【白井さゆり】投稿一覧

白井さゆり
白井さゆり

白井さゆり

慶應義塾大学総合政策学部 教授

慶應義塾大学総合政策学部 教授

国際派エコノミスト。国際通貨基金(IMF)エコノミストや日銀審議委員を歴任。金融政策や国際金融に精通し、脱炭素・ESGに詳しい。多数の海外メディアに英語で情報発信し多くの国際会議で講演。パリ政治学院客員教授、アジア開発銀行研究所の客員研究員も務めた。2020-21年には英国のESGスチュワードシップサービス会社EOS at Federated Hermes上級顧問を兼任。米コロンビア大博士(経済学)。
【注目するニュース分野】金融政策、ESG投資・経営、国際経済

国際派エコノミスト。国際通貨基金(IMF)エコノミストや日銀審議委員を歴任。金融政策や国際金融に精通し、脱炭素・ESGに詳しい。多数の海外メディアに英語で情報発信し多くの国際会議で講演。パリ政治学院客員教授、アジア開発銀行研究所の客員研究員も務めた。2020-21年には英国のESGスチュワードシップサービス会社EOS at Federated Hermes上級顧問を兼任。米コロンビア大博士(経済学)。
【注目するニュース分野】金融政策、ESG投資・経営、国際経済

2023年

  • 欧州議会は、最近、銀行に対するバーゼル自己資本規制の中で、銀行による仮想資産の保有や仮想関連サービスの利用に関して、2024年12月末までの期間について、暫定措置として1250%のリスクウエイトを適用することに決めています。一般市民の資産や決算に深く関与し金融システムの重要なインフラの役割をもつ銀行の安全性を高めるための対応です。EUの執行行政機関である欧州委員会は2023年6月までに銀行による仮想資産のリスク管理を含む法案を用意する必要があり、この法案の成立には時間がかかるためそれまでのリスク軽減策として暫定的な対応を決めたようです。いよいよ世界の金融当局も対策に乗り出し始めました。

  • 共通通貨を導入したほうが、為替取引コストが減らせるため貿易・金融取引が活発になるという調査があります。しかし、ユーロの成立を振り返ってみると、当時の最強通貨であるドイツマルクがユーロ創設に加わったことがユーロの価値を支えユーロの利用をユーロ圏以外にも広げられた面があります。マクロ経済が安定し世界の投資家が信頼する国の通貨が加わることが、通貨の信用の維持に重要だと思います。独自の通貨がなくなると独自の金融政策ができなくなる点も検討が必要でしょう。金融包摂や弱者への支援が目的ですと、銀行口座をもてない人が多いと思いますので、電子マネーの普及やCDBCの発行などを検討することが考えられると思います。

  • グリーンウオッシングへの懸念は以前からEUが取り組んでいます。EUのサステナブルファイナンス戦略をみると、環境持続的な経済活動を分類するタクソノミーやグリーン金融商品のラベル、および情報開示の促進や第3者評価の義務付けなどを始めとして、可能な限りグリーンウオッシングを抑制し投資家の信頼を高めるといった表現が目につきます。グリーンウオッシングの抑制には包括的な対応が必要だとおもいます。また各国の規制当局間のグリーンの定義を始めある程度の理解の共有や対応策について議論を進めていくことが重要だと思います。脱炭素低炭素のための政策を各国が採用し始めており、対応が増えていきそうです。

  • 中国経済、昨年からのゼロコロナ対策、12月は規制緩和のもとでの感染症の急増で消費が低迷した。不動産投資の減少も大きく経済を下押しした。人の移動の解禁により世界では中国人観光客の訪問を期待する声が高まっているが、日本を始めコロナ感染を防止するために水際対策をしたい国も多いようです。日本では昨年秋から外国人訪問客が急速に増えており、コロナ前の4割程度になったようです。ただ韓国や台湾や米国からが中心で、コロナ危機前の状態に近づくには中国人観光客が増えることが期待されます。今年は欧米の景気減速が見込まれるので、中国で感染が収束すればその後の消費のリバウンドなど中国経済の拡大に期待する見方が増えている。

