【鈴木一人】投稿一覧

鈴木一人
鈴木一人

鈴木一人

東京大学 公共政策大学院 教授

東京大学 公共政策大学院 教授

2000年、英国サセックス大学ヨーロッパ研究所博士課程修了。筑波大学専任講師・准教授、北海道大学教授を経て、2020年から現職。2013−15年に国連安保理イラン制裁専門家パネル委員。内閣府宇宙政策委員会宇宙安全保障部会委員、日本安全保障貿易学会会長、国際宇宙アカデミー正会員。主著に『宇宙開発と国際政治』(岩波書店)など。
【注目するニュース分野】国際政治、科学技術政策、宇宙政策

2000年、英国サセックス大学ヨーロッパ研究所博士課程修了。筑波大学専任講師・准教授、北海道大学教授を経て、2020年から現職。2013−15年に国連安保理イラン制裁専門家パネル委員。内閣府宇宙政策委員会宇宙安全保障部会委員、日本安全保障貿易学会会長、国際宇宙アカデミー正会員。主著に『宇宙開発と国際政治』(岩波書店)など。 【注目するニュース分野】国際政治、科学技術政策、宇宙政策

3月22日

  • 総理のキーウ訪問は、G7の議長国としてはやっておかなければならない作業だったと言えるが、明らかにインド訪問のタイミングでのキーウ訪問で、その過程も逐一報じられているという状況に少し違和感がある。本来ならば、こうした訪問はゼレンスキー大統領の居場所を知らせないためにも、後から報じるべきものだろうと思われるし、速報よりも少し作り込んだメッセージの発信の仕方があるように思うが、果たしてそうした発想は日本政府側、メディア側にあったのだろうか。

3月21日

  • 元々、政治家ではなく、検察の世界で生きてきたユン大統領だからこそ、こうした発言が出来るのだろう。これまで韓国の政治の中で「反日」「親日」はあまりにも重要な政治的争点となり、日本が実際にどうしたのか、ということではなく、相手陣営を黙らせるために、ないしは国内世論の批判を避けるために、日本が謝罪していないという立場をとり続けてきた。しかし、謝罪問題をきちんと正面から受け止め、韓国政治のコンテキストから外して議論できる、政治家ではない大統領が出てきたことで、日韓関係はまさに新たな局面を迎えることになるだろう。

  • やや注意が必要なのは、イラクにおけるシーア派といっても、親イランのシーア派と反イランのシーア派がいるということ。サドル派のようにイラクナショナリズムが強く、イラクのシーア派指導者シスターニ師を中心とする反イラン派もいれば、ソレイマニの指示の元でISISとの戦いで名を上げたカタイブ・ヒズボラのような親イランの組織もある。また、イラクはイランから見れば半ば革命防衛隊のテリトリーであり、駐バグダッドのイラン大使は革命防衛隊から出ている。防衛隊は一方では厳格なシーア派の規律を守らせようとするが、他方で、密輸などで利益を得る存在でもある。

3月20日

  • 話が気球から電磁波の話にすり替わっているが、実際のところ、中国の気球とされているものが電子戦の兵器ないし、電子戦に対応した装備を載せていたかどうかは全くわかっていない。電磁波の重要性や電子戦を論じたいのであれば、気球の話をする必要はないのではないだろうか。

3月19日

  • 需給のバランスが崩れたわけでも価格が動いたわけでもなく、物流が滞っているわけでもないのに商品不足が起こるという、興味深い事例。それは制度(この場合はEU域内の関税同盟)が持つ見えない力を明らかにしている。関税同盟に入っていれば、自由な商品の移動が保証され、生産者も消費者も恩恵を受けるが、一度その枠組みから出ると(Brexit)その恩恵を失う。その恩恵とは、単なる関税がなくなることによる価格低下だけでなく、流通におけるコスト(この場合は事務的手間)が低くなるということ。まあ、Brexitの前からこういう恩恵を失うことはわかっていて、それでもBrexitを選んだのだから、自業自得とも言えるが…。

3月18日

  • ドイツは恒常的にフランスとは合同閣議を行っており、インドや中国とも大規模な閣僚会議を開いたことがあるので、あまり珍しいことではない。その背景として、ドイツは日本と同様に省庁の縦割りが激しく、首脳会議や外相会議で話がまとまっても、それを実施するのは容易ではなく、結果的に合意が宙に浮いてしまうというようなことが起きる。そのため、現業官庁の閣僚が揃ってくる方が話がまとまりやすいという背景がある。それでも、これだけの閣僚をまとめて連れてくるというあたり、日独関係を進めるという意志の強さは表れている。

  • ドイツは完全に「脱中国」を目指すというわけではなく、あくまでも中国とは距離感を持ちながらも是々非々で付き合っていくということなのだと思われる。その先行例として日本を意識し、日本から学ぼうとしている。これまでは「日本化」というのは蔑みのニュアンスさえあったが、今や「日本化」は、中国との付き合い方のモデルになっている。そういう背景があるから、記事にあるような「ドイツからみれば穏健派の岸田政権が発足したことも手を組みやすくなった理由」というのはちょっと合点がいかない。安倍政権の時から中国との付き合いは経済安保が中心だった。

  • 中国はロシアとウクライナの間の仲介外交を進めようとするだろうが、ロシアには中国の仲介案、とりわけ現時点での停戦を固定化させるというインセンティブはあるが、ウクライナはそのまま中国の仲介案を飲めるような状況にはない。ウクライナが今後の西側からの武器供与や継戦能力に不安があったり、国内に厭戦気分が蔓延しているという状況であれば別だが、今のところそういう状況にはない。中国がよほど大きなオファーをすれば別だろうが、それも簡単な話ではない。サウジとイランの仲介に成功したのは、中国の力というよりも、サウジとイランに国交正常化の機運があったから。ロシアとウクライナの間にそれは、今のところない。

  • 確かにDUV露光装置も軍事用に使われる半導体を製造するのに使われるが、問題は「軍事用」が何を指すのか、ということが明確ではない、ということだろう。アメリカの対中半導体輸出規制の強化は「安全保障」を目的に「先端半導体(線幅14-16ナノ以下)」を規制するというものであり、こうした先端半導体は軍事用にも用いられるAIやスパコン、量子技術などに使えるものではあるが、全ての兵器(ミサイルや戦車など汎用半導体でも動くものはたくさんある)を対象にしているわけではない。

3月17日

  • う〜ん、アメリカの圧力はあったし、韓国も強い意思を持って動いたことは確か。しかし、それが「ここぞという時の韓国の外交力」という話なのだろうか。韓国は何かを成し遂げようとするときの馬力はあるが、問題はそれをどの方向に持っていくかということがバラバラであること。特に政権交代によって、あらゆる問題を抱えながらちゃぶ台返しをすることも厭わないという「外交力」になる。馬力があっても、使い道を間違えるととんでもないことになる。