【為末大】投稿一覧

為末大
為末大

為末大

元陸上選手/Deportare Partners代表

元陸上選手/Deportare Partners代表

スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得。オリンピックに3度出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。東京大学 未来社会協創推進本部 アドバイザリーボード委員。
【注目するニュース分野】東京五輪、教育、哲学・心理学

スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダルを獲得。オリンピックに3度出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。東京大学 未来社会協創推進本部 アドバイザリーボード委員。
【注目するニュース分野】東京五輪、教育、哲学・心理学

2023年

  • 地方で育ち、都会で生活し、海外で試合をしてきた身からすると、各場所によって共有されるコンテクストの違いに驚きます。地方の文脈では「ノリが悪い」は排除の理由になります。特に都会の人間に対しコンプレックスがある場合、スナックでカラオケに行く、一緒に羽目を外すは仲間入りするために大変重要です。それは都会から見ると眉を顰めるような悪ノリも少なくありません。ノリがあまりにも違いすぎて、世代も地方と都市部も交差しないわけです。
    都会の振る舞いと、地方の振る舞い、日本の振る舞いと、西洋国の振る舞い。私にはこれらが入り混じった事象に見えます。

  • 過去の症例で興味深いものは、生後数ヶ月で全盲になってしまった男性に角膜を移植した手術です。男性は視力を取り戻しましたが、最初は触ってからでないとそれが見えませんでした。触覚で世界を知覚していたため、まず触らないと認識できなかっためです。一番驚かれたのは、月が最初認識できなかったことです。月は触ったことがなかったからです。
    私たちが今何かをイメージできるのは過去にそれを身体で経験しているからです。私は最終的にこの「個人の経験の履歴」はブラックボックスになると思います。BMIがもし普及すると、身体で世界を知覚することの重要性がむしろ高まると思います。

  • リベラルと保守というよりも、左右関係なくロマンチストとリアリストで捉えた方が最近の政治は理解しやすいと感じています。

  • 民主国家に対してのAIの軍事利用でインパクトが大きいのは思想操作だと思います。ケンブリッジアナリティカで示されたように、人間の思想はそれほど強固なものではなく操作可能です。また、ディープフェイクが登場して、偽物と真実の境目がわからなくなると、より深刻になります。一度何かを信じ込んでしまった人を引き戻すことの難しさは、陰謀論が飛び交う現在では多くの人が経験しています。来年は大統領選挙ですが、AIとディープフェイクが飛び交うおそらく世界でも初めての選挙になり、どのような危険があるかを私たちは目の当たりにするのかもしれません。

  • テレビに出演してきた時、大変聡明な政治家の方に「移民についてはどうお考えですか」と尋ねたらはぐらかされました。番組の後に「とにかく移民というキーワードだけは使えないんです」とおっしゃっていました。すでに日本に二百万人を超える外国人の方が住んでいる時でした。日本ではある特定の単語に対し強い反応を示すために、違う言葉で言い換えるということがよくあります。しかし、そのことが直接議論することを難しくし、事態を複雑にします。
    我々が「移民」を正面から議論しないできた結果、在住外国人の方に迷惑をかけ、世界中で日本の評判を悪くしています。やるにしてもやらないにしても、直接議論していくことが大事だと思います。

  • 新しい概念が出てくるたびに日本語にして考えるようにしています。現地語のままであれば、具体的には何のことを指しているのかわからないためです。メタバースもweb3もまだ腑に落ちる日本語が見つかっていないために、これがなんなのか私自身まだわかっていません。

  • 日本においてはどうしても結婚に家族が絡んでくるので、家族の情報が入ると飛躍的に相性を合わせる精度がよくなると思っています。今のところあまり見かけたことがないですが、それを組み込むことが難しいのでしょうか?例えば親の価値観が少しでもわかる程度でも参考になると思います。

  • 諦めるとは仏教由来の言葉で元々は「明らめる」でした。明らかにしてあるがままに見ると、こだわっていたものは実はただの執着であったと気づきます。このような概念は海外の方に伝えてもとにかくわかりにくいと言われますが、何かを通して伝えるとスッと伝わることがあります。彼女が伝えていたのは掃除を通じた「禅」なのではないかと思います。

  • テレビにここ十年ぐらい出演していますが、明らかにこの数年でターゲットを10-30代に変えた番組が出てきました。やはりプロで番組を作っている人たちの面白さは突き抜けています。ただ今後は「テレビ」と呼んでいるものが、電波を指すのかコンテンツを指すのかが問われていくと思います。ネットが発展することで電波の優位性はどんどん失われています。コンテンツに絞り込み、デジタルも駆使すると世界に出ていくこともできると思います。

  • 「日常会話」は重要な要素ではないかと思います。日常的に交わされる会話の中に価値観のずれがあると(女性は家にいるべきだなど)、いくら生活費が安く、自然があっても人はストレスを感じます。しかも、こういった日常会話は意地悪で行なっているのではなく全く無意識に、時には善意で行われたりします。だから余計に抵抗できず無力に感じます。
    東京に限らず価値観のアップデートができているところに人は集まっていき、集まればさらにその価値観が推し進められる。外形的なものではなくどんな価値観なのかが私は重要な要素だと思っています。