【柳良平】投稿一覧

柳良平
柳良平

柳良平

早稲田大学大学院会計研究科 客員教授

早稲田大学大学院会計研究科 客員教授

アビームコンサルティングエグゼクティブアドバイザー。東京証券取引所上場制度整備懇談会委員、日本生産性本部経営アカデミー「経営財務コース」委員長等を務める。京都大学博士(経済学)。米国公認管理会計士。銀行支店長、メーカーIR・財務部長、UBS証券エグゼクティブディレクター、エーザイ専務執行役CFO(最高財務責任者)等を経て現職。著書に「CFOポリシー第二版」(単著、中央経済社)、「ROEを超える企業価値創造」(共著、日本経済新聞出版)等。
【注目するニュース分野】財務戦略、企業価値、ESG会計

アビームコンサルティングエグゼクティブアドバイザー。東京証券取引所上場制度整備懇談会委員、日本生産性本部経営アカデミー「経営財務コース」委員長等を務める。京都大学博士(経済学)。米国公認管理会計士。銀行支店長、メーカーIR・財務部長、UBS証券エグゼクティブディレクター、エーザイ専務執行役CFO(最高財務責任者)等を経て現職。著書に「CFOポリシー第二版」(単著、中央経済社)、「ROEを超える企業価値創造」(共著、日本経済新聞出版)等。
【注目するニュース分野】財務戦略、企業価値、ESG会計

2022年

  • 四半期短信が近視眼経営になるとは学術的にも言い切れないし、開示の後退、投資家軽視に陥ってはならない。適時開示の充実は評価できる。そもそも業界特性も勘案して包括的に検討されるべき。例えば四半期短信と年度業績予想の関係性も重視すべきである。拙著”日本型脱予算経営”で述べたが、環境変化が激しく年度業績予想開示が困難な企業は非開示(証券会社等)あるいは四半期ローリング予想(HOYA等)が適しているが、その場合ラップタイムを刻む四半期短信は必須だろう。一方パイプラインに依拠した製薬会社は四半期短信よりもパイプラインの進捗報告が重視される。四半期短信の部分最適化ではなく、開示の全体最適を考えるべきだ。

  • PERの逆数の益回りは、クリーンサープラス関係と定常状態を仮定すると株主資本コスト(r)マイナス利益成長率(g)に近似する。私が2007-2022まで行った世界の投資家サーベイでもrは8%に近年収斂する。したがって現在のPER13倍程度はg=0%に近い。記事ではr=8%が要求されるからPERが上がりにくいとのニュアンスだが、gの議論が欠けている。2%の成長を市場が織り込めばPER理論値は17倍であり、g=3%ならPER20倍である。日本企業が成長戦略を訴求することが大切だろう。また、ESGの観点からも、良いESGはrを引き下げgを高めるインパクトが期待され、PER向上に繋がっていくと思料する。

  • 昨夜の早稲田大学会計ESG講座でも話題に。SBは”アリババが関連会社から除外された時点で保有する同社株式の再測定益”で約4兆円を計上。驚きの数字だ。簡単に言えば、デリバティブの現物決済のために一部アリババ株式を売却した結果、保有比率が20%超から15%弱まで低下してアリババは持分法適用会社から外れてSBの関連会社ではなくなってしまった。すると、いわば”簿価ベースの関連会社出資金が時価ベースの普通の投資有価証券に一瞬で化ける”ことになり、4兆円の会計上の利益を計上したが、現物株式をすべて売却して現金化した訳では無いのでキャッシュは動かない。個人投資家も持分法会計を理解して投資しているのだろうか。

  • 「歴史上最も重要な経済変革であり、現代における最大の投資機会だ」名門投資家が断言している。現在ESG投資は短期的には困難に直面しているが、長期的にはその可能性は揺らがないと私も信じている。九月にブラックロックのインパクト投資責任者が来日して、早稲田大学会計ESG講座で私の通訳で三時間授業を行ってくれたが、インパクト投資の三大原則として、material, additional, measurable を挙げていた。特に日本企業にとっての鍵はmeasurable ではないか。つまりESGの定量化である。この観点から、柳モデルとデジタルESGの重回帰分析、インパクト加重会計にコミットしている。

