【石井クンツ昌子】投稿一覧

石井クンツ昌子
石井クンツ昌子

石井クンツ昌子

お茶の水女子大学 理事・副学長

お茶の水女子大学 理事・副学長

専門は家族社会学、ジェンダー社会学。1987年米ワシントン州立大学社会学部博士課程修了、Ph.D.取得。米カリフォルニア大学リバーサイド校社会学部助・准教授を20年近く務めた後、お茶の水女子大学教授。同大ではグローバル協力センター長やジェンダー研究所所長を歴任。 日本家族社会学会会長や内閣府男女共同参画会議専門委員も務めた。2012年に全米家族関係学会のJan Trost賞を受賞。
【注目するニュース分野】男女共同参画、ジェンダー、LGBTQ+

専門は家族社会学、ジェンダー社会学。1987年米ワシントン州立大学社会学部博士課程修了、Ph.D.取得。米カリフォルニア大学リバーサイド校社会学部助・准教授を20年近く務めた後、お茶の水女子大学教授。同大ではグローバル協力センター長やジェンダー研究所所長を歴任。 日本家族社会学会会長や内閣府男女共同参画会議専門委員も務めた。2012年に全米家族関係学会のJan Trost賞を受賞。
【注目するニュース分野】男女共同参画、ジェンダー、LGBTQ+

2023年

  • 産後一定期間とはいえ男女で育休を取得した場合の給付率を手取り10割に引き上げるのは、育休制度を持つ諸外国で実施されているので、日本でも「ようやくか」という感じです。1992年に父親の育休取得が可能になりましたが、取得率低迷の理由は給付金が少ないことです。
     今後も男性育休取得者が増えることを期待しますが、一番の問題は男性の育休取得日数が短いことだと思います。「男性育休白書2022」によれば、男性育休の平均取得期間は8.7日(いわゆる「なんちゃって育休」)、女性の場合は10〜12カ月が最も多い。つまり、男性の育休取得率を増やすだけではなく、育休取得期間を長くできるような取組も必要だと思います。

  • 「チャイルドレス」と「チャイルドフリー」はどちらも子どもがいないという意味ですが、前者は子どもがいないことを否定的に捉え、後者は子どもがいない人生は豊かでポジティブと捉えます。
     政府統計では50歳になった時点で一度も結婚したことがない人を「生涯未婚者」と呼びますが、英語では「ネバーマリード」で「結婚できない(可哀想な)人」の意味合いがあります。反対に「エバーシングル」という独身生活を楽しむ人という意味の言葉があります。
     普段何気に使っている言葉に偏見が多々あるということです。ちなみに、「子供」は親の「お供」でなく、人権も尊重されるべきとして、最近は「子ども」という書き方がよく見られます。

  • 大学の学修に必要な科目を入試で課すのであれば、家庭科を入試科目とすることを提案します。教育大学や学科では家庭科が入試科目と入っているようですが、全大学レベルで家庭科を入試科目にするというのが私の提案です。
     現代の家庭科は単なる衣食住の実習科目ではなく、子どもの権利、女性の就労、高齢者の生活などの内容を含み、環境問題や消費者教育も取り上げています。これまで多くの家庭科教育実習を参観してきましたが、中高生の学びへの真剣度が少々足りないと思っていました。何でも入試出題科目にしてしまうのはよくないですが、受験生に生活者の視点から環境や消費者問題、社会政策などについて考えてもらうことは重要です。

  • 岡山県奈義町、まさしく乳幼児から高校生までの子育て支援の宝庫だと思います。特に注目したいのは対象とする子どもの年齢幅が広いこと、そして子どもの一時預かりサービスや短時間の仕事を紹介するなど、行政と住民が一体となって取り組んでいることです。特に後者に関しては、これまでの育休などの子育て支援政策が極めてトップダウン的なアプローチであったために国民の生活レベルで広まってこなかったこともありますので、奈義町の事例から多くを学ぶことができると思います。
     明日、首相が奈義町を訪問とのことですが、昨日のLGBTQ+当事者への謝罪といい、今回の訪問といい、岸田首相は「パフォーマンス」がお好きですね。

