竹中直人さん、映画「零落」監督 共犯者たちと夢を見る 文化往来 3月20日 「本屋で原作を見たとたん、タイトルにまず引かれた。落ちぶれるって意味でしょ。『無能の人』に通じるものがある。これを撮らなくてどうする、と思った」 10本目の監督作「零落」が公開中だ。原作は「ソラニン」で知られる浅野いにおの同名漫画。落ち目になった漫画家の焦り、いらだち、高慢、孤独をありありと描く。浅野の表現者としての実感が伝わる野心作。読んですぐ「映画の冒頭のらせん階段のある歩道橋のシーンとタイ 竹中直人さん、映画「零落」監督 共犯者たちと夢を見る
アカデミー賞、アジア系躍進続くか 超大作にも目配り Think! Nikkei Views 3月9日 米国社会の動向を映し出す映画の祭典、アカデミー賞の授賞式が12日(日本時間13日)に開かれる。ノミネート作品を見渡すと、多様性を擁護する近年の流れに乗って、アジア系の俳優や作品の躍進が目立つ。新型コロナウイルス禍からの回復が遅れるなか、大ヒットで興行市場に貢献した超大作が並んだのも今年の特徴だ。 作品賞、監督賞、主演女優賞など最多10部門で11件がノミネートされ、台風の目となっているのがダニエル アカデミー賞、アジア系躍進続くか 超大作にも目配り
才能の出会いの場を作る 映画祭ディレクターの仕事とは 人間発見 ワークスタイル 3月5日 市山尚三さんは国際映画祭の世界で最も知られる日本人だ。1990年代から欧州やアジアに人脈を築き、2000年に東京フィルメックスを創設。21年に東京国際映画祭のプログラミング・ディレクターに就任した。華やかな舞台を裏で仕切る映画祭ディレクターとはどんな仕事なのか。 ディレクターというと「監督」と訳されますが「責任者」と考えればよいです。プログラミング・ディレクターは番組編成の責任者。アーティスティッ 才能の出会いの場を作る 映画祭ディレクターの仕事とは
山根貞男さん逝く 現場に立ち続けた映画評論家 文化往来 3月1日 現場に立ち続けた映画評論家だった。2月20日に逝った山根貞男さん。なりわいとして様々な現場を追ってきた記者にとって、現場で最もよく顔を合わせた評論家であり、仕事の指針となる先達だった。 何よりも思い出すのは撮影現場。多くの報道陣を集めてお披露目する場ではなく、少数の取材者が何日かかけてじっくり見学できる機会でよく一緒になった。会うたびに「オーッ」と声をかけてくれて、ちょっとこわもての顔がやさしい 山根貞男さん逝く 現場に立ち続けた映画評論家
故・ジャン=リュック・ゴダールさん(映画監督)20世紀芸術への明察と行動 追想録 コラム 12月23日更新 「私がヌーベルバーグに属していたころ、私たちは何かを始めていると信じていた。しかし40年たって振り返ってわかった。あの時代には何かが終わろうとしていたのだ」 2002年10月23日の来日記者会見。べっ甲の四角いメガネをかけた巨匠は葉巻を片手にボソボソと語り続けた。 映画は1930年代から50年代にかけて栄光の時代を迎えたこと。その後、長い衰退期を経て、ほぼ消滅するか、テレビやコンピューターのため 故・ジャン=リュック・ゴダールさん(映画監督)20世紀芸術への明察と行動
吉田喜重監督逝く 映画とは何か、不断の問いかけ 文化往来 12月14日 「私は映画監督になりたくてなった人間ではない。戦後の苦しい時代に家庭のために仕事を探していて、いわば偶然に映画という仕事を与えられた。だから『映画とは何か』『監督とは何か』ということを初めから考えざるを得なかった」 8日に逝った吉田喜重監督が静かに丁寧に筋道立てて語り続けた姿が忘れられない。2012年9月、かつて助監督としてついた木下恵介監督について話を聞いた時のこと。吉田さんの話は故郷・福井で 吉田喜重監督逝く 映画とは何か、不断の問いかけ
2022年の映画 新世代監督に光、興行・制作実態に危機感 カバーストーリー 12月13日 「ドライブ・マイ・カー」のアカデミー賞4部門ノミネートと国際長編映画賞受賞で滑り出した今年、濱口竜介に続く新世代の日本人監督が世界の映画祭を席巻した。 三宅唱「ケイコ 目を澄ませて」がベルリン、早川千絵「PLAN75」と山崎樹一郎「やまぶき」がカンヌ、深田晃司「LOVE LIFE」と石川慶「ある男」がベネチア。みな1970年代後半~80年代前半生まれの監督だ。「この世代の日本の新鋭に注目している 2022年の映画 新世代監督に光、興行・制作実態に危機感
戦時下の愛憎と閉塞感を描く 片嶋一貴監督「天上の花」 文化往来 12月7日 萩原朔太郎の娘、萩原葉子の小説「天上の花」が映画化された。父に師事した三好達治と叔母・慶子の凄絶な愛憎劇に、戦時下の詩人の生き方を重ねた野心作だ。片嶋一貴監督は「ウクライナ戦争が起こった今に至るまで世に戦争が絶えたことはない。戦争に左右され、翻弄されながら、うごめいている人々を描きたかった」と語る。 戦時下の人々を描く企画を考えていた片嶋が、脚本の相談をした荒井晴彦に「面白いものがある」と見せら 戦時下の愛憎と閉塞感を描く 片嶋一貴監督「天上の花」
三宅唱監督が新作 映画は感覚を研ぎ澄ます 文化往来 12月5日 耳の聞こえないボクサーの物語「ケイコ 目を澄ませて」(16日公開)を撮った。電車、サイレン、縄跳び、トレーニングマシン、サンドバッグ……。映画の冒頭から豊かな音が、音のない世界を伝える。 「聴者である僕はろう者が生きる世界を追体験できない。ならば聴者としてできることをやろうと思った。ろう者の方と会うと自分は聞こえるということを意識する。その自覚を通して、この音が聞こえないことを想像する。ジムの中 三宅唱監督が新作 映画は感覚を研ぎ澄ます
きれい事ではない在日の悲喜劇 崔洋一監督逝く 文化往来 12月2日 「おまえ、そんなに簡単にヒューマニズムでくくるなよ。そう言いたくなるね。人種間の違和感って、そんなに簡単に解決するもんじゃないだろう」。11月27日に世を去った崔洋一監督がそう語ったのは、もう29年も前になる。当時相次いで作られた在日外国人を描く映画について意見を聞いたら「すべてが嫌いではないけれど、どちらかというと否定的だ」と言って、理由をそう説明した。 在日コリアンのタクシー運転手を主人公に きれい事ではない在日の悲喜劇 崔洋一監督逝く