巨匠が描いた当時の国王、チャールズ1世は、凜々(りり)しい賢君にみえる。 「あるときはパトロン、あるときは作品を購入して、芸術家としてのキャリアを手助けした」。英国における芸術と英王室の関係について、シ 英王室と芸術が彩る光と影