【窪田真之】投稿一覧

窪田真之
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楽天証券 チーフ・ストラテジスト

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日本株アナリスト兼ファンドマネージャー歴25年。年間100社を超える企業調査を実施し、公的年金・投信など1,000億円超のファンド運用を担当してきた。2014年より現職。企業会計基準委員会の専門委員、内閣府「女性が輝く先進企業」表彰選考委員など歴任、著書に「株トレ」(ダイヤモンド社)、「IFRSで企業業績はこう変わる」(日経BP)など。
【注目するニュース分野】日本株、米国株、企業会計、働き方改革、サステナビリティ

日本株アナリスト兼ファンドマネージャー歴25年。年間100社を超える企業調査を実施し、公的年金・投信など1,000億円超のファンド運用を担当してきた。2014年より現職。企業会計基準委員会の専門委員、内閣府「女性が輝く先進企業」表彰選考委員など歴任、著書に「株トレ」(ダイヤモンド社)、「IFRSで企業業績はこう変わる」(日経BP)など。
【注目するニュース分野】日本株、米国株、企業会計、働き方改革、サステナビリティ

2023年

  • 利上げ停止ならばパウエルFRB議長の「豹変」となる。最近の発言はタカ派色が強く、インフレ退治のために拳を振り上げた状態だからだ。
    ただ、振り返ってみると、パウエル議長は就任以来「豹変」を繰り返してきた。2018年はタカ派色を前面に出して、利上げ停止を求めるトランプ元大統領と対決しつつ4回利上げを実施。
    ところが、2019年に世界景気減速が鮮明になると「豹変」。急激な利下げを実施。2020年には量的緩和の大盤ぶるまいを実施し、2021年にインフレが深刻になっても「インフレは一時的」と主張。
    ところが、2022年にインフレが深刻になってからは「豹変」して強硬タカ派になっている。今晩の発表に注目。

  • 親軍政党が分裂選挙になるので、2014年のクーデターで失脚したタクシン派・タイ貢献党が政権を奪回する可能性はある。ただし首相指名選挙は、選挙で決まる下院議員(500名)と国軍の意向に従う上院議員(250名)の合同投票になるので、タイ貢献党が地滑り的大勝にならない限り単独での政権奪回は難しい。首相指名選挙では、プラウィット副首相の親軍政党がタイ貢献党のポピュリズム政策を取り入れることで同党と連立して新軍政権を維持する可能性も。
    独裁を強める中国の習近平政権は「共同富裕」を打ち出して民衆の不満をそらし、権力の維持強化を進めている。タイでも親軍政権が、政策を軌道修正しながら政権維持を目指している。

  • クレディスイスの発表が事実だとすると、株が無価値にならないのに、劣後債の一種AT1債が無価値となる異例の措置となる。これで預金者の不安は低下するが、劣後債市場の不安が逆に高まる。AT1債の投資家がすんなり納得するとは思えず、今後波乱が続く可能性がある。
    法的整理を避けるために株を無価値としないで、債券や債権の保有者がより大きな損失を引き受けることは日本でも行われることがある。旧ダイエーは2004年に99%超の減資を実施して再生した。この時は取引先の損失を抑えるために銀行(債権者)がより大きな損失を受けた。株は無価値にならなかったとはいえ、大幅に減価しているので問題にならなかった。

  • パウエルFRB議長は就任以来「豹変」を繰り返している。2018年はタカ派色を前面に出して、利上げ停止を求めるトランプ大統領と対決しつつ4回利上げを実施。2019年になって世界景気減速が鮮明になると「豹変」して急激な利下げに転じた。
    2020年にコロナショックが起こると、量的緩和の大盤ぶるまいを実施、強烈にハト派色を出した。2021年にインフレが深刻になっても「インフレは一時的」と主張してハト派議長を続けた。
    ところが、2022年にインフレが深刻になると「豹変」して強硬タカ派になった。いずれまた「豹変」してハト派になることもあり得るが、いつそうなるか全くわからない。22日FOMCの結果に注目。

  • 「銀行業」には信用不安の「噂」が出るだけで資金繰りが行き詰まるリスクが常にある。資産サイドで長期の貸付金や長期債などを抱えながら、負債(資金調達)サイドは、いつでも解約できる預金「普通預金・当座預金・定期預金」がほとんどだからだ。SNS全盛で、噂があっという間に拡散する時代になっただけに、銀行の信用不安が連鎖することないよう、米国の銀行に手元資金を確保する動きが広がるのは当然と言える。

  • コメの生産は小麦生産と比べて機械化が遅れているため、急な増産がむずかしい。タイのコメ生産は機械化が進んでいて輸出向けの商業生産が盛んだが、コメの生産大国であるインドや中国で機械化が遅れている。
    日本は機械化が最も進んでいて国内に余剰米があるが国内向けであり、またコメの品種が異なるので輸出がむずかしい。ただ、小麦価格の上昇を受けて、日本でもコメを使ったパンや麺の普及が広がり始めている。米粉100%のパンはグルテンフリーで、グルテンアレルギーの方も食べられることも注目されている。

  • 成田空港は貿易取扱高で名古屋・東京などの貿易港を抑えて長年にわたり日本トップの座を占めている。電子部品・精密機器など高額品の輸出に航空機を使うからだ。それでもコロナ前までは航空貨物業は赤字が多くNCAは日本郵船の業績の足を引っ張ってきた。大型の貨物専用機への投資負担が重くのしかかっていた。
    コロナ禍で状況が一変、海上輸送が滞って定期船市況が高騰した時、海上輸送代替として航空貨物にコロナ特需が発生した。コロナ禍で人を運ぶ旅客機が不振の中、航空貨物の収益が急拡大した。ただし、海上輸送は既に正常化し定期船市況は急落した。旅客機の回復が見込まれるが、貨物専用機で稼ぐのは難しくなる可能性もある。

  • 労組の要求を超えるベア引き上げの回答は異例。それでも、ベアと定期昇給を合わせた賃上げ率は平均3.8%程度とある。物価上昇をカバーするのに、少し足りない。厚生労働省の毎月勤労統計調査(速報・従業員5人以上の事業所)によると、1月の実質賃金は前年同月比4.1%減っているからだ。名目賃金が0.8%上昇しているが、物価上昇率が5.1%と高いため、実質賃金は大幅な減少となっている。

  • シリコンバレー銀行破たんが金融危機に発展しないように、FRBは気を使わざるを得なくなっている。米景気は堅調でインフレ収束が遅れているが、それでも3月21-22日のFOMCでの利上げは見送りとなるとなるという見方が金融市場で広がっている。それを織り込んで、米金利は急低下、その余波で日本の長期金利も急低下した。
    ただ、これで日本の金利上昇が終わったと判断するのは早計かもしれない。日本のインフレ率も41年ぶりの高水準で、これからリオープンによる内需回復が見込まれるからだ。

  • シリコンバレー銀行破綻は、銀行としてのALM(財務リスク管理)初歩ができていなかったことが原因。【1】貸金を積み上げず債券投資にのめり込み。保有預金の約7割弱で期間の長いMBSや米国債に投資、過度に金利上昇リスクを負っていた。【2】逃げ足の速い大口の法人預金で資金調達、個人から集めるコア預金が少なかった。
    日本の銀行も、1980年代にはALMができていなかった。1990年代の金融危機では、コア預金のなかった日債銀・長銀が破綻。今はアセット(資産)とライアビリティ(負債)のデュレーションを一致させ、金利上昇リスクを抑えるのが原則。ただ個人の流動性預金はコア預金なので長めのデュレーションを想定。