【武田佳奈】投稿一覧

武田佳奈
武田佳奈

武田佳奈

野村総合研究所未来創発センター エキスパート研究員

野村総合研究所未来創発センター エキスパート研究員

2004年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同年野村総合研究所入社。官公庁の政策立案支援、民間企業の事業戦略立案支援などに従事し、2018年4月より現職。主に日本が抱える雇用・就労問題について調査研究および社会・政策提言を行う。著書に「フルキャリマネジメント-子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得」(東洋経済新報社)など。
【注目するニュース分野】働き方、就労・キャリア支援、少子化克服

2004年、慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。同年野村総合研究所入社。官公庁の政策立案支援、民間企業の事業戦略立案支援などに従事し、2018年4月より現職。主に日本が抱える雇用・就労問題について調査研究および社会・政策提言を行う。著書に「フルキャリマネジメント-子育てしながら働く部下を持つマネジャーの心得」(東洋経済新報社)など。
【注目するニュース分野】働き方、就労・キャリア支援、少子化克服

2022年

  • スーパー等店頭物価でみる日経ナウキャスト日次物価指数は前年比6.1%増で、期待される5%の賃上げでも心もとない。共働きが増えたといっても妻が非正規の場合が多い。最低賃金引上げ等により時給は上昇しているが、総労働時間が減少し年収は上がっていない。背景にあるのは就業調整(手取りが減らないよう、税や社会保険料負担が発生しない年収額以内に就労時間を調整すること)の影響。NRI調査で、就業調整するパート妻の78.8%が「手取りが減らないなら今より多く働きたい」と回答した。もっと働きたい、働ける人の就労を抑制する現状の解消は、本人と世帯の所得増に直結し、物価高への世帯対応力を高めるのに有効で急務ではないか

  • 共働きが増えたといっても妻は非正規という世帯がいまだに多く、正社員(夫)の5%賃上げが実現しても妻の収入は「壁」が意識されて上がりにくいため、世帯年収の上昇率は5%に達しない。消費者物価は前年同月比で3.6%上昇しているが、頻繁に購入する品目に限ると同7.9%増で、物価高騰への世帯対応力を高めるには非正規就労者の収入増も待ったなしだ。また、NRI調査でも「壁」を意識して働くパート妻の約6割が「時給の上昇で以前より働ける時間が短くなった」と回答。年収の「壁」は労働力不足も加速させている。政府も制度再構築を掲げるが、物価高対策と労働力確保の両方が急がれる中、スピード感を持った対応を期待したい。

  • 時短勤務が長期化することによる本人のキャリア構築の遅れ、周囲の負担拡大、深刻な人手不足などを課題として、子育てをしながらでもフルタイム勤務に戻りやすい環境整備を進める企業も多く見られるようになった。時短勤務という働き方があること自体は有効で、時短勤務だとキャリア構築ができないとも思わないが、企業の課題認識や動きと逆行するようにも見える時短勤務者への現金給付は課題も多いように思う。少なくとも時短勤務を必要以上に長期化させることのないよう給付期間の工夫は必須だろう。時短せずとも過度な負担なく働き続けられるための支援(例えば、保育や家事の支援充実、テレワークやフレックス制適用等)にこそ力を入れたい。

  • 労働力不足解消の観点からは単に賃金を引き上げればよいわけでないのが日本の実態です。最低賃金の影響を受けやすいパートタイム労働者の時給はこの10年で約20%上昇しているのに、年収は4%弱とほとんど上昇していません。時給上昇の一方で、一人あたりの労働時間が減少しているためです。パートの6割を占める有配偶女性が税や社会保険料の支払いが発生する「年収の壁」を超えないよう労働時間を調整していることが影響しています。賃金上昇が必ずしも所得増に繋がらないどころか、労働力不足にもかかわらず1人あたりの労働時間を短くしてしまう。最低賃金引上げの目的を明確にする上でもこの実態と向き合う必要があります。(再掲)