  • かつて海外からの友人を連れていったのは観光名所でしたが、最近はデパ地下と家電量販店です。デパ地下は今や日本が誇れる「文化」であり、これだけ充実した食の宝庫は欧米のデパートにはありません。ブランド食品が売られているのもすごいですが、チョコレートにせよ、お弁当にせよ、選ぶのが難しいほど多くの種類があることは感動ものです。
     家電量販店の面白さは日本人の生活が垣間見えることです。例えば冷蔵庫は欧米と比べて小さめですが、中のスペースは食品を分類できるようになっていて、日本人の食物保存の上手さがわかります。なお、外国人の笑いを取りたければ、センサーで次々と開く便座の蓋コーナーを通り過ぎてみてください。

  • 日本人はバレンタイン、ハロウィン、クリスマスなどの欧米の文化を輸入して独自の文化に作り上げるのが上手です。日本のバレンタインチョコは1930年代に始まりましたが、女性から男性へチョコを贈る習慣は欧米にはないと思います。アメリカのバレンタインデーは家族や友人にカードを贈るなどの特別な日ですが、あまりお金を使わないお祝いをする日です。
     日本では女性が「愛の告白をする日」とされてきたバレンタインデーでしたが、エシカルチョコや自分へのご褒美としてチョコを買う人が増えてきたということは、現代の女性がバレンタインデーではなくても、自分の気持ちを相手に伝えられるようになってきたことの現れでしょうか。

  • この記事で気になったことが2点。まず、福井県は女性労働者が多く、親との同居も多いです。しかし仕事と育児の両立を頑張って進めているのは圧倒的に女性です。福井県男性の育休取得率は全国的に見ても高くなく、仕事に没頭している方が多いと思います。
     次に、育児や家事に「親の力を借りる」のは確かに母親のワンオペ育児の解消になるかもしれません。しかし、今の60~70代で育児が出来るくらい元気な方々にとっては孫育てを任せられるのは結構負担にもなりうるのではないでしょうか。「孫は会ってよし、帰ってよし」が祖父母世代の本音で、自分の趣味のことをやりたい時にできるくらいの余裕を保つことは大切だと思うのですが・・・

  • 副業制度に関連すると思いますが、今、「リスキリング(reskilling)」という「新しい学びやスキルを身につける」ことがちょっとした流行になっています。しかし、先日の育休中のリスキリングを後押しするという岸田首相のコメントにはとても驚きました。まず育休は育児をするためにあり、多くの場合、子育てには週七日・一日24時間のコミットメントが要求されるのです。そのような状況の親たちに育休中の学び直しを推奨するのは、育児をしてこなかった人の発想だと思ったのは私だけでしょうか。

  • テネシー州の警官の暴行による黒人男性の死。「また起きてしまったのか」というのが私の率直な感想です。私が住んでいたカリフォルニア州で1991年に起きたロドニー・キングという黒人男性への警官による暴行事件は偶然撮影され、全米のテレビネットワークで放送されました。1年後に元警官らに無罪判決が出て、その後逮捕者1万人というロサンゼルス暴動に発展しました。
     ある黒人男性が「自分にとって一番安全な散歩は子どもと一緒の散歩だ」と話していました。子どもと一緒であれば、警官は自分に暴力を振るわないだろうということですが、本当は子どもを守るのは親なのに自分が子どもから守られているという皮肉な現実の表れです。

  • 「次元の異なる」少子化対策と聞いて「それって何?」と思った人も多かったのではないでしょうか。この中味は児童手当などの経済支援の強化、学童・病児保育を含む保育サービスの充実、仕事と子育ての両立を目指す働き方改革や育休などの制度強化の3本立てであり、全て既存の政策の拡充です。
     これらを実施するためには当然財源の確保が必要ですが、その議論のみが先行していくのは良くないでしょう。子育て世代に「あると嬉しい子育て支援とは」について尋ねると「子ども預かり」「相談場所」「家事代行」をあげることが多いです。政府には子どもを持ちたい人や子育て中の親など、当事者のニーズに応える施策を講じてほしいものです。