【永浜利広】投稿一覧

永浜利広
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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会常務理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。著書に『MMTとケインズ経済学』(ビジネス教育出版社)のほか、『エコノミストが教える経済指標の本当の使い方』(平凡社ビジネス)など。
【注目するニュース分野】マクロ経済

あしぎん総合研究所客員研究員、跡見学園女子大学マネジメント学部非常勤講師を兼務。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会常務理事。専門は経済統計、マクロ経済分析。著書に『MMTとケインズ経済学』(ビジネス教育出版社)のほか、『エコノミストが教える経済指標の本当の使い方』(平凡社ビジネス)など。 【注目するニュース分野】マクロ経済

2022年

  • 季節調整値で見れば、失業者は前月から▲5万人減ってますが、就業者はそれ以上の▲7万人減ってますから、10月の雇用環境は悪化したと見るべきでしょう。
    背景には、非労働力人口が前月から+16万人も増えたことがあり、10月の失業率は若干低下しましたが、それは労働参加率の低下に伴う悪い失業率低下と言えるでしょう。
    ただ一方で、雇用の先行指標である新規求人倍率は小幅上昇してますので、労働力調査が示す10月の雇用環境悪化は一時的なものであると推察されます。

  • こうした動きからもわかる通り、総合経済対策の「目玉」とされる電気・ガス代等の負担軽減措置は、何もしなければさらに増える家計の負担を政府が肩代わりするというものにすぎません。
    マクロ経済的な効果についても、家計の負担増による消費の落ち込みを抑制して、本来ならもっと拡大するはずの需給不足を維持するということに過ぎないでしょう。
    このため、本当の意味で電気・ガス料金の負担軽減の効果を期待するのであれば、それは原発再稼働に加えて、省エネ関連の投資の促進によってどの程度日本全体のエネルギー効率を高められるかにかかっているといえるでしょう。

  • 財・サービスで分けてみると、財価格は前月の前年比+7%から+7.7%に伸びが加速して海外にそん色ないぐらい上がっていますが、サービス価格は前月同+0.8%だったのに今月は同+0.7%に減速しており、海外とのインフレ率の差はサービス価格であることが改めて確認されます。
    やはり海外経済は需給ひっ迫により財の物価に加えて人件費の上昇を通じたサービス価格も上がっていますが、日本ではコストプッシュで財の価格は上がっても、依然として需要不足なので賃金上昇を通じたサービス価格が上がりにくいことがあるでしょう。

  • 日本の賃金が上がらないのは生産性が低いからとよく言われますが、マクロ的に見れば、過剰貯蓄で家計も企業もあまりお金使いたがらなく、肝心の政府も均衡財政主義のため、生産性の分子となる付加価値が上がりにくいからだと思います。
    つまり、賃金=生産性が上がらないのは、供給側の要因というよりも需要側の要因が大きいと思います。

  • 試合中に為替相場をチェックしていた方々ならわかると思いますが、日本勝利のタイミングで為替が急速にドル安円高に振れて驚きました。
    ただこれは、たまたま同じタイミングでミシガン消費者センチメントが公表され、期待インフレ率が予想以上に下がったことによる米利上げ観測の後退からだと推察されます。
    その傍証として、米長期金利も下がりましたので。

  • このように、日本政府はこれまで財政健全化目標としてプライマリーバランスの黒字化や債務残高対GDP比の安定的引き下げを掲げてきています。
    しかし、コロナショック前までは財政リスクが最も高いイタリアがPB黒字だったことや、海外の主流派経済学者や米財務省が財政健全性を図る指標の重要性を『政府債務残高/GDP』から『政府純利払い費/GDP』にシフトしつつあること等からすれば、日本の財政健全化目標も国際標準に近づけていくことが必要でしょう。
    なお、G7諸国の『政府純利払い費/GDP』を比較すると、OECDの2022年見通しベースで日本はカナダ、ドイツに次ぐ三番目に低い水準にあります。

  • ちなみに、実質的な日本の経済規模を見るには、交易条件の変化を加えたGDIで見るべきであり、GDPだけを見ていると、現在の日本経済を過大評価してしまうでしょう。
    一方、GNIは第1次所得収支も含むため、国民全体の所得状況を見る指標となります。
    しかし、第1次所得収支は海外で所得が生じた時点で計上されてしまい、海外で得た所得を日本国内に還流させなくてもGNIに含まれてしまいます。
    純粋な日本国内の所得の増加を知るには、GNIよりもGDIで見る方が正確といえるでしょう。

  • ちなみに、各国国債の信認を左右するとされる4指標について比較をすると、日本は政府純債務/GDPだけでは最もリスクが高くなりますが、対外純資産/GDPと政府債務対外債務比率が断トツ一位、経常収支/GDPがドイツに次いで2位と圧倒的にリスクが低いです。
    一方の英国は、政府純債務/GDPと政府債務対外債務比率はG7中3番目に低いものの、基軸通貨国米国に次ぐ経常赤字/GDPが大きい国である上、米国とフランスに次ぐ対外純債務/GDPが高くなっています。

  • 日時物価指数を見るまでもなく、東京都区部の10月分CPIを財だけで見れば前年比+6.9%も上昇しています。
    一方のサービスは同+0.8%しか上昇していません。
    むしろ財よりもサービスの方のCPI上昇率が高い米国とは真逆の状況となっています。
    やはり背景には、米国ではディマンドプルの様相が強いインフレ率加速に対して、日本ではコストプッシュによって、需給がひっ迫していないのに物価が上がっている状況です。
    こうした状況では、日銀の金融政策が出口に向かえないのも致し方ないでしょう。

  • 最大の下押し要因は実質輸入の増加であり、民間在庫もマイナス寄与なので、国内需要がそこまで悪くないというとらえ方をすれば、ヘッドラインの数字を見て額面通り悲観することもないという見方もできます。
    しかし、構造的にはそれだけ輸入に頼らざるを得ない輸入依存度の高さが露呈されたとも見れます。
    いずれにしても、国内自給率の向上が課題というのが良くわかる結果と言えるでしょう。