  • 労働力不足解消の観点からは単に賃金を引き上げればよいわけでないのが日本の実態です。最低賃金の影響を受けやすいパートタイム労働者(以下パート)の時給はこの10年で約20%上昇しているのに、年収は4%弱とほとんど上昇していません。時給上昇の一方で、一人あたりの労働時間が減少しているためです。パートの6割を占める有配偶女性が税や社会保険料の支払いが発生する「年収の壁」を超えないよう労働時間を調整していることが影響しています。賃金上昇が必ずしも所得増に繋がらないどころか、労働力不足にもかかわらず1人あたりの労働時間を短くしてしまう。最低賃金引上げの目的を明確にする上でもこの実態と向き合う必要があります

  • 子どもの問題に新組織を立ち上げてしっかり取り組むことについては大賛成ですが、子どもの問題だけに取り組むのではなく、これから子どもを持とうとする世代や現在子育て中の世代が、自身の子育てと子どもの将来に希望を持つことができる環境を広く用意することも重要です。そのためには、岸田政権が掲げる新しい資本主義の実現に向け重視されている「女性の経済的自立の実現」も必須です。NRIの調査では、もう一人子どもを持ちたいとする女性がその実現の課題として挙げたものの中で3番目に多かったのは、「自身が仕事を続けることできるか/再開することができるか」でした。人への投資戦略とも連携して、実効性のある対策を期待します。

  • NRIがコロナ禍以降、推計し発表している「実質的失業者」の人数も、最新の2022年3月末の調査では約106万人となり、2021年2月の約147万人、2021年5月の約132万人から減少傾向にあることからも雇用環境の改善がみられます。一方で、2030年には1千万人以上、労働力全体の15%程度の人手が不足すると予測しています。かつてのヨーロッパでは感染症ペストの大流行の収束後、労働力不足が深刻化し、労働者の待遇改善につながった事例があります。岸田政権は「成長と分配の好循環」による分厚い中間層の復活を掲げており、日本においても一層深刻化する人手不足を、社会経済の転換に繋げることが期待されます。

  • 人手不足を抱えている企業の割合は、すでにコロナ前の水準まで上昇していますから、若手人材の確保のために初任給を引き上げざるを得ないのが実情でしょう。一方で、厚生労働省の「賃金構造基本調査統計」で年齢階級別の年収の推移をみると、中高年層の年収が急下落しています。ライフイベントによる支出増と連動するかのように収入が一社の中で伸びてきた以前の現役世代の姿はもう期待できません。労働者から見れば、ライフイベントに応じて、転職も含めた自発的なキャリア設計、人生設計の重要性が増しているということでしょう。

  • 男女の賃金差を開示させることを通じて期待することは、なぜ女性の賃金が男性と比べて低いのかについての本質的な検討が進むこと、例えば、賃金格差の背景にある勤続年数や就いている役職の男女間の差が必要以上に生まれないようにするために、何が求められ、できるのかといった具体的な検討と改善が進むことだと思います。数字の高低だけで判断せず、本質的な検討と対策をどのように行っているかまで見て、企業の姿勢を評価していくことが我々に求められていると思います。この手の取組は効果が出るまでに時間がかかるのでプロセスも評価されるべきだと思います。

  • 私事ですが、第一子出産直後はガラケーでまだ誰かと気軽にやりとりできなかったのが、第二子出産直後は、スマホの登場で、育児中のわずかなすき間時間でもSNS等で誰かと気軽にやりとりができたり、相談したり、されたりできました。勿論、育児経験の差もあったと思いますが、身の回りの技術・環境の進歩が24時間体制の出産直後に生じやすい孤立感をこんなに和らげるのかと驚いたことを思い出します。先日のイーロン・マスク氏の発言で改めて注目された少子化の克服には、子育て中の孤立感の解消も重要な課題のひとつでしょう。この記事を読んで、さらなる技術の進歩と実装で、多くの子育て世代も支えて欲しいと改めて思います。