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スーパー等店頭物価でみる日経ナウキャスト日次物価指数は前年比6.1%増で、期待される5%の賃上げでも心もとない。共働きが増えたといっても妻が非正規の場合が多い。最低賃金引上げ等により時給は上昇しているが、総労働時間が減少し年収は上がっていない。背景にあるのは就業調整(手取りが減らないよう、税や社会保険料負担が発生しない年収額以内に就労時間を調整すること)の影響。NRI調査で、就業調整するパート妻の78.8%が「手取りが減らないなら今より多く働きたい」と回答した。もっと働きたい、働ける人の就労を抑制する現状の解消は、本人と世帯の所得増に直結し、物価高への世帯対応力を高めるのに有効で急務ではないか
【武田佳奈】投稿一覧
2022年
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時短勤務が長期化することによる本人のキャリア構築の遅れ、周囲の負担拡大、深刻な人手不足などを課題として、子育てをしながらでもフルタイム勤務に戻りやすい環境整備を進める企業も多く見られるようになった。時短勤務という働き方があること自体は有効で、時短勤務だとキャリア構築ができないとも思わないが、企業の課題認識や動きと逆行するようにも見える時短勤務者への現金給付は課題も多いように思う。少なくとも時短勤務を必要以上に長期化させることのないよう給付期間の工夫は必須だろう。時短せずとも過度な負担なく働き続けられるための支援(例えば、保育や家事の支援充実、テレワークやフレックス制適用等)にこそ力を入れたい。
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労働力不足解消の観点からは単に賃金を引き上げればよいわけでないのが日本の実態です。最低賃金の影響を受けやすいパートタイム労働者(以下パート)の時給はこの10年で約20%上昇しているのに、年収は4%弱とほとんど上昇していません。時給上昇の一方で、一人あたりの労働時間が減少しているためです。パートの6割を占める有配偶女性が税や社会保険料の支払いが発生する「年収の壁」を超えないよう労働時間を調整していることが影響しています。賃金上昇が必ずしも所得増に繋がらないどころか、労働力不足にもかかわらず1人あたりの労働時間を短くしてしまう。最低賃金引上げの目的を明確にする上でもこの実態と向き合う必要があります
武田佳奈
野村総合研究所未来創発センター エキスパート研究員
野村総合研究所未来創発センター エキスパート研究員
2004年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同年野村総合研究所入社。官公庁の政策立案支援、民間企業の事業戦略立案支援などに従事し、2018年4月より現職。主に日本が抱える雇用・就労問題について調査研究および社会・政策提言を行う。著書に「フルキャリマネジメント-子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得」(東洋経済新報社)など。
【注目するニュース分野】働き方、就労・キャリア支援、少子化克服
2004年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同年野村総合研究所入社。官公庁の政策立案支援、民間企業の事業戦略立案支援などに従事し、2018年4月より現職。主に日本が抱える雇用・就労問題について調査研究および社会・政策提言を行う。著書に「フルキャリマネジメント-子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得」(東洋経済新報社)など。
【注目するニュース分野】働き方、就労・キャリア支援、少子化克服