【風早隆弘】投稿一覧

風早隆弘
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クレディ・スイス証券 株式調査部 株式調査統括部長

クレディ・スイス証券 株式調査部 株式調査統括部長

15年以上にわたり小売りセクターの調査・分析に従事。2000年に伊勢丹(現三越伊勢丹)に入社、その後、野村証券にてアナリストとして小売りセクターのカバレッジを開始。09年9月よりドイツ証券にて小売りセクターシニアアナリストを務めた後、19年10月よりクレディ・スイス証券株式調査統括部長兼マネージングディレクター
【注目するニュース分野】消費、小売り、Eコマース

15年以上にわたり小売りセクターの調査・分析に従事。2000年に伊勢丹(現三越伊勢丹)に入社、その後、野村証券にてアナリストとして小売りセクターのカバレッジを開始。09年9月よりドイツ証券にて小売りセクターシニアアナリストを務めた後、19年10月よりクレディ・スイス証券株式調査統括部長兼マネージングディレクター
【注目するニュース分野】消費、小売り、Eコマース

2023年

  • 1月31日に商業動態統計の12月の速報値が発表になりました。22年の百貨店の売上高は2年連続で増加し5兆5,070億円と久しぶりに5 兆円台に回復しました。しかし、消費者の購買行動の多様化もあり、00年の10兆114億円、10年の6兆8,418億円からは減少したままです。一方で、店舗の閉店など業態の新陳代謝が、供給過多の解消をもたらし、業界の収益環境の安定化につながるとすれば、業界全体にとって歓迎すべき流れともいうことができます。百貨店協会によれば、百貨店の店舗数と売場面積は、08年末280店舗、6,818,712平米から22年末には185店舗、4,840,472平米まで減少しています。

  • ちょうど、電子版の別の記事で「アスクルに学べ 物流危機克服、急務な荷主の意識改革」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC254AA0V20C23A1000000/ )がありましたが、記事を読んで物流危機の深刻さを実感しました。小売りでは日本のEC市場規模はすでに10兆円を超えていますが、当社では2023年にはスーパーの市場規模を上回り、主要な業態では小売りの市場シェアで1位になるとみています。人口が減り続ける一方で、荷物は増え続けるという現状の解決には、1社だけの取り組みではどうにもならないように思います。一方でこうした危機があるからこそ、新しい事業機会が生まれるとも考えることができますし、それに挑戦する企業や人材を積極的に応援できるシステム構築が重要になりそうです。

  • 物価上昇が当たり前の世の中になりつつある中で、賃金引上げの議論が本格化しています。アナリストとしてファーストリテイリングを担当していますが、ファーストリテイリングの報酬改定の発表以来、海外投資家の方からも、コストプッシュによる物価上昇から、賃金上昇を伴う物価上昇に向かうの可能性について、問い合わせを受けることが多くなりました。物価上昇を個別企業などミクロでみると、価格転嫁力で、その結果に大きな差が見られることを踏まえると、賃金上昇も、個別企業や働いている人の実力によって大きな差が見られ、それが許容される時代になっていきそうです。

  • 人口減少が進む中で、消費者の購買チャネルが多様化しています。こうしたマクロ環境の変化で、百貨店の市場規模が縮小し、企業数や店舗数の適正化が進んでいると考えれば、消費者ニーズへの対応力を軸に、企業や店舗の淘汰が進むことは自然の流れと考えることも可能です。そして百貨店では、消費者ニーズへの対応で売上高が二極化しています。例えば、会社によれば、新宿伊勢丹本店の22年度の売上高はバブル期を超えて、過去最高を超える見通しとなっています。

  • 当社が中国で2022年10月に実施した調査によれば、2023年に海外旅行で行きたい国・地域の1位が日本となり (2位はタイ)、旅行先としての日本の人気の高さを再認識する内容になりました。中国政府の対応には不透明な部分もありますが、訪日外客は着実に戻ってくるということを前提に、そして、数年ぶりに戻ってくる訪日外客の方が、訪日を1度で終わらせるのではなく、リピーターになってもらうように、日本の魅力を高める努力を怠らないことが、世界的な海外旅行先の争奪戦で旅行者に日本が選ばれるためにはますます重要になりそうです。

  • 柳井正会長は、ファーストリテイリングは 小売業であり、サービス産業であり、情報産業であり、システム産業であり、またイノベーションカンパニーでもあるとした上で、目標は大きなアパレル企業になることではないと明言しています。人材は、企業の成長の要といわれます。人材の争奪戦が激しくなる中で、小売業界での背競べを超えた人事制度のアップデートは、ファーストリテイリングが掲げるビジョンとも整合性が取れたものともみてとれそうです。なお、記事にあるファーストリテイリングの国内で働く従業員の平均給与959万円は、単体の従業員の22年8月末時点での実績で、 国内ユニクロの平均給与を指しているものではありません。

2022年

  • 特売で消費者の支持が高まっても、企業が収益を拡大できないのであれば、どこかで無理がきてしまいます。1年をみると、多くの企業で無理な値引きを減らし、適正な価格で販売する動きがみられました。一方で、同じものなら安いものを買いたいというのが消費者の本音ですから、賢く消費するという意識は変わらないと思われます。この場合の経営行動は、気合と根性で無理をするのではなく、 筋肉質な構造を作り相対的な価格優位性を保つか、差別化された商品を生み出すか、になります。値引き合戦で企業の稼ぐ力が低下し、賃金も上がらない状況は避ける必要がありますが、コスト増が企業の新陳代謝を促しつつある点は、明るい兆しと言えそうです。

  • 新型コロナウイルスの感染症法上の分類が見直された場合、消費者が自ら判断し行動することをこれまで以上に促すことにつながります。足元では新型コロナウイルスの新規感染者の増加で、解熱鎮痛薬や総合感冒薬抗体検査キットの需要が増加しており、ドラッグストア各社の販売が好調です。経済産業省によれば、ドラッグストアの店舗数 は2014年末の13,069店舗から、2022年11月末 (速報値) 18,363店舗まで増加しました。 業態の飽和論も聞かれ始めたドラッグストア業界ですが、いざという時に身近に存在する小商圏の業態の重要性を改めて実感する機会になりそうです。

  • 新型コロナ感染拡大前の19年の訪日外客数は3,188万人、訪日外客による旅行消費額は4.8兆円となっていました。 そして 19年の年平均の為替レートは、1米ドル= 109.04円、 1 中国元=15.78円でした。訪日外客の回復に向けたベンチマークをまず19年にするとすれば、1米ドル=109.04円、1中国元 =15.78円より円高になるのかが、株式市場で意識される水準となりそうです。 なお、年平均の為替レートは15年の1米ドル=121.05 円から16年の1米ドル=108.70円と円高になりましたが、訪日外客数は1,974万人から 2,404万人へ増加しました。

  • 2019年の訪日外客旅行消費額 4.8兆円のうち、約35% の約1.7兆円が買物代です。また、消費税免税手続きを実施した人の割合 は54.9%にのぼっており、旅行者にとって使い勝手の良い免税手続きが、買物代の増加に貢献してきたと言われています。「悪貨は良貨を駆逐する」と言います。旅行者の利便性や満足度を高めるための制度のはずが悪用されると制度の見直しにつながるリスクがでてきます。11月22日の日本経済新聞は、政府・与党が訪日外国人に免税品を購入させて買い取り、消費税を免れるという不正行為を防ぐための対策の検討に入ったと報じています。