【高橋祥子】投稿一覧

高橋祥子
高橋祥子

高橋祥子

ジーンクエスト 取締役ファウンダー

ジーンクエスト 取締役ファウンダー

大阪府出身。京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月、ユーグレナの執行役員に就任。
【注目するニュース分野】バイオテクノロジー、ゲノム解析

大阪府出身。京都大学農学部卒業。2013年6月、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍中にジーンクエストを起業。2015年3月に博士課程修了。個人向けに疾患リスクや体質などに関する遺伝子情報を伝えるゲノム解析サービスを行う。2018年4月、ユーグレナの執行役員に就任。
【注目するニュース分野】バイオテクノロジー、ゲノム解析

2023年

  • 昨年12月にイーロン・マスク氏率いるニューラリンクの進捗発表会があり、半年以内に「脳に電極」埋め込みの治験を開始する予定を発表していました。人間の脳とコンピューターをつないで情報をやりとりするデバイス(BMI)により、例えば視力を失った人の視力回復や、麻痺に苦しむ人の運動機能の回復、障害を持つ人が手を使わずに脳の信号でコミュニケーションできるようになるなど期待されています。一方で、脳へのチップの埋め込みの実験対象としたサルが死亡したことで動物愛護団体から批判を受けていましたが、結局安全性が証明できないと活用できないため、その点をヒト試験でいかにクリアしていくのか、今後の注目です。

  • ゲノムから将来の病気のリスクなど未来だけでなく、祖先ルーツなど過去のことが明らかになることは面白いです。ジーンクエストの遺伝子祖先解析でも、ミトコンドリアDNAを調べることで、およそ19万年前に誕生した現生人類の共通祖先が、どのような経路を辿って日本列島に到達したのか、という自身のルーツを探ることもできます。欧米では祖先解析を目的に遺伝子解析サービスを利用する人も多く人気を集めていますが、例えば日本人の解析を行うと、遺伝子解析からおおよそその人がどの地方出身なのかを推定することができます。記事のような研究が進むことで日本の起源についてより深く理解できるようになるのは興味深いです。

  • 基本的にヒトなどの動物は自然環境よりも体温を高く保ってウイルスなどの病原体から身を守ってきたものの、ウイルスやその他微生物の方がヒトよりも進化のスピードが速いので温暖化により耐熱性を獲得したことで新たな感染症の脅威になると考えられています。温暖化が今後の感染症のリスクを高める要因はそれだけでなく、温暖化が進み南極の永久凍土が溶けるとその中にも大量の未知のウイルスが放出されるとも予想されています。地球環境を守ることは必ずしも利他的な姿勢ではなく、自分達の身を守ることに直結するのだと改めて感じます。

  • 腸内細菌の解析コストも今後下がっていくと、以下の分野でより活用が増えると期待できます。
    ・健康管理:記事のように、腸内細菌の解析により個人の健康状態を把握し、栄養や生活習慣の改善を図ることができます。腸内細菌への影響を考慮した食品や栄養補助食品も今後需要が増えると思います。
    ・医療分野:特定の疾患に対して、腸内細菌を調整することで治療を行うことも研究されています。例えば、炎症性腸疾患や自己免疫疾患に対して、腸内細菌療法が有効であると報告されています。
    ・環境保全:腸内細菌は、環境汚染などにも影響されることも知られています。腸内細菌の研究が進むことで、環境保全にも貢献する可能性が考えられます。

  • 体験談ですが、夫が育休を取得した際に、育休中に業務をするように企業側から指示されたことに大変驚きました。そもそも、女性の労働参画率が上がっても、男性の育児参加率が上がらなければ育児の担い手が減るだけなので少子化になるのは当然です。なので、日本の未来のために企業が取り組むべきことは、長時間労働を従業員から搾取することではなく、男女ともに育休の取得率を上げたとしても事業が回るよう生産性を高める仕組みを作ることだと思います。国がいくら育児支援をしたとしても長時間労働を強いる国では少子化を止めることは難しいため、企業・働き方も一体となった施策が必要だと感じます。

  • この国際サミットでは、専門家が集まってヒトゲノム編集について科学面、倫理面、ガバナンス面で課題を数日間議論した結果「現時点では容認できない」という結論でした。「容認できない」のところは予想通りですが「現時点では」という点がポイントだと思います。まだ安全なヒトゲノム編集の方法がない状況であるから、という理由が大きく、つまり研究・技術が進めば将来的に見解は変わり得るということだと思います。
    今後も技術の進歩とともに定期的に開催されて見解は変わっていく可能性のあるもので、様々な学会や場で議論されていく必要のある人類にとって重要トピックだと思いますので、今後も動向を注視していきたいです。

  • 2011年頃の研究で、老化細胞を排除できるマウスを作成したところ加齢に伴う病態の発症が遅れることが明らかとなり、老化細胞を除去することで健康寿命を延ばすことができる可能性が示され、ここ10年程は老化細胞の研究が増えてきています。まだ解明されていないことも多く、ヒトで老化細胞の存在量をリアルタイムで計測できる系がないこともあり、ヒトの身体で老化細胞の除去がどこまで直接疾患症状に対して効果があるのかは研究途上でまだヒトを対象とした試験では結果が出ていません。が、ホットな領域であることは間違いないので今後も注目しています。

  • 万能細胞の研究と一言にいっても①万能細胞を活用した基礎研究、②病態を再現した万能細胞を使った創薬研究、③万能細胞から分化した細胞を患者に投与する再生医療、と用途があり、特に①の基礎研究や②の創薬研究では多くの研究成果が出ている状況です。本記事の「実用化」はまさにこれから成果が出てくるであろう③臨床応用の分野であり、この分野は①②以上に安全性確認に時間を要し、巨額な投資が必要です。一方で、今後承認されていくと非常に意義があり伸びる領域です。実施されている治験の数も増え、効率良く高品質の細胞を大量に培養する技術の開発も進んでいますので、有効性も認められる事例がでるよう今後の展開に期待します。

  • 遺伝子情報などで個人に最適化された医療(プレシジョン・メディスン)は提唱されて久しいですが、食・栄養についても、個人の遺伝子・生体情報に合わせたプレシジョン・ニュートリションの研究が進められています。というのも、ヒトの遺伝子多型や腸内細菌叢のゲノム解析はこれまでコストが高かったため研究領域が限られてきましたが、近年解析コストの下落もあり、よりライフスタイルに近い食・栄養、運動、睡眠などの領域も生体情報の活用が広がっている背景があります。精密栄養についてまだ応用できる知見が少ないのは、まだ大規模な研究が多くはなされていないからという状況なので、記事のような研究が進むことを期待しています。

  • 一般的に自然の生態系では環境や資源が有限なゼロサムゲームなので、放流したからといって魚が増えるわけではないとの本研究結果も納得できる気がします。また、生物の生態系という点では、絶滅危惧種では遺伝的な多様性が低く、逆も然りで遺伝的多様性が低い種は絶滅しやすい性質があります。放流する稚魚は基本的に遺伝的多様性が低いため、自然の生態系の中に入れるには遺伝的背景も考慮に入れる必要がありそうです。
    一方で、放流をやめたからといって何もせずに自然に漁獲量が増えるわけではないため、ではどのような介入の仕方(放流する場合は考慮すべき遺伝的背景や量など)であれば良いのかについても研究が進むことを期待します。