  • このようにオピニオンリーダーがESG投資における長期的視野を訴えていることの意味は大きい。”柳モデル”は遅延浸透効果仮説を採用し、ESGは長期的・事後的に企業価値を高める前提で、ESGと長期PBRを期差分析する。公開情報で知る限り、エーザイ、KDDI, NEC, 日清食品HD, JR東日本の5社が、柳モデルを採択して重回帰分析を行っているが、いずれもESGの遅延浸透効果が示唆されている。また、ユニバースをTOPIX500まで広げて、人件費、研究開発費とPBRの関係を分析したところ、5年から10年後に企業価値を高めるという正の相関が得られた。やはり、ESG投資では長期的視野が重要である。

  • トランジション投融資は特に日本企業にとって好ましいトレンドであり、我が国の投資家、金融機関のリーダーシップに期待したい。では、温室効果ガスの削減は企業価値を高めるのか?SMBC日興証券の伊藤桂一氏と私の共著論文(柳・伊藤 2019)が日本企業をユニバースに重回帰分析を行なっている。その時系列分析の結果、2006-2010年度くらいまでは、GHG排出量とPBRに有意な相関は得られなかった。しかし、日本市場においてもGPIF主導でESG投資が浸透したと思われる2011年度くらいからは、規模を調整してもGHG排出量とPBRに負の相関が示唆された。やはり、市場価値評価は投資家の意識改革が重要である。

  • この記事のメッセージに賛成!所属する組織よりも自分が何をしてきたか、何ができるのか、何がしたいのか、つまり個人のパーパスが大切。私自身、40歳前後で新卒以来お世話になった銀行を卒業し、メーカーに転身、さらに外資系投資銀行へ。その後、元いたメーカーに出戻り。40代半ばからは兼業許可を得て非常勤の大学教員を現在まで継続して50代後半で独立。この間所属したすべての会社が大好きで感謝しかないが、自分のやりがい、楽しさ、専門性を追求してきた。複数の転職、兼業を経て独立したが、一貫して企業価値の理論と実践に邁進。人に言えるような趣味も無いので企業価値を考えるのが趣味、私のパーパスかもしれない。

  • 古典的なジョークを一つ。”日本の博士号は足の裏にくっついた米粒だ”、その心は?”取らないと気持ち悪いが、取っても食えない” 。言い得て妙ではないか。多くの博士号検討者の不安ではないか。私自身も兼業で大学院非常勤講師をしていたが、”博士号が無いのは無免許運転”と言われて、その後働きながら博士号を取得した。しかし、日本の会社内では給与も変わらないし、”ドクター”で呼ばれることも殆ど無かった。しかし、博士号取得後に海外IRで欧米を周ると、投資家は”ドクター”で呼んでリスペクトを示してくれたし、主張するファイナンス理論がより受け入れられた(気がする)。彼我の差は大きいと感じた。

  • これは興味深い記事である。参考に、エーザイにおける”柳モデル”による重回帰分析では、女性管理職比率を10%高めると7年後のPBRが2.4%上がる、育児時短制度利用者が10%増えると9年後のPBRが3.3%向上するという正の相関が示唆された。また、日本企業全体をユニバースにしても、女性管理職比率と企業価値には正の関係が観察された。働き方改革、女性登用、育児時短制度利用、出生率、などESGのSと企業価値の関係性を深掘りしていく必要性があるだろう。開示にはプロコンあっても大変興味深い取り組みであり、前提として経営陣の強いコミットメントがあるのだろう。さらなる発展に期待したい。

  • エーザイのインパクト会計の出典となった論文の共著者はHBS IWAI 創設メンバーのDavid Freiberg 氏。リンパ系フィラリア症治療薬DEC錠を2014-18で16億錠を25か国に無償提供。感染、重症化の回避等で患者様が取り戻す労働時間からライフタイムの社会的インパクトは約7兆円。平均余命から年間1600億円のEBITDA となる。知る限り世界初のグローバルヘルスの製品インパクト会計である。エーザイでは雇用インパクト会計も開示した。IWAI は複雑なため、先般アビームコンサルティングが簡便法による雇用インパクト加重会計の手法を発表した。日本企業に普及を促す一助となることを期待したい。