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吉高まり
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三菱UFJリサーチ&コンサルティング フェロー(サステナビリティ)/東京大学教養学部 客員教授

三菱UFJリサーチ&コンサルティング フェロー(サステナビリティ)

IT企業、米国投資銀行等で勤務後、2000年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会を立ち上げる。 2020年5月より現職。三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券兼務。米ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院修了、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で博士(学術)取得。 東京大学客員教授を務める。
【注目するニュース分野】環境金融、気候変動、ESG投資・金融、SDGs

IT企業、米国投資銀行等で勤務後、2000年、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、クリーン・エネルギー・ファイナンス委員会を立ち上げる。 2020年5月より現職。三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券兼務。米ミシガン大学環境・サステナビリティ大学院修了、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で博士(学術)取得。 東京大学客員教授を務める。
【注目するニュース分野】環境金融、気候変動、ESG投資・金融、SDGs

2023年

  • 欧州委員会や政府中心に強化を進める欧州と比較し、米国の気候変動に関する企業の対応は政権によって変わるのではと質問をよく受ける。影響がないわけではないが、投資家や従業員、市民のアクションによる圧力が市場を動かす。トランプ政権下でもアマゾンは気候変動の国際会議COPに参加していた。同従業員団体が2019年の本格活動を始める数年前であり、アマゾンが気候変動に対応していなかったわけではない。しかし、ステークホルダーである従業員や社会の声が企業経営に影響を及ぼし、その対応如何が企業ブランドの棄損に繋がる。これが米国なのだ。アマゾンは物流のネットゼロ、20億ドルの気候ファンドの立ち上げなど対応した。

2022年

  • 原発に対する方針転換やGX移行債に注目が集まるGX実現に向けた基本方針は、気候変動対応のロードマップにおいては今後10年という中期的視点。東日本大震災から11年と同じ時間軸。その先の日本も見据えて迅速性が求められる。本方針での一つの注目は「地域視点」「中小企業」だ。方針の中で地域関連の言葉は30以上も使われている。上流がカーボンニュートラルになり単一炭素税になれば成り行きに任せればよいというわけにはいかない。その移行で産業構造の変化が起こり今のビジネスがそのままで済まないことが示唆されているのだ。地方、中小企業やスタートアップこそ、この変化を捉え、変革を起こす。それが日本経済の底力になる。

  • 欧州から約20年近い遅れでの本格スタートになる。英国が産業界に対して排出量取引か炭素税かを選択式とするプログラムを公表したのが2000年。カーボンプライシングへの対応はコストではなく先行投資だ。また、TCFDに基づき金融機関や企業の情報開示が充実したとしても、この炭素の価格付けがなければ財務的インパクトは測れない。欧米では排出量取引などにより企業の炭素の価格付けのデータがある。それに基づき、気候変動の財務価値を同業他社で比較し、投資判断において判断要素として組み込む素地はある。日本はこの遅れを取り戻し、日本企業の真の価値を国内外に知らしめていく必要がある。スピードアップを期待したい。

  • 未上場企業などに投資するブラックストーンが国連責任投資原則(PRI)に署名したのは昨年。だが、相当前から、ブラックストーンは、買収した企業などポートフォリオからの排出量を15%下げるプログラムを実施している。最近、再生可能エネルギー分野の企業に投融資を行うプラットフォームを立ち上げ、米大手機械メーカー、エマソン・エレクトリックの気候関連技術部門の株式55%を取得するなど投資を通じてESG投資を実践している。我が国でもGX(グリーントランスフォーメーション)を起こすプライベートエクイティやオルタナティブ投資に期待したい。

  • 来週から始まるCOP27。エジプトが議長国を務める今回のCOPは途上国向けの資金支援、損害賠償などが注目される。パリ協定では、先進国が途上国に対して年間1000億ドルの資金を支援する目標も掲げられているが、財政状況の苦しい先進国はこの目標を達成できていない。目標達成に官民資金を混ぜて積み上げようとする先進国はブレンドファイナンスの推進を掲げて久しいが、実態は芳しくない。これまでの国際協力の枠組みから大きくリスクを取れる仕組みではないからだ。先進国のトラジションばかりを声高に言えば途上国の反感を買う。日本はアジアに向けて資金支援をCOP26で宣言したが、次は、具体的な実装の仕組みが求められる。

  • 計82社から102億円の出資があり政府からの出資金合わせて204億円でスタートする同ファンドは、イノベーションを起こすベンチャー、中小企業の多い地方・地域の資金ニーズへの投融資支援が主眼とされている。脱炭素化に向けた技術やサービスは不確定なリスクが多く、金融機関は知見が少ないため、手がでにくい。このファンドは、出資、メザニンローン、債務保証など、通常地域金融機関がとりにくいリスクを取る仕組みあることで、ファンドの参加により、これらのノウハウを蓄積することができる。洋上風力、熱利用などの期待の大きい東北地域の金融機関の足腰が強くなることで同地域の脱炭素化が進むことが望まれる。

  • 脱炭素に資する事業促進のための官民ファンドがいよいよ始動した。政策動向や技術の確度に左右される、これらの事業に金融機関が投融資するには不確定なリスクを低減しなければならない。このファンドは、出資、メザニンローンもさることながら、債務保証の機能も有していることに注目したい。スタートアップのみならず、中小企業が新たに脱炭素に関わる事業をする際に、同ファンドが、金融機関の投融資リスク判断において補完的機能を果たすこと、さらに、国内に留まることなく、アジアなど日本のビジネスパートナー国での展開に期待したい。

  • 昨年のCOP26の初日のジェンダーデー。会議では女性がグリーン経済への公正な移行を主導することの必要性が語られ宣言が出された。世界の貧困層の70%を女性が占め気候変動の影響を過度に受ける。一方、化石燃料業界の従業員の女性はわずか22%、女性の声が反映されないことによる気候変動問題解決の遅延が懸念されている。多くの日本企業がカーボンニュートラル社会に向け様々な対策を開示し、それに基づき金融機関は投融資先の企業を評価し始めているが、人権と人的資本、ジェンダーギャップの解消もESG評価の要素として統合的に行われる。日本の企業に対しても気候変動とジェンダーの相互関係を明らかにする試みが始まっている。

  • 経済安全保障の強化は、SDGsも見据え、人間の安全保障を基底に、エネルギー安全保障、気候変動危機対応も同義である。複雑化したグローバルリスクが継続することを前提に、ハードでだけではなくソフトでの協力を強化とはいうものの、少子高齢化が進み、人材、資金が限定されてくる日本の将来において、レバレッジを効かせ効果の上がる国際協力を行っていくにはどうしたらよいのか。自身で京都議定書の下、気候ファイナンスに関与してきたが、そこには必ずサステナブルな視点が求められる。解は簡単に出せないが、フォアキャスティングではなく、バックキャスティングの視点であり方を考えたい。

  • サステナブルファイナンスにおいて自然資本や生物多様性の保全が対象になっている。海洋資源について、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が持続可能な海洋資源の利用を「ブルーエコノミー」として提唱し、金融にも関連する海洋採掘等のリスクについて報告書を公表した。国際金融公社も気候変動問題でのグリーンボンド原則を基にブルーに適合と考えられる資金使途の例をまとめたガイダンスを公表し、マルハニチロがブルーボンドの発行検討を公表している。ブルーカーボンはまだクレジットとして公式に認められていないが要注目だ。これらの民間の動きを支援する政策強化が求められる。