【菅野幹雄】投稿一覧

菅野幹雄
菅野幹雄

菅野幹雄

日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員

日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員

マクロ経済が専門分野で、ベルリンとロンドンに合計7年駐在。ユーロ危機やEU動乱を報じた。2018~22年にはワシントン支局長としてトランプ・バイデン両政権での米国や世界秩序の変貌を追った。著書に『英EU離脱の衝撃』。
【注目するニュース分野】グローバル、内外経済

マクロ経済が専門分野で、ベルリンとロンドンに合計7年駐在。ユーロ危機やEU動乱を報じた。2018~22年にはワシントン支局長としてトランプ・バイデン両政権での米国や世界秩序の変貌を追った。著書に『英EU離脱の衝撃』。
【注目するニュース分野】グローバル、内外経済

2023年

  • 当然だと思います。欧州歴訪の「観光写真」疑惑とともに、首相の息子だという甘えがあったのではないでしょうか。歴史ある公邸での非常識な振る舞いに岸田氏の「厳重注意」はいかにも甘く映りました。
    G7サミットではゼレンスキー氏の参加などで首相が大いに外交成果を挙げたように見えますが、内政では結局、目先の支持率を意識した短期志向の施策が目立ちます。
    米国であれだけ混乱した債務上限も、財政規律の維持をめぐる制度のアヤです。少子化対策を掲げて国民の関心を集めながら、財政の持続性など中長期の問題に岸田氏が全く向き合っていません。
    解散論もいいですが、長期政権を意識するならこの辺りの首相の認識を問いたいです。

  • 1年半近く前、中国BYDが商用車に加え乗用車分野でもEVで日本進出へ、というニュースを日経が報じました。その時「10年、20年後に、あれがニッポンの自動車産業の転機だったんだと振り返られるかもしれない」と投稿したのを思い出しました。

    中国EV、乗用車でも日本進出 第一汽車やBYD:日本経済新聞
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC107020Q1A211C2000000/

    少なくともEVだけで見れば、中国勢の伸長は圧倒的です。日本国内ではなかなか気づかないものの、EVを軸に自動車輸出でドイツを、そして日本をも抜こうとしている中国の存在を、私たちも強く認識することが大切です。他方で近いうちに米国などで中国警戒論が高まるのもほぼ自明かと思われます。この展開も注目です。

  • サミットを終えた月曜の早朝、広島市内の中心部に足を運んでみました。前例をみない厳重な警備で目隠しが取り囲んだ平和記念公園は規制が解け、きのう、岸田首相とウクライナのゼレンスキー大統領が献花したその場所に再び立てるようになりました。このシーンを含め、さまざまな映像や写真が収められたタイムラインを眺め直すと、いかに歴史的でサプライズの多い3日間だったか、改めて思い起こされます。
    ゼレンスキー氏は再び戦火の母国に戻り、バイデン米大統領は債務上限問題のXデーを目前に野党の下院議長とトップ協議に臨みます。広島サミットの記憶や記録を日本や世界がどう生かしていくか。混乱の日常がまた、始まります。

  • この瞬間も壮絶な侵攻を受ける戦時のリーダーが、日本で開いた記者会見。ゼレンスキー氏が10を超す内外メディアの率直な質問に、自分の言葉で真摯に答えている姿に深い感銘を覚えました。歴史的な光景でした。
    支援を引き出す思惑もあるでしょうが、自国で毎日多数の命が奪われている厳然たる事実に向き合う真剣さがにじみます。直前に元気で写真に写った子どもが原爆投下で命を絶っていたという比較展示に「涙が出る」と話していました。
    ロシアのプロパガンダに戦うためにも、対面参加を決意した。そんな発言もありました。人類未知の災禍を経験した広島のように、いまのウクライナを再建したい。このメッセージは世界に響くでしょう。

  • 広島に続き、ワシントンでも3人で会おう…。「シャトル外交」が日本と韓国の2国間だけでなく、日米韓でも始まるような錯覚を覚えます。日韓関係の改善については、オバマ政権時代の副大統領だったバイデン氏が「仲介役」になることに意欲を示したこともあり、彼にとって非常にこだわりのある分野だといえます。最近の日韓関係の雪解けは尹大統領の姿勢転換によるところが大ですが、こうしたかたちで具体的なステップを踏んでいくことは大事だと感じます。ただ、ここまで対話が頻繁になると、うまくいかなくなった時の揺り戻しも気になります。韓国の世論もそうですし、なにより2024年の米大統領選でバイデン氏が再選するかどうかも。

  • 戦時下のゼレンスキー大統領がG7や国際社会のリーダーと一同に会し、核兵器のない世界という理想に向けて着実な歩みを進める意志を明確に示すなど、今回の広島G7サミットには様々な成果とサプライズがありました。ところが、締めくくりの記者会見で国内外の記者から受け付けた質問がわずか4つというのは、G7の議長としては物足りません。厳しい質問や答えの微妙な質問をたくさん受けながら、自分の言葉で信念や思いをにじませ、ギリギリのメッセージを発信していく。世界のリーダーの1人として注目度を上げた岸田首相には、安全運転の対応ばかりでなく、そうした積極的なコミュニケーション術を身につけてほしいです。

  • 2001年以来、取材した8回のG7/G8サミットで、最もドラマに満ちた会合でした。G7や新興国の首脳が原爆慰霊碑の前で祈りをささげ、日韓首脳が韓国人の原爆犠牲者の慰霊碑にそろって頭を下げ、サプライズ参加のゼレンスキー大統領がG7リーダーと平和を求めて一同に会する。一つ一つが歴史的な意味合いをもつ光景でした。
    交通規制で不便を強いられた広島の人々が温かく世界を出迎えたことも特筆されます。会場に近い沿道で子どもがVIPの車列に目を輝かせ、バイデン米大統領や韓国の尹大統領も窓越しに手を振っていました。サミット開催が、被爆都市・広島の歴史や平和への願いを子どもたちに語り継ぐきっかけになればと思います。

  • ロシアの侵攻を受け戦闘状態にある国のリーダーが、欧州からの長旅を経て、世界で最初の被爆地・広島に降り立つ。ある程度は想定されていたとはいえ、実際にその映像を見ると、まさに劇的で歴史的な瞬間が訪れたと感じます。フランスが協力した飛行機のタラップをひとりで足早に駆け下り、車に乗り込むウクライナのゼレンスキー大統領の姿。いま彼が背負っている高いリスクを押しても、G7はじめ世界のリーダーと会い、国際社会に侵略の不当さと平和を訴えるメリットを優先した。その判断の重さが伝わってきます。対面の首脳外交で、世界はどこまで結束し、悲惨な戦闘の出口へ歩みを進められるか。地球規模の関心が明日、広島に集まります。

  • G7サミットの広島で感じるのは、街を歩く外国人観光客の多さです。厳重な警備で地元の人が外出を控えているからか、ジャーナリストはもちろん、家族連れや買い物を楽しむ外国人の姿が目立ちます。あいにくサミット期間中は首脳らの訪問に備えて平和記念公園の周囲一面が目隠しで覆われ、ピースツーリズムの中心となる原爆資料館の展示も原爆ドームの全容も見ることができません。
    とはいえ、ウクライナのゼレンスキー大統領の訪問が決まり、全世界に「広島」の存在がさらに強く印象づけられることになるでしょう。宮島や瀬戸内海など人気の観光地にも近い大都市である広島の歴史に触れようとする世界の人々がより多くなることを期待します。

  • ウクライナ政府高官もゼレンスキー大統領の対面参加に言及し、実現の可能性がかなり高まりました。広島G7サミットの取材会場で欧州メディアの記者に聞くと、昨日あたりからゼレンスキー氏のリアル参加の憶測が急速に高まってきたそうです。同氏がサミット直前に西欧各国を歴訪し、同氏の夫人も韓国を訪れるなかで「ならば広島も」という想像が働くのは自然です。
    侵攻を受ける当事国のリーダーだけに危機管理も厳重で、外国訪問は事前のアナウンスなしというのが恒例でした。安全な訪問が実現するかどうか、なお予断を許しません。リアル訪問が実現すれば、G7や友好国も一段と踏み込んだウクライナ支援を表明する必要に迫られそうです。