  • 2023年の欧米経済が昨年予想されたほど悪くならない可能性は、すでに私も感じていました。欧州は12月のPMI改定値が上方修正が多かったことや、天然ガスが予想したほど減らず配給制を導入しないで済んだことでドイツの製造業の経済活動が拡大していることなどから、マイナス成長を回避する可能性が出てきているからです。米国もPMIは製造業とサービス業ともに悪化していますが、消費者マインドが改善しており、それは雇用が拡大し実質所得も改善していることと関係があると思います。インフレ率は米国で最も早く、次いでユーロ圏で低下しますが、サービスインフレが高止まりするのでコアインフレの低下は遅れるでしょう。

  • 10-12月はロックダウンやその撤廃による感染拡大で、予想通りの景気減速になった。先日、中国の医療・経済の専門家との討論会に招待されオンラインで参加したが、ワクチン接種は増えていることや人の命の方が大事という判断でのゼロコロナ対策が正しかったとする中国在住の専門家の意見が多かった。ただし経済的コストは非常に大きく対応の緩和が必要になったとも指摘していた。今年春節で人の移動が増え感染拡大が広がることへの懸念を海外専門家が表明すると、タイミングは正しいとのことだった。人口が大きく医療現場の逼迫もあり世界でもかなり厳しい対応をしてきたのではないかとの私の指摘には、他国でも似た政策をしたとの意見でした

  • 企業物価の上昇率はむしろ高まりましたが、輸入物価をみると低下傾向が確認できます。とくに前月比でみると円ベースでも下落しています。これは世界的に原油などのコモディティ価格が下落していることに加え、ドルの全面高の修正が昨年10月~11月頃からみられ、日本円も超円安が修正されたことが影響しています。ただし昨年からのエネルギー価格の低下は、中国を含む世界的な景気減速も影響しているため、今年の4-6月期から中国の景気が強くリバウンドする場合、それがエネルギー需要を高める可能性には注意が必要かと思います。ただ今年は、全体としては徐々に物価上昇圧力は日本だけでなく世界的に低下していくとみています。

  • インフレ率の低下の主因は、やはりエネルギー価格の上昇率が大きく低下したことが原因ですが、サービス物価の上昇率が幾分低下したことも寄与したようです。ただし家賃を含む住宅関連はむしろ上昇率が高まっているため、今後の趨勢を見ていく必要があるでしょう。サービス価格は賃金と密接に連動する傾向があると見られており、インフレ率が2%に向けて低下する経路を確認していくにはもっとサービス価格の上昇率が低下していく必要があります。現時点ではエネルギーを除くサービス価格の上昇率は11月7%から12月には6.8%に低下しただけですので、まだ金融政策の見地からは安心できる状態にないように思います。

  • 今年2月から利上げ幅が12月の0.5%から0.25%に下がることは、かなり前から市場では予想されています。おそらく欧州の中央銀行も12月の0.5%から0.25%程度の利上げ幅に縮小していくとみられます。昨年の急速な利上げの影響が今年でてきますので、それを確認しながら小幅の利上げであとどれだけ必要かを模索していくでしょう。12月に示した見通し(中央値)ではあと3回0.25%ずつ利上げを行う可能性が伺えます。FEDにとって重要なのは、サービスインフレが着実に低下してくるのかどうか、賃金上昇率がもっと低下し物価を押し上げる圧力が減っていくかにあると思います。現在はまだ安心できる状況ではないようです

  • インフレ率は低下していくと見られますが、欧米の中銀が気にしているのは2%目標に向けてきちんと低下していく経路が確認できるかです。いずれも直近の見通しでは2%程度のインフレになるのは2025年頃との予想を示しています。エネルギーや食料のインフレ率は下がってきていますが、サービスなど粘着性の高いインフレが下がっていくかが課題です。米国では家賃上昇率が低下していくかどうかを、欧州では人手不足とインフレがまだ高く賃金引き上げ要請が強いためインフレ率が十分下がらないリスクを警戒しているようです。ただ利上げで景気後退しても、欧米の雇用が堅調なので大量解雇をともなう厳しい景気後退は避けられる見込みです。