【大槻奈那】投稿一覧

大槻奈那
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名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

名古屋商科大学大学院教授/ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

東京大学卒、一橋大学ICS博士(経営学)。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ、マネックス証券などの金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高評価を得てきた。2022年9月より現職、国内外の金融市場や個人投資家の行動等を分析研究。
【注目するニュース分野】株式、金融

東京大学卒、一橋大学ICS博士(経営学)。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ、マネックス証券などの金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高評価を得てきた。2022年9月より現職、国内外の金融市場や個人投資家の行動等を分析研究。
【注目するニュース分野】株式、金融

2023年

  • 長期金利の上昇で、今後は楽天だけでなく多くの大企業の資金調達が話題になるでしょう。2016年以降の日銀のYCC(イールドカーブ・コントロール)で長期金利が安定的に抑えられてきたこともあり、企業の負債の長期化が進んできました。今後は借り換え時に調達コストがジャンプアップする可能性が高いと思われます。
    とはいえ、債務を見る時には、事業の収益性や借入枠に加え、資産サイドの価値やその流動化の可能性等も重要。非中核資産の売却もありますし、その前に金銭的債権の証券化等の手段もありますので、文中にもある通り調達そのものへの危機感は今のところ低いと思われます。

  • 米国の新しい社員の動きについての良記事。ポイントは主に2点で、まず、米国の労働者は不満なら転職するのが一般像と思われていますが、社に留まって不満の声で企業を変えるという動きが出ている点。また、職場が、賃金を受け取る場というだけでなく、人々の生きがいや尊厳に関わるものとなっているという点です。
    日本でも、内部告発は少なくありませんが、過去には通報後に不当な扱いを受ける事例も見られたため、昨年の法改正で、内部告発制度の強化と告発者の保護が充実されています。こうした制度を一層活用し、企業には、統合報告書等で美しく語られる社会貢献よりも、まずは、内部からの声で会社をよくすることが求められるところです。

  • 従業員の賃上げを「社会的な責務」と考えるというのは、広く社会全体のサステナビリティを考えるという観点から適切だと思います。ただ、それならば、下請け中小企業に対しての取引条件の見直しも「責務」に近い重みで取り組むべきかと思います。中小企業の付加価値に対する労働分配率は8割程度と高く、現状のままでは大企業のような賃上げはままならないでしょう。
    インフレから賃上げのサイクルの過程で、格差が広がることがないよう、こうした下請け構造にもしっかり目配りをしていく必要があるのではと思います。

  • 記事にある公式のデータ以上に実態は厳しい可能性もあります。先日話したある首都圏の学校教員曰く、毎日約1割の同僚が欠勤、その分は他の教員が指導や自習の指示を行う等の負担が増す状況。更に、「ならば明日は私も休もう」とつい考えてしまう等モチベーションの低下も懸念されるとのこと。
    打開策としては、記事にもある特別免許状の活用等が有力ですが、その仕組みには相当課題があります。例えば、現在、この免許は、文科省ではなく都道府県教育委員会が授与しています。現場を知る人々である一方で、「聖域」の守りに入っていないか…
    次世代の教育を本気で考え、抜本的な改革が必要な時に来ているのではと思います。

  • 既存の変動型住宅ローン金利が引き上げられるのはまだ先ですが、それに備えて、「変動型なら貯蓄しておいて、金利上昇に備える」というのは個人ができる金利ヘッジとして興味深いです。
    ただ、定期預金でもほぼ金利がゼロの現状を考えると、やはり借入金利に大きく割負けるので、むしろ、最大限返済に回した方がヘッジになるのでは、とも思います。

  • 市場では、この4%近辺がピークと見る向きが多いですが、仮にそれが正しかったとしても、沈静化のスピードが問題です。昨年8%強まで上昇した米国のCPIも、沈静化は緩やか想定より緩慢です。日本では、一部の交通費などまだ来月以降に値上げが予定されている品目も多く、コロナからの回復も本格化はこれから。想定よりも長引いた場合、暮らしへのマイナス影響も長引き、インフレ予想が上昇してしまう可能性があるため、当面の動向はこれまで以上に注視すべきでしょう。

  • ジョブ型雇用のポイントは職務契約の明確化です。実は日本の民法でも、雇用は「労働に従事することと、これに報酬を与えることを約することによって効力を生ずる(623条を要約)」と定義されており、ジョブ型が基本です。ところが、1960年代以降の雇用慣行の変化でメンバーシップ型が主流になりました。
    課題は、成果がフェアに計測されるかどうか、労働衛生上の問題をいかに抑制するかと、労働市場で各職務の価値が広く明示されるようなシステムができるか。これら次第では、ジョブ型雇用は、解雇を前提としない前向きな形での人材の流動化にも繋がり、日本の生産性向上に向けて最も注目されるソリューションの一つとなると思います。

2022年

  • 記事の「影の銀行」またはNBFI (Non-Bank Financial Intermediaries) のリスクは気になっています。
    現在、銀行の健全性は高く、例えば米銀は2020年10月以降1件も破綻しておらず、リーマンショック前に次ぐ長い安定期となっています。
    しかし、今や銀行は世界の金融資産の半分強しか保有していません。残りは膨張を続けるファンド等のNBFIが保有しています。昨年はアルケゴスが破綻し、今年もいくつかのファンドが市場を動揺させました。開示が限られ全体像の把握は難しいですが、少なくとも一部はレバレッジが高く金利上昇の影響を受けているはず。来年注視すべき分野の一つでしょう。

  • 外貨定期預金は、その響きと手軽さに対してリスクが見えにくい商品の一つです。第一に文中の為替変動リスク。4%の金利でも、今の1ドル=136円が131円以下になったら利息は吹っ飛びます。来年の為替予想は専門家間でも割れており、そのシナリオはありえなくないでしょう。第二にスプレッドや手数料。TTS(預入時のレート)とTTB(払出時)の差は2円が一般的ですから、これで1.5%程度抜かれます。第三に、原則期前解約ができません。更に外貨預金は預金保険の対象外。確率は低いですが、その銀行が破綻した時でも保険でカバーされません。
    今の急増ぶりを見ると、これらのリスクをどこまで検討しているのかは気になります。

  • 日経平均構成企業の年齢*の中央値は今年80歳となりました(*創業以来の年数)、米S&P500と欧STOXXの約30歳と対照的です。
    2000年頃のノキアはフィンランドの輸出額の2割を占めるジャイアント。それでも政府は、同社に公的資金を投入するのではなく、徹底して起業を支援しました。当時年間数百もの企業に資金を拠出した政府系ベンチャー支援基金Tekes のモットーは「try quick, fail quick」です。
    日本でも、一時的なショックを恐れ大企業を丸々支援するのではなく、スタートアップの”fail quick”を受け入れつつ"try quick"を押し進める覚悟が必要ではと